三多摩のタクシーY

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475国道774号線
 三十万円の壁がある。

 京都市北区の岩崎弘泰(30)は昨年十二月、市内の就職支援機関「ジョブカフェ」を訪ねた。
五十代の相談員が言葉を選んで口にした。

 「正社員として就職しようと思ったら、三十万円は蓄えとして用意しておきなさい」。
初任給が出るまでの生活費が必要なことを諭された。

 「この階層から抜け出すのにも金がいるのか」

 派遣社員の岩崎にとって、今は一日を生きるのが精いっぱい。奈良県に住む父親は失業中。
頼るわけにいかず、その額はあまりにも大きい。

 学生時代は学者になりたかった。大学四年の夏と冬に大学院を受験。合格通知は来なかった。
就職に切り替えても、不景気で採用は抑えられ、職も決まらない。

 「これからどうしようか」。一人暮らしをしていた六畳の和室で途方に暮れた。

 貯金が底を突き、翌年五月からアルバイトを始めた。それ以来、
非正規雇用の警備員や日雇い労働者として、職場を十カ所以上も転々とした。

 まとまった金がほしくて、鳥取県と兵庫県で出稼ぎしたことがある。
二〇〇二年九月から翌年六月の約十カ月間、体調を崩しながら働いた。

 大学卒業後、通帳の残高が三十万円を超えたのは、この時一度だけ。
その蓄えも、運転免許の取得費用に消えた。

お前らまだ雲助で良かったな!  稼げないけど・・・