>>190 「墜落の夏 日航123便事故全記録」(吉岡忍、新潮社)p153から引用。
(引用はじめ)
大阪のI君を訪れた帰り、私は京都の友人がやっている酒場にまわった。
そこで、あの123便に乗ることになっていて、たまたま知人との食事が
ながびいて乗りそこない、国鉄新幹線で大阪にもどった男がいたという話を
聞いた。彼の店にときどき顔をだす客の友人だったという。命びろいしたんだ、
と言うと、友人は首をふった。
あの晩遅くもどった男は、テレビ・ニュースで、自分が乗るはずだった機が
行方不明になり、墜落したらしいということを知って、安堵した。妻も驚き、
偶然の無事を喜んだ。そして、酒を飲んだ。風呂に入ったのは、もう夜中
だったという。そこで彼は転倒し、頭を強く打った。どこを、どんな具合に
打ったのか、友人は知らない、と言った。よほど場所が悪かったのだろう、
救急車で運ばれた病院で、男は死んだ。
嘘のような、ほんとうの話である。
(引用おわり)