聖闘士星矢の女性キャラαその2

このエントリーをはてなブックマークに追加
376ナターシャ光政その1
 城戸光政は、財団が新規に展開する事業の視察の為、ロシアに滞在していた。

 ある夜、贅を尽くした要人向けロイヤルスイートの重厚な扉が、コツコツと乾いた音を立てた。
「───入りなさい。」
 光政の声に応えて、古参秘書とボディーガードがブロンドの娘を伴って現れた。その娘はずいぶん若いが、身なりから察するに高級娼婦といった類の女だろう。
「来客の予定は無いはずだが?」
 光政の冗談めかした言葉に対し、艶福家の光政があちこちで作った庶子の処遇に常日頃から頭を悩ませている秘書は、皮肉な笑みをもって応酬する。
「そろそろ会長の悪いお癖が出てくる頃だと思いまして…ならばいっそ、こちらからご用意した方が、後々の面倒も処理し易いかと存じますが?」
「君には敵わんな。よかろう…下がりなさい。」
「は。」
 秘書とボディーガードは、若い娘に威圧的な目配せをして部屋を出て行った。一人光政の前に残された娘は、というと2人が消えたあとも、じっと扉を睨みつけている。
「…どうかしたのかね?」
「あなたはあの人たちの主人?だったらもっと部下の教育をしっかりした方がいいわよ。」
 娘は、美しくも愛らしい顔立ちに似合わぬ険しい視線を光政に向けた。
「彼等が何か失礼でもしたかな。」
377ナターシャ光政その2:2001/07/17(火) 12:41
「失礼もいいところよ。」
 彼女は、この部屋に通される前に、ボディーチェックを受けた。無論、身体の表面だけではない。
 相手にする客層が特殊であるだけに、彼女はそうした事に慣れていたが、こうまで事務的に扱われたのは初めてだった。薄い樹脂の手袋をはめた冷たい指が内部に侵入した時、彼女はひどくプライドを傷つけられた。
 その時の屈辱を思い出したらしく、娘は綺麗に紅を塗った唇を噛みしめる。
「私は…物じゃないわ。」
「それは、すまなかった。しかし彼等は私の身を案ずるのも仕事なのだ…許してくれ。」
「そんなに命が大事なら、女なんか買わずに、日本に帰るまで大人しくしていればいいでしょう!?」
 娘は怒りにまかせて、語調を荒げた。
 だが、光政は、金で買った、それも親子以上も年の離れた若い娘から非難されても怒るふうも無く、むしろ大真面目に反論した。
「大人しくしていられない性分だから、彼等が苦労するのだよ。それに、君のような美しい女性の為ならば、命など惜しいとは思わないがね。」
 意外な反応に、娘はあっけにとられて光政の顔をまじまじと眺めた。
「…よく、平然とそんな台詞が出てくるわね。あなた役者さんか何かなの?」
「役者は嘘をつくのが商売だろうが…残念ながら、私は女性に嘘がつけなくてね。」
「ふふふ…面白い人ね。私、あなたが気に入ったわ。」
 少女のような気紛れな口ぶりは、老齢にさしかかった光政には心地よい刺激だった。
 光政は、娘を抱き寄せて問うた。
「君の名前は?」
「ナターシャ。」