おっ土星「ここは幻想郷…?」

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1名無しさん祈祷中・・・@転載禁止:2014/10/11(土) 21:25:08.53 ID:TQk/giog
月へ行った最後の人間、霊夢が戻って来てから異変が途絶えて久しい。
また、俺が幻想郷に来てからも久しい。
妖怪の山に身を置きながらも、人間の里でちょくちょく働きに出る自分は差し詰め半人半妖の身分か。ただのご都合主義なだけの気もするけど無視。
幻想郷に来てから雛と出会い、雛と色々あり、今がある。
当初の俺が知的好奇心の赴くままに見聞を広め、好きに研究を重ねた結果、なんと魔法使いもどきと呼ばれるまでになった。幻想郷自体が魔法なのに。なんだか嬉しい。

───と、自分の話をすると自慢ばかりになるのは雛が可愛いからだろう。恥ずかしいから口には出さない。
2名無しさん祈祷中・・・@転載禁止:2014/10/11(土) 21:27:53.59 ID:0KUqjrJ+
再放送か
3名無しさん祈祷中・・・@転載禁止:2014/10/11(土) 21:49:13.02 ID:syWr1LUf
「今日も可愛いぞ、雛」
口が滑った。恣意的に。
「あら、ありがとう。でも言葉を返しづらいから場合を選んでね」
それも意図的。そしてそれに雛が気付いてるのも意図的、だったらいいなぁ。
偶然を必然と言い張るのには未来予知が要る、後から言ったらよっぽどのカリスマが無い限り信憑性が根こそぎ剥がれ落ちるからね。
「………なら、『今日も死相が見えないわね』とか言ってくれたら嬉しい」
「今日も死相がくっきり見えるわ、だからって死なないでね、行ってらっしゃい」
「ああ、頼まれたのなら死ねないな、行ってきます」
「行ってらっしゃい」
「行ってきます」
雛が嘘吐きなわけないから俺は今朝も幸せたる愛に浸れる。そして脳髄から溢れ出したそれは自分の口角と気分を僅かに上げる
今日の行き先は働かせてもらうために行く人里じゃない、とある用事の博麗神社だ。
4名無しさん祈祷中・・・@転載禁止:2014/10/11(土) 21:49:31.59 ID:syWr1LUf
博麗神社への道のりは、もし自転車で行くのなら近い。道路を舗装したらどうかと賢者に掛け合おうか、嘘だ。死にたくない。
実は俺だって飛ぼうとすれば簡単に飛べる。ただ、その鳥瞰の下には人里がある。事実として飛べる人間がいても里の人間の認識は俺を妖怪と化してしまうのだ。
俺が人里に関係ないならいいけど関係あるからだめ。杞憂かも知れないけど村八分に遭ったら嫌だ。非常識な人間達が羨ましい。
だから歩くしかない、だるくない、まだ雛からの愛のストックが切れてない。

人里は既に過ぎていて今は獣道。
最近の妖怪はあまり人を殺さないらしいけど、今度は遊べ遊べと絡んでくるようになった。
俺も遊びは嫌いじゃない、嫌いじゃないからこそ手は抜けない。結局博麗神社に着くまでに数人倒した。
5名無しさん祈祷中・・・@転載禁止:2014/10/11(土) 21:49:49.64 ID:syWr1LUf
意識せずに鳥居をくぐると、霊夢が両手で箒を持って、無表情で境内を掃いているのが見えた。あの霊夢すら忙しなく動かすのだから習慣というものは恐ろしい。
霊夢が先に俺に気付いたが、俺が先に会話の口火を切る。
「よう清掃員、この神社の巫女に会わせてくれ」
「今日は居ないみたいね、帰れば?」
「じゃあ霊夢でいいよ、………もう他も来てるのか?」
「今日はまだ誰も入れた覚えは無いけど、今頃はもうネズミに煎餅をかじられてるかも」
「スキマネズミか」
「もっと多種類かもしれないわ」
この会話、聞かれてないよな………
「今日は誰が来るんだっけ?事が事だから仰々しい面々が並ぶんだろうなー」
「良かったわね、あんたがいるからそんな事にはならないわ。紫が勝手に引率してくれるって」
「じゃあ、もちろん紫も来るんだな、あぁ……」
「何よ、まさか紫が怖いの?」
「………人見知りなだけだ。とにかく俺も煎餅をかじらせてもらう、煎餅寄越せ」
未だに掃き続ける霊夢を尻目にして、そそくさと縁側の襖を開け、靴を脱ぎ、お邪魔します。
6名無しさん祈祷中・・・@転載禁止:2014/10/11(土) 21:49:51.28 ID:rSlT/yV1
新作はよ
7名無しさん祈祷中・・・@転載禁止:2014/10/11(土) 21:50:27.90 ID:syWr1LUf
開目一番、紫と萃香が居た。

「むらさきネズミですわ」
「すいかネズミだよ」
気にしない、全くおかしい所はないから。
「じゃあ俺も仲間に入れてくれよ�」
まず手近な座布団を確保する。
萃香の近くにある煎餅の入った容器を指で手繰り寄せ、醤油煎餅を頂く。パリッ
旨いなぁ。でも味を形容する語彙も表現力も乏しいのは物悲しい、とりあえずパリッとして普通にうまい。

そんな俺を見てか紫が不敵に笑う。無駄に笑うな、変な癖だなもう。
「ここは妖怪の塒よ?何しに来たの?」
頭の良い奴が簡単に疑問符を使う訳ない、だからこれはもちろん疑問ではなく導出だ。俺が来た理由の。
「博麗神社で煎餅食べて雑談しよう、って誰かからのお達しが少し前に来た。俺みたいな人間までもが呼ばれたんだ、さぞかし妖怪で賑わってると思ったんだが」
「あら、四人じゃ賑わってると言えないの?」
「言えないよ」
「そうよね、だから後から増えるかもしれないから安心なさい」
さいですか。
今居るのは、屋外に清掃員霊夢、屋内には正座の八雲紫、半身で寝そべる伊吹萃香、片膝立てる俺。
本当に煎餅を囲むだけの座談会なのかもしれない。
もしそうならばとっとと煎餅食い尽くして帰るだけなので、念のため本題を問い質す事にした。
8名無しさん祈祷中・・・@転載禁止:2014/10/11(土) 21:51:21.79 ID:syWr1LUf
「なぁ紫、俺はなんでここに呼ばれたんだ?」
疑問としての疑問符。
「煎餅、美味しくないの?」
「パリッとしててうまいぞ」
「うふふ、ありがとう」
だから此奴は苦手なんだ、話が長くなるのは紫が長生きしてるからなのだろうが。
仕方ないから、昼間だというのに寝そべりながら瓢箪の酒を呑んでいる萃香に訊いた。
「………萃香」
「なんだい?」
「………煎餅食うか?」
「要らないよ、もう十分に食った」
「なんで萃香はここにいる?」
「どこにも行ってないからだよ」
住むな、退治するぞ
「じゃあなんで俺はここにいる?」
そう俺が訊くと、萃香は表情も体勢も、俺に向けた視線も動かさずに、言葉を選んだのだろうか、少し間を空けて言った。
「恐らく、戦力の集合」
「マジすか!?」
演技臭い俺の取り乱しに次いで、紫が急に口を挟んできた
「そうよ、来たるべき恐怖への対抗策」
「ほー………なんだか具体性に乏しいな」
「あなたを驚かせないためよ」
「じゃあ驚きたい、驚愕の事実をくれ」
9名無しさん祈祷中・・・@転載禁止:2014/10/11(土) 21:51:41.87 ID:syWr1LUf
「仕方ないわね、近況と現状、これからの予定、即ち対策も含めて」
流石の紫も何かに緊張しているのだろうか、一呼吸置いて、また喋り出した。
「それとそこの鬼っこも仔細までは知らないでしょうから、あなたも寝ずにちゃんと聴きなさいよ」
何言ってんだこいつ
「お?いつから鬼に命令できる妖怪が現れたんだい?」
「幻想郷が出来た辺りから居たわ」
「ほぉーう威勢がいいねぇ、じゃああんたの長話の前に、表で弾幕ごっこでもやるかい?」
売り言葉に買い言葉だ。意外と賢者たる古参の妖怪にもアホっぽい所があるみたいだ。
無駄に時間を潰されたくないので、俺が割って入る。
「待ってくれ萃香、弾幕ごっこなら後で俺がやってやるから、今は話の腰を折らないでくれ」
「やってやるだとぉ?仕方ないな、後で絶対連れ去ってやるから覚悟しとけよー」
それにしてもこいつら姿勢も変えないまま凄い会話をするもんだな。俺も変えてないが。
「うふふありがとう。じゃあ始めるわね」
おう早くしろよ
10名無しさん祈祷中・・・@転載禁止:2014/10/11(土) 21:51:59.00 ID:syWr1LUf
八雲紫は先ず、博麗大結界について、霊夢と紫自身の関係から話し始めた。

「────それでね、いくら私でもこの幻想郷の普くを勝手に決めてしまう事は駄目なの、人妖全てにも私にも、色々と不都合なのよ」
「ほほう、それでそれで」
「まだ分かんない?だからねぇ、博麗大結界は、私と霊夢が定めた『目安』みたいなものであって、その存続は幻想郷の小市民に懸かっているって事よ」
萃香寝てるぞ、俺も寝たいぞ。
「なるほどなるほど、よし分かったぞ。ここからは俺が紫の言いたい事を代弁してみせよう」
「へぇぇ、もう分かったの?どうぞ、あなたの推考を言ってみなさい」
「……博麗大結界の存亡は幻想郷の住民に依存している。
今日こうして呼ばれたのは何か結界に不調が起きたと言うことだ」
「いいわ、続けなさい」
「そして、原因が幻想郷の住民にあるということ、更にわざわざ俺が呼ばれたこと。
双方を洞察すると、少し飛躍するが、妖怪の山に原因がある事になる」
「続けなさい」
「飛躍があったな、その妖怪の山の中でわざわざ俺が呼ばれたのは、ただの上流社会のいざこざって奴だろう、全て辻褄が合う。
そして、だ。この後、八雲紫が俺に頼むことは簡単。どうにかして妖怪の山上層部に掛け合い、原因を排除する。どうだ」
「凄いわ、ただの人間魔法使いだと思ってたのに」
「嫌みな奴だな、お前には造作もない事だろ、作戦を教えろよ、おう早くしろよ」
「それは駄目よ。途中から哀れにも真実との乖離が広がっていったもの」
11名無しさん祈祷中・・・@転載禁止:2014/10/11(土) 21:52:14.81 ID:syWr1LUf
「よっしゃ、一緒に寝るで萃香」
「おう、いいよ」
起きてたのか萃香。聞かれてたのか。
そこに紫が口を挟む。
「なぁに?不貞腐れてるの?ふふふ……」
「………」
「まだまだ子供ねぇ………」
「後三分起きててやるから早く話せよ、おう」
萃香はもう多分本当に寝た。
「せっかちなのは利潤追求的で良い事ですわ。生意気なのも個性と認めましょう。
じゃあ答え合わせね。
結界が不調なのはもちろん当たりよ。あの山が色々悪さしてるという推測も及第点。
でもねぇ…、自体は思っているより深刻なの、分かる?」
「原因は妖怪の山だけではない。だからもっと抜本的な解決策を施行する。なる程な」
「うふふ、合格よ。
…あら?もう掃除は飽きたのかしら?煎餅預かってるわよ、霊夢」
「あああ!沢山作ったのにもうこれだけしかない!!」
足袋を下履きにしたような靴を縁側の下に脱ぎ散らかして、霊夢が部屋にドカドカと入ってくる。まるで余所者みたいな文脈だな。
「駄目よ霊夢、今は巫山戯ちゃいけない時間なのよ」ん
「いつでも一番巫山戯てるのはあなたよ!簀巻き妖怪にしてやろうか!」こ
「後で埋め合わせをするから、話を聞きなさい」
「言ったわね?聞いたわよ!」う
それを言ったきり、霊夢は胡座をかいて背筋を伸ばして、紫の方を睨むように見つめた。修行僧みたいな話の聞き方だな。
12名無しさん祈祷中・・・@転載禁止:2014/10/11(土) 21:52:32.81 ID:syWr1LUf
外の至る所で暑苦しく蝉が鳴いている。ここは日本なんだからもっと涼が取れる鳴き声にならないのだろうか。
バイオリンみたいな鳴き声の蝉を想像してみたが、頭がおかしくなりそうだ。
「霊夢にも、何をするか言ってなかったかしら?」
「何をするも何も、昔より幾ばくか、外からの人や物の幻想入りが増えたりしてるくらいじゃない。面倒臭い事をする程じゃない」
「あのね霊夢、例えば外の世界から便利な日用品が沢山落ちてきたとします。それが続けばどうなるかは簡単でしょう?」
便利とは、神様ではなく、科学と社会を信仰する人間達が受ける恩恵だ。
少ない労力で多大な利益を得る事が出来るようになった幻想郷の人間がそうなるのも時間の問題である。
「そんなの、見つけ次第壊してしまったり、人間の手に渡らないようにすればいいだけじゃない」
「それでもいつかは人に渡ります。物は消えても欲を消すのは容易ではありません」
「何代後の話よ」
「そうなってしまってからはもう遅いのよ、それにね霊夢、あなた強いから、後、あなたも」
そこで紫は俺の方を向く。強いだって?うほほ�い
発言権は元からあったのに口を閉じていた俺は、嬉々として言を出す。
「じゃあ、死ぬ程長い前置きはこれまでにして、紫、お前の解決策とやらを教えてくれ」
「ちょっと!私はまだ納得してない!」
「納得なんて必要ないの。人間の納得なんて浅い自己満足に過ぎないんだから」
13名無しさん祈祷中・・・@転載禁止:2014/10/11(土) 21:52:46.97 ID:syWr1LUf
「仕方ないわね、近況と現状、これからの予定、即ち対策も含めて」
流石の紫も何かに緊張しているのだろうか、一呼吸置いて、また喋り出した。
「それとそこの鬼っこも仔細までは知らないでしょうから、あなたも寝ずにちゃんと聴きなさいよ」
何言ってんだこいつ
「お?いつから鬼に命令できる妖怪が現れたんだい?」
「幻想郷が出来た辺りから居たわ」
「ほぉーう威勢がいいねぇ、じゃああんたの長話の前に、表で弾幕ごっこでもやるかい?」
売り言葉に買い言葉だ。意外と賢者たる古参の妖怪にもアホっぽい所があるみたいだ。
無駄に時間を潰されたくないので、俺が割って入る。
「待ってくれ萃香、弾幕ごっこなら後で俺がやってやるから、今は話の腰を折らないでくれ」
「やってやるだとぉ?仕方ないな、後で絶対連れ去ってやるから覚悟しとけよー」
それにしてもこいつら姿勢も変えないまま凄い会話をするもんだな。俺も変えてないが。
「うふふありがとう。じゃあ始めるわね」
おう早くしろよ
14名無しさん祈祷中・・・@転載禁止
おっ土星「ここは幻想郷…?」