妻と初めてした会話 10言目

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よう、遅くなってゴメンよ(´・ω・`)
何かあったといえばあった様な、無いといえば無い様な感じだけど、
恋愛経験の少ない俺には結構ショッキングな出来事だったもんで、
克明に思い出せ過ぎて、胃痛で吐きそうです。なんだか眠れないしね(´・ω・`)


さて、特に決め事があった訳でも無かったけれど、試験の結果が出るまではと
三人とも連絡を取らずに迎えた3月初め。合格発表を無事に終え、晴れて心配事が
無くなった嫁さんは、同級生に話をした。
合格できたこと、勉強を教えて貰ったお礼、それから、俺に告白したこと。
「へー良かったねぇ、あいつ時々口うるさくてウザイけど、基本的には
 良いヤツだから…って知ってるか、そこが好きなんだもんね」
それは”同級生も俺を好きな筈”という先入観を勘違いだと思わせるほどの、
極めて自然な反応だったけれど、微かな違和感を嫁さんは覚えたって。

実際のところ、胸中は自分の誤算を後悔しつつ微かな嫉妬も混じった微妙な
心境だったけれど、それでも相手が嫁さんで嬉しかったのも本当だったと、
ずーっと後になって同級生は笑った。
「他の誰かならともかく、あの子だからね。嬉しかったのも嘘じゃないよ。
 でもね」

俺達の家の近所には河川敷に桜並木の遊歩道があって、毎年、春になると
それはそれは見事な満開の桜が見られる。
嫁さん達がオヤジから逃げて引越して来た頃は既にシーズンは終わっていた
から、俺は嫁さんにそのきれいな桜をどうしても見せたくて、約束してた。
春になったら見に来ようって、ちゃんと入試に合格して三人で満開の桜の下を
のんびり歩いてみようって、俺はそう約束をしていた。
402306:2012/03/17(土) 01:36:41.60
嫁さんが打ち明けた少し後、俺は同級生に誘われて二人でその遊歩道を歩いた。
学校帰りのゲームセンター、バッティングセンター、カラオケ、集まるのは
四、五人だったり、たまには二人だったりと、俺達が三人になる前はそんな
感じで同級生とも時々遊んでたから、そこに不自然さは無かったけれど、
いつも学校の制服か、きちんと清潔だけど男みたいなさっぱりした普段着しか
見た事なかったから、その日の同級生のいかにも女の子っぽい可愛い服に、
俺としては違和感があった。すごく似合ってたけどね。
「聞いたよ、付き合うんだって?」
「うん」
「だから言ったろ?あの子はあんたが好きだって」
「あーうん、当たってた。オマエすごいな」
甘さ控えめな苦い缶コーヒー飲みながらぽつぽつと始まった会話は、そのうち、
俺達が会ったばかりの頃まで遡った。
女の子っぽいのが苦手だった同級生に、俺が”付き合い易くて良い”と言ったこと。
毎朝、俺に”制服は着崩さない方がカッコいい”と服装を煩く注意されたこと。
鬱陶しかったが、そのうちやり取りが楽しくなって、わざと着崩していたこと。
男の友達を真似て、初めて俺のファーストネームを呼び捨てにした時のこと。
進級した時の新しいクラス編成表で、無意識にまず俺の名前を探していたこと。
俺としては、その転校生というか卒業生というか、とにかくもう会わないかの様な
過去形の喋り方が気になり出した頃、同級生は立ち止まって苦笑いを浮かべた。
「あーくっそー不戦敗かー」
「?」
「あんたさ、カノジョいたことある?」
「無いよ、悪かったな」
「いや、全然悪くないよ」
”悪くないからこれを持て”と温くなった缶コーヒーを預けて、両手塞がった俺に
”全然悪くないから目をつぶれ”と言って瞼を閉じさせ、同級生はキスをして、
それから、何が起きたのか全く理解できずフリーズしてる俺を笑った。
「お花見はさ、二人の方が良いよ」
「わたしは”忙しくて都合が付かない”から一緒には行けない」
「それと、あんたとあの子が付き合うのを、わたしは”心の底から喜んでる”」
それだけ念を押して一人でさっさと帰っていく同級生を呆然と見送ってるうちに、
俺はようやく、思い出話と文化祭の”気付けバカ”の意味を理解したのでした。
(´・ω・`)
403306:2012/03/17(土) 01:37:01.69

さて、自分の鈍さを痛感した俺は肝心なところだけはぼかしつつ、嫁さんに
同級生と会ったことを話した。
たぶんテンパッてよれよれだった筈の俺の話を一生懸命真剣に聞いた嫁さんは、
最後にぽろっとひとつ涙をこぼして言った。
「じゃあ私は、喜んでもらえて”心の底から安心してます”」
たぶんそうするのがこの場合の優しさなんだろうなと思った俺は、それから
少しずつ同級生と距離を空けるけれど、それが自然にできてたかどうか、
今でも自信が無いんだよね。

思い出すとイタタタってなるけど、でも何もせず自然冷却って訳には
どうしてもいかなかったんだよね、当時はさ。と同級生は笑います。


ってことで、同級生の決着は以上です、裁判長(´・ω・`)