東武鉄道が東急グループに!?

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30東急グループの現状−其の壱
−グループ経営は、純粋持ち株会社でー
(1) 東急グループは、東急電鉄主導で再建
東急グループは、グループ全体の経営戦略の意思決定を3年間東急電鉄が担当すると発表した。
従来、東急グループは、株式公開をしているグループ会社の社長がその戦略を立ててきたが、今回
東急電鉄の社長を議長とし、電鉄の役員クラスで戦略を担当すると言う。
今回の変更の背景は、各グループ会社の自主的経営の結果、業績が大幅に悪化したためである。
このために、グループ全体の経営戦略を統一し、経営資源をグループ全体で集中させ、効率的グル
ープ経営を行おうとするものである。
因みに、同グループは約500社で構成され、主要な公開会社は、東急百貨店、東急不動産、東急
ホテルチェーン、東急車輛製造、東急建設などがあり、その多くは業績不振に陥っている。
(2) 事業持株会社制の問題点
こうしたグループ経営を各グループ会社全体の合議制からリーダー主導の経営に変更することは、
経営の効率化から重要な戦略である。特に、経済構造の変化のスピードが速い昨今においては、必要
不可欠なことである。
しかし、この場合重要な問題が2点隠されている。
31東急グループの現状−其の弐:2001/05/30(水) 02:25 ID:???
(A) 経営指標の問題
まず第1に、グループ全体の経営戦略の良し悪しをどういった尺度で図るかという点である。東急
グループの場合、今回の変革は、事業会社持株制に近い。すなわち、戦略を企画する会社(東急電鉄)
自身もある事業を抱えているということで、出資だけを基盤とした純粋持株会社ではない。このために、
グループ全体の経営戦略の尺度が東急電鉄の事業自身の尺度が優先される危険性がある。つまり、グル
ープ全体の経営にとって良いと考えられる戦略が、東急電鉄の事業にとって良くない場合、同社の事業
を撤退できるのかと言う問題である。純粋持株会社であれば、それ自身事業を持っていないので、資本
の効率という尺度(ROEやEVA)でグループ全体の戦略を決定できる。
同グループの場合、EBITDA(営業利益+減価償却額)やこの利益と有利子負債の比率、また
フリーキャッシュフローなどを採用すると言われているが、東急電鉄自身が率先してこうした尺度への
対応をするのか不明である。つまり、EBITDAがマイナスのグループ会社が経営改善を行うことは
当然であるが、マイナスでなくとも水準の低い会社が同等の経営改善努力をしなくていいとはいえない。
32東急グループの現状−其の参:2001/05/30(水) 02:26 ID:???
(B) 株式公開子会社の問題
第2の問題はもっと深刻である。従来からレポートで指摘してきたように、子会社の株式公開である。
今回の東急グループの場合、グループ会社は実質的に東急電鉄を親会社とし、それ以外のグループ会社
を実質子会社化するものである。そして、そのいくつかが株式公開したままの状態の置かれる。
こうした場合、もし東急電鉄のグループ経営戦略が失敗して、公開子会社の株価が下落したらどうす
るのかというものである。子会社の他の株主が、親会社にその下落分の損失補償を求める恐れがある。
あきらかに、この点において子会社の株式公開の矛盾点が存在する。
この問題は、既存のグループ経営で一般的に抱える問題である。金融の再編に揺れる金融界で合併の手法
では発生しないが、提携もしくは子会社化の手法(銀行による株式公開している証券会社のグループ化)
では同じことである。また、子会社の株式公開でグループ全体の改善をはかるものもあるが、その子会社
をグループ外にしない限り、同じ問題が発生する。
さらに、新興企業でも同じ傾向が見られる。新興企業自身が株式公開し、その時に手にした資金を
取引関係にある未公開企業に出資し(子会社化)、この企業を株式公開させる。この場合、キャピタル
ゲインを得るために、出資分を売却すれば、上記問題が生じないが、引き続き子会社として置く場合、
同じ問題が生ずる。
(3) 純粋持株会社の導入を
(2)の問題点の根幹は、事業持ち株会社制度の採用とその子会社の株式公開のある。日本経済基盤
の強化のひとつである「経営資源の効率的使用による企業体質強化」において、今回の東急グループの
戦略は正しい。しかし、その組織形態は重要な問題を含んでいる。こうした場合、事業持ち株会社では
なく、純粋持株会社を採用すべきであり、かつ純粋持株会社の株式だけを公開し,その子会社の株式は
公開すべきでないと考える。