聖闘士星矢の女性キャラαその2

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教皇の存在に不審を抱き聖域を離れジャミールに住むムウは、黄金聖闘士とはいえ
まだ7歳の若輩者である。その為ムウは、たびたび五老峰を訪れては老師に教えを
乞うていた。

季節は春。穏やかに晴れた日だった。
ムウはいつものように大滝付近を到達点としてテレーポートすると、思いもよらぬ
光景に出くわした。
大滝の前に座した老師が、赤ん坊を抱いてあやしているのだ。
「老師!? どうしたのです、その赤ん坊は!?」
「おお、ムウか。この子はの、可哀想にこの廬山に捨て置かれておったのだ。
先程見つけて連れて来たのだが……ほれ、見てみるがよい、可愛いじゃろう?」
でれ〜ッと、表情を崩して老師が言った。
言われるままに、ムウは老師の腕の中ですやすやと眠る赤ん坊を覗き込んだ。
ぷっくりとした唇も、ほんのり赤いほっぺも、見るからに柔らかそうで。
ムウは思わず手を伸ばしていた。
指先でそおっと触れてみると頬はすべすべの肌触りで、軽く押すと指先にふにっと
した感触が伝わってきた。
「可愛いものですね」
初めて触れる赤ん坊の想像以上の愛らしさに、ムウの表情も弛んだ。
その様子に、老師は満足げに頷いた。
「そうじゃろう、そうじゃろう。それでな、この子の名前だが、春麗と名付けよう
と思うてな」
「さすが老師。いい名前ですね」
「ほっほ。いいじゃろう? 今日のこの麗らかな日和にちなんでみたんじゃよ。そ
れにな、まっすぐな心根の優しい子に育ってほしいという思いも込めてあるんじゃ。
もちろん美しく育ってほしいという願いも込めておる。でもやはりあれじゃな、健康
に育ってくれればそれでよいのだが……、のう、ムウよ?」
返事がないのに気付いて老師が顔をあげると、ムウはいなかった。
「はて……」
何処へ行ったかと、辺りを見回す老師の前に、両手一杯にベビー用品を抱えたムウ
が現われた。
「お、お主。それは……」
「名前も大事ですが、その子の快適な成育環境を整えるのも大事かと」
「それはそうじゃがな、その手に持っておるもの、もしや盗……」
老師の言葉を遮り、ムウは言った。
「お言葉ではありますが老師。必要最低限の用具もなく、どうやって春麗を育てる
おつもりですか。それではその子が可哀想です。はっきり言って虐待です」
「むぅ……」
老師は、返す言葉もなく、腕の中の春麗とムウの持っているベビー用品とを見比べた。
背に腹は変えられぬ。金もない事だし。
老師は腹を決めた。
「そ、その桃色の服なぞ春麗に似合いそうだの〜」
「そうでしょう。ウサギさん柄なんですよ、これ」
ムウはにこやかに言った。
350名無しさんのレスが読めるのは2chだけ!:2001/07/14(土) 22:16
「老師とムウは今日も来なかったな」
教皇への謁見を済ませた黄金聖闘士達の話題は、自然この場にいない者が対象となった。
アルデバランの言葉を受けてアフロディーテが言った。
「教皇の召集にも応じないとは。まったく、何を考えているのだか」
「ああ。これでは反逆の意あり、ととられても仕方がないな」
カミュが続けると、デスマスクはにやりと笑みを浮かべ、アイオリアに向かって言った。
「へッ。反逆者は1人で十分だぜ。なぁ? アイオリア」
「…………」
アイオリアはその言葉を無視していたが、さすがにシュラの言葉には眉をしかめた。
「反逆者なら俺が始末してやるさ」
「やめないか」
ミロがシュラを制していると、それまで黙っていたシャカが静かに言った。
「半殺しでは始末した事にはならないと思うが」
「……クッ、なんだと?」
「だから、やめろと言っているだろう」
うんざりといった様子でミロは二人の間に割って入る。
辺りに、重苦しい空気が流れた。

一方その頃、五老峰では、
「そら春麗。いないいない、ばぁ」
「きゃっ、きゃっ」
「ほっほっほっ」
なんとも和やかな時間が流れていた。