聖闘士星矢の女性キャラαその2

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9486じゃないけど
聖闘士になるために東シベリアへ送られると聞いたとき、俺はどんな修業が
待ち受けているのかと、船の中でもろくに眠れなかった。命を落とすくらい
に厳しい生活が待っていると聞いていた。だから、シベリアについて、出迎
えた先生が女だったことに驚いた。
「あなたは、何のために聖闘士になりたいの」
俺がおずおずと死んだマーマに会いたいのだというと、その人はキッと俺を
見て、赤いマニキュアを塗った右手で軽く俺の頬を叩いた。俺はびっくりし
て、叩かれた頬を抑えて先生を見上げた。
「そんな甘い考えでは死ぬわ。聖闘士になりたいのなら、甘えを捨て、クー
ルになりなさい」
その晩、同室になった兄弟子のアイザックが言った。
「お前、女の人が聖闘士だって知って驚いただろう?俺だって最初はそうだっ
たさ。でも、だからって修業が甘いとは考えない方がいいぞ。なんたって
俺たちの先生は最強の黄金聖闘士なんだからな」
その通りで、次の日からさっそく始まった修業はとても辛くて、俺は何度も
死ぬかと思った。マーマしか知らなかった俺は、女性がここまで酷薄にな
れることをしって、ショックだった。先生は、俺に言ったとおりとてもクー
ルな態度で、倒れた俺たちを助け起こしもしてくれなかった。先生は吹雪の
中でもTシャツ一枚で、見上げると、薄い生地を押し上げてつんと尖った
乳首の形がくっきりと分かった。そのきれいに盛り上がった胸の前で腕を
組んで、先生はじっと俺たちを見下ろしていた。俺は、その足に縋って
ようやく立ち上がる始末だった。
でも、落ちてきた氷塊の下敷きになったり、病気にかかったりして俺たちが
命の危険にさらされたとき、先生が俺たちの元を離れることはなかった。
高熱に震える俺のベッドに一緒に入って、体を抱いて温めてくれる先生の
胸に頭を押しつけて、柔らかい肌を夢うつつに感じながら眠ることもあった。
とてもいい匂いがして、懐かしかった。
俺は、先生のそうした二面性に翻弄され、迷い続けて、十二宮で対戦した
ときも、どうしても刃向かうことが出来なかった。
「できません!女の人に…あなたに拳を向けることなど!」
「そういった甘い考えでは死ぬと言ったでしょう!立って私を撃ちなさい!」
先生の拳は修業の時とは比べものにならないほどに鋭く、残酷だった。俺は
先生の手で死ぬことに喜びすら覚えながら、何度も繰り返したのと同じように
その足下に倒れた。

運命の偶然か、俺が甦って再び先生とまみえたとき、先生は満足そうだった。
けれど、俺の作った拳圧が先生のマスクをはね飛ばし、重そうな聖衣の間から
見える細い腕に幾つもの細かい傷ができて、白い肌が血で汚れるを見ながら、
俺はとても辛かった。
「氷河…よく戦ったわ、あなたは私の誇りよ…」
そう言って先生が倒れたとき、俺は泣いた。そして先生の側に倒れた。
霞んでゆく目に見える先生の死に顔は、深海に眠るマーマと同じ、とても
安らかで優しい笑みを湛えていた。マーマと同じように、俺を導き、俺に
命を捧げてくれた女。俺の愛する先生。