■■トレドミン統合情報スレ■■

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216優しい名無しさん
SNRI

塩酸ミルナシプラン

■開発の経緯

SNRIは、脳内神経接合部において神経伝達物質であるセロトニンおよびノルアドレナリンの再取り込み部位に選択的に結合し、その取り込みを阻害することによって抗うつ効果を発現させる薬剤です。また、他の神経伝達物質受容体に対しては親和性が認められず、安全性が高いという特徴を有しています。

従来、「うつ病・うつ状態」の治療には第1世代・第2世代といわれる三環系抗うつ薬や四環系抗うつ薬が主に用いられて来ましたが、一般に効果は強いものの、効果の発現が遅いものが多く、また抗コリン作用や心毒性等の安全性面でも注意が必要でした。

欧米では1980年代に第1世代・第2世代抗うつ薬より安全性を高めた第3世代の抗うつ薬SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が開発され、現在抗うつ薬の主流になりつつあります。なお、今年4月にマレイン酸フルボキサミンが、国内初のSSRIとして承認されております。その後欧米では、1990年代になって、セロトニンだけでなくノルアドレナリンの再取り込み阻害作用を加えることによって第1・2世代抗うつ薬と同等の効果を保ち、効果の発現が早く、しかもSSRIと同等の安全性を有するSNRIが第4世代の抗うつ薬として開発され、上市され始めています。国内では「トレドミン錠」が初めてのSNRIとして承認されました。

■SSRIとSNRIの作用機序の違い

Kielholzのシェーマによりますと,NAは精神運動抑制が,5-HTは不安,攻撃性が標的症状になると説明されており,これを抗うつ薬の使用の指標にしてきたわけです。しかし,それは薬理学的事象と実際に現れる臨床効果との間にはギャップがあり,薬理学的特徴をもって,すぐに臨床効果あるいは臨床効果の内容にまで踏み込んでいくことには慎重になるべきだということです。
そうはいっても現在分かっている薬理学的事実から考えてみますと,5-HTは縫線核を起始核とし脳全体に均一に分布しています。NAは青斑核を起始核とし,やはり広範に分布しています。それだけに両者は精神活動に幅広く関与しており,実際の脳内のネットワークからすると緊密な相互関係を有していると考えられます。
例えばNAが縫線核の5-HT細胞に対して促進的に作用しており,選択的なNAの再取り込み阻害薬を服用している患者さんに5-HT遊離促進剤であるフェンフルラミンを投与すると,臨床的に見てもそのホルモン分泌効果が増強されることが知られています。また,5-HTに選択的であるSSRIを 3〜4 週間反復投与すると,縫線核の5-HT細胞の5-HT1A受容体が脱感作し5-HTの放出を増大させトータルとして5-HTの機能を促進させることが,かなり明確なデータとして報告されるようになり,これをうつ病の奏効機転に結びつけようとする方向にあります。こうした事実を総合的に判断するとSNRIのように5-HTに加えてNA機能増強を合わせ持つ薬剤は,SSRIの効果をさらに増強する薬剤であると考えられます。また,NA再取り込み阻害作用により前頭葉の大脳皮質のドパミンの機能を増強することも分かっていますので,SSRIに比べてSNRIは5-HT,NA,ドパミンという神経伝達物質に幅広く作用する可能性があります。このことが臨床的にどういう意味を持つのかということを検討することは重要です。すなわち,SSRIでは効果発現の遅さ,最大効果の低さ,長期投与での再発といった問題点が指摘されており,こうしたことをNAやドパミンで解決できないか考えています。
217優しい名無しさん:2000/11/07(火) 19:16
■抗コリン作用,心毒性,初期の消化器症状が少ない

TCAはムスカリン性アセチルコリン受容体,ヒスタミンH1受容体,アドレナリンα1受容体などに親和性を持っていることが副作用の原因と説明されています。ミルナシプランはいかなる受容体にも親和性を持たないので副作用を含めた安全性に大きな期待が持てるわけです。ミルナシプランが臨床で使われている欧州での臨床データを96年にMontgomeryが報告しており,それによると抗コリン性の副作用の代表である口渇はTCAが37.3%,ミルナシプラン,SSRIは数%とプラセボと差がありません。さらには,眠気・振戦に関してTCAが10%台であるのに対して,SSRIとミルナシプランはプラセボと差がありませんでした。SSRIの投与初期に問題となる悪心はSSRIで20.1%ですが,ミルナシプランで11.2%,TCAで8.4%,プラセボで10.9%であり,ミルナシプランとTCAはプラセボと差がありません(3)。このように明らかに副作用が少ないことが欧州のデータからも言えます。ミルナシプランにはキニジン様作用がなく,けいれん閾値を下げることもないので,重篤な心毒性やけいれん誘発性の心配もありません。ただ 1 つ副作用として懸念されるのは排尿困難です。抗コリン作用により起きる排尿困難は知られていましたが,ミルナシプランの場合はNA作用の増強によるものではないかと考えられています。Montgomeryの報告でも排尿障害の発現率はミルナシプランが2.1%であるのに対し,TCA 0.6%,SSRI 0.3%とプラセボと同程度でした。排尿困難には気をつけるべきでしょう。

■薬物相互作用もあまりない

フルボキサミンをはじめとするSSRIは薬物相互作用が指摘されています。フルボキサミンは薬物代謝酵素Cytochrome P450(CYP)1A2やCYP3Aなどを阻害するので,併用禁忌の薬剤があります(4)。一方,ミルナシプランはこれらの酵素に反応しないので,安心して使える可能性があります。

■速効性ありの臨床データも

Lopez-Iborのメタアナリシスの報告によりますと,ハミルトンうつ病評価尺度得点を50%以下に減少させた症例の率はミルナシプランが64%であるのに対し,フルオキセチン,フルボキサミンは50%であったとしています(5)。ハミルトンうつ病評価尺度 7 点以下の寛解率では,ミルナシプランが39%,SSRIが28%でミルナシプランのほうが優れていました。またフルボキサミンとの比較試験における 1 週目の改善度でミルナシプランのほうが有意に優れていました。日本でのイミプラミンとの二重盲検試験ではミルナシプランに速効性も認められました。ミアンセリンとの二重盲検試験でも速効性がある傾向が確認されていますので,今後の臨床でも速効性が特徴の 1 つとなる可能性があります。