□□□□昭和おもひで温泉□□□□

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226お粗末様
【シークレット分岐 温子編】
昭和の中頃、長い恋愛に終止符を打った温子は一人旅に出ていた。

露天風呂の戸(ネタバレ自粛につき中略。本物の其の七を参照)
・・
「おひとりですか?」
温子は目前の男性に話しかけていた。
「・・・一人でつ。おもちゃ板から来ますた」
返事が返ってきた。聞き慣れない方言だ。どこの人かしら?

どうにも次の言葉が出ずに沈黙が続いたところで、
「ケフッ」
温子は軽く口に手を当てた。体が暖まってきたせいだろうか、おくびが込み上げてきたのだ。
「ごめんなさい。ここの女将さん、サービスがいいものですからお饅頭を食べ過ぎてしまったみたい。」
「アヒャヒャ。貴女もですか。ここの女将はボケていると思われ。」
「実はね、わたしの部屋には浴衣が4着もあったの! うふふ」
会話が弾むにつれ、温子は個性的な話し方をするこの男性に胸の高鳴りを感じだしていた。

「あの、初対面の人に、ましてこんな格好でお願いするのもなんなんですが・・・」
男性がきりだした。えっ?急にあらたまってなにかしら?・・そういえば私達は裸だった。
温子はなんだか急に恥ずかしくなってきた。と同時に奇妙な期待が体を巡る。
透き通るような温子の白い肌が紅潮していたのはお湯が熱いからだけではないようだ。

「貴女の部屋にある紅白饅頭と浴衣を漏れの金鳥のホーロー看板と交換しませんか?」
・・・・
温子は虚脱感にみまわれた。気持ちはまるでキンカンを塗ったかゆみのように引いていく。
胸の高鳴りはそう、饅頭を食べすぎた時のような胸焼けに変っていくのだった。