○○家の人々 第二章

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493U-名無しさん
>>491
(俺がおらんほうが…やっぱこの家の為かもしれんなー・・・。)
ぶつぶつ考えながらふらっと外に出る襟。
入れ違いに小栗鼠とその小栗鼠の背中におんぶされて少年襟帰宅。
「あれ…?襟は?」
少年襟を追いかけてひっくり返したコーヒーカップやらなんやらは
きちんと洗われていて食器棚の中に片付けられている。
「嘘やろ?襟が片付けたん…?」
「ママがいないとなんにも出来ないのに?」
小脇で自分を見上げながらそう眉を寄せる少年襟に小栗鼠はきゅっと手を握り締めた。
「…襟っ!」
くるっと急いで振り返って外へと出て行く小栗鼠。
(まさか出て行こうとか思ってるんとちゃうやろなっ…!馬鹿襟っ!…)

「追いかけなくてもいいの?」とインコ怪人(モリツァ)。
「いいよ。今日だけはママの事貸してやる。」と不服そうだが強気にそう言う少年襟。
いまだに不思議そうに自分を見ているインコ怪人(モリツァ)に
「おじさんと約束したんだ。強い男になるって。」と少年襟は言うとそのままインコ怪人(モリツァ)にキック。
「…もーっ!寄るなよ、お前怖いんだよっ!!」

成長の兆しの見える少年襟に涙するマスコット達。
494U-名無しさん:2001/07/20(金) 04:51 ID:???
>>493
川の土手に腰掛けぼんやり川面を眺める襟。
(小栗鼠の幸せ、ガキの幸せ、俺の幸せ、みんなちょっとずつ食い違ってんねやな…)
自分の幸せだけに夢中になっていたことに今更気づく…妻と息子の幸せが何なのか、そう言えば知らない…。
(いっこだけ確かなのは、俺がおったら小栗鼠とガキは俺に振り回されて、不幸街道まっしぐらってことや)
「襟!」
突然の声にハッと振り返った途端、タックルするように飛びかかって来る小栗鼠。反射的に抱き止めると、スタミナ自慢の妻は小さい体全体で息を切らしていた。
「…何処行く気やったん!?黙って居なくなるなんて!」
「小栗鼠…落ち着けや、こんなハァハァいっとるやんか…」
「当たり前や!どれだけ走り回って探したと思ってん…モ〜〜ッ!!親子揃って同じことするんやからー!!」
両手の拳でがんっと襟の肩を打って、そのまま肩に顔を埋める小栗鼠。
その背中をポンポン叩きながら襟が呟く。
「なあ、俺、よっく考えたんやけど…俺ら、別れたほうがええよ…」
ビクッと固まる小栗鼠。
「俺なんか、お前とガキに迷惑かけっぱなしやし…俺なんかよりずっとお前のこと好きで大事にしてくれるヤツ、仰山おるやん」
「……」
「もう、俺なんかの為に犠牲になって欲しくないねん。今度はお前自身の幸せをみつけえや」
「…俺なんか俺なんか、なんて言いなやー!!」
言葉と共に、がすっ、と襟の顎に小栗鼠のアッパーカットが刺さる。意外過ぎる不意打ちにクラクラする襟。
495U-名無しさん:2001/07/20(金) 04:53 ID:???
>>494続き
「なんかって何や!襟は俺の大事な旦那や…俺は襟と子供の世話を焼くのが幸せなんや、それ以上の幸せなんか、世界中のどっこ探してもないんやからな!!」
まるで喧嘩腰の勢いで言い放つ小栗鼠。その表情がすぐに歪み、腕の中から夫の顔を見上げる。
「…だから、別れるなんて言わんとって…。心は俺の傍に置いてってくれるって、言ったやろ…」
決して人に辛さを見せない妻の顔を、今は涙がボロボロ零れていく。襟は暫くそれを凝然と見詰めていたが、やがて指先で涙を拭うと、ギュッと小栗鼠を抱き締めた。
「…たまには、俺に甘えや」
「…うん」
甘えられる心地良さを感じながら、小栗鼠を抱いたまま子供をあやすようにユラユラ揺れる襟…。


その後ろを、襟と同じ地域へ転勤することになっている隣町のイナモっさんが、妙に毛の少ない犬を連れて走って行った。