私が働いていた●○興業という会社では毎日のように残業があった。
私もつられるままに残業をした。経費節減の名の下、残業代は一度しか払われたことはない。私はそのことを特に疑問に思わなかった。
「みんな働き者なんだなぁ、仕事がたくさんあるんだなぁ」と半ばうらやましげに「はたらくおじさんたち」を見つめていた。
会社を辞めたあと、私がいかにテッペンバカだったかをひしひしと思い知らされることになるのである。私は、残業をしている人たちがどのような経緯で残業をしているかに全く気を払わなかったのである。
新人同然だったから、気を払えなかったのかも知れない。
私の勤めていた会社でも、後輩からものすごく慕われていて、業務知識もふんだんにあるという先輩がいた。
彼はみんなのあこがれだった。当然のごとく、毎日残業をする。しかし、配置転換で彼と直接仕事の関係を持ったときに、彼はどうもデキる人間ではないことに気がついた。
彼は仕事の進め方が非常に遅いのである。
なおかつ、自分の好きな仕事しかしない。自分の知識と経験は、現場の経験もあることから非常に自信を持っていたので、上司の注意にもほとんど耳を貸さない。
それ以上に、まともな注意の出来る管理職がいなかったことも大きな問題である。こうして、彼のおかげで私の仕事持分もつられて遅くなり、上司にこづかれることになったのはいうまでもない。
●○興業時代の私の先輩にね、Hって言う人がいました。過去形なのは、もうとっくに辞めているからなんですね。
高天原道行って言うハンドルネームで鉄道サークルにも参加しているようなので、是非調べてみて下さい。
そういうことを秘匿にしているようで、まわりにこれ見よがしにしゃべっていたので、この場でも公表した次第です。皆さんが注目すれば、彼も喜ぶでしょう。
ということで、私が配属されまして、一番最初に彼の話を聞きました。言うことはただ一つです。「お前が知りもしないのに意見を言うのは許さない」ということでした。
いまから思えば、お前は何様だという気がしますが、当時は新人で、ものすごーく緊張していたから、なんでも受け入れちゃったんですね。
まあ、そんなことはいいとして、とにかくそういうことを言われたわけです。これは、柴田昌治さんとかに言わせれば、絶対言ってはいけないことなんですよ。
確かに、新人ふぜいに、自分たちがいままでやってきた仕事をあーだこーだ否定されては不愉快でしょう。でも、このことで決定的に部署の風通しが悪くなってしまいました。
当時の人事課は新人に、柴田昌治さんの『なんとか会社を変えてやろう』を必読書にしてたんですよ。読んだことある人は多いんじゃないでしょうか。そんな人事が人事で、そこから育った先輩社員がこうですよ。
おかしくておかしくてお話になりませんね。
こうなると、実際彼がどのような立派な道を歩んできたか、ということなんですけど、これが実に華々しい道で、最初の部署からゲジゲジのごとく嫌われていたんですね。
人格もさることながら、絶対的に仕事が出来なかったんです。部長からも名指しで「こいつとは仕事をしたくない」と言われる人間でした。こんなこと言っちゃう部長も部長ですけどね。
そこで部署を異動したときに、例の古川氏に目を付けられて、一心に寵愛を受けたわけです。なんか古典小説みたいですね。そういうわけで、先ほどの悪名高き古川に寵愛を受けたわけですから、H君自身の評判も下降の一途なんですよ。
寵愛を受けたと言うことで、自分が実力があると思い込んだようなんですね。確かに、仕事の経験は結構積まれていたんですけど、いかんせん人格が決定的に破綻していまして、もう誰からもそういう話が聞かれましたね。不思議なくらい、有名でしたよ。悪い意味で。
あと、具体的な話で恐縮なんですが、健康診断についてですね。健康診断は、従業員全員が受けなくてはいけないんですね。法律で、決まってますから。
正確には、会社が従業員の健康を守らなくてはならない、というのが本分ですね。でも、多くの会社では、健康診断の結果が、人事査定へとそのまま響いています。
またまた●○興業で申し訳ないんですが、私の一年先輩の鈴木という人事課の職員がいましてね。研修センターで私が新人研修を受けてるとき、深夜で、0時を回ったときに私を食堂に呼びだしたんです。
なんて言ったと思います?「君の健康診断の結果だと、今後の昇進とか人事評価が思うようにいかなくなるから、早めに悪いところは治した方がいいよ」っていったんです。はっきり言って本末転倒ですよね。
従業員の健康を管理しなくちゃ行けない企業側が、健康診断によって従業員の処遇を決めてしまってる。これが現実なんですよ。人事の口から直接聞いたことですから、間違いありません。
一方、先ほどあげた古川って言うごますり上司はですね、言ったように、障害者だったんですね。彼は会社から命じられた健康診断は受診してません。
そのくせ、私に対しては受けろ受けろとしつこく言って、私の結果を見ては「なんだこれは!」なんて怒鳴ってたんですよ。
「お前に怒鳴られる筋合いはない」ですよね。これはプライバシーの侵害ですよ。いまから思えば、労働基準監督署に抗議してもよかったかも知れませんが。
こういった健康に係わることって言うのは、普通の会社は人事査定に利用するんですね。そうされないためにはどうするか。
社長級の人間への「ごますり」が第一ですね。これが現実なんです。皆さんはこういった世界をどのように思いますか。