まあ、アレだ。
結婚して後悔している奴は、タカアシガニの大きさについて知ったほうが良いな。いや、知るべきだ。
伊豆地方で生まれ、漁師を父親に持つ俺はその大きさを実感として知ってるんだが、マジ半端無い。
和田アキコくらい?とか全然そんなレベルじゃない。有り得ない大きさ。畜生、例える対象もみつかんねえ。
忘れもしない12月のやたら寒い日だ。まだ中学に入る前のガキを戦力として考えてたとも思えんし、
多分、親父は俺に家業を継いで欲しかったんだろうな。その日もぼろっちい船で海に出たんだよ。
で、親父がたくさん、捕まえたんだよタカアシガニ。その中に、一際デカイタカアシガニがいてさ、多分、足を
広げたら、3m70くらいあるだろうな? 親父が誇らしげにそれをつかんでさ。俺にみせたんだ。
「どうだ?」って。そしたら、そいつが、突然、飛びかかってきたんだよ。なんつうだろ、ジャンプ。
3m70っつっても、お前ら想像できないだろ? 今、旬のもので表すと田中二人分だ。田中マルクス闘莉王
ユウジムルザニ二人分だ。 なんだ?ムルザニって? レバノン戦で阿部のFKが決まって、闘莉王が
足引きずりながら、大喜びしてたろ? あの闘莉王が二人で跳びかかってくる感じ。 躍動。
で、さあ、顔にしがみつかれて、結局、親父が剥がしてさ。ちょっと痣が出来ただけで済んだんけどね。
親父が、あの厳しかった親父がカニよりも顔を真っ赤にして言うんだよ、「すまなかった。」って。
お詫びに今日はこのカニを俺が料理してやるって。お前の敵討ちだって。何もしてくれなかった親父がさ。
あの時は、絶対に認める気になれなかったけど、あのカニが塩辛かったのは親父の優しさのせいかもしれないな