学校でトイレ禁止のいじめ

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「え…と…爽健美茶と、ウーロン…コーラ…」
ゴトンゴトンと500mlのいペットボトルが取り出し口に
落ちてくる。
それを次々と明日香に手渡し、記憶をたぐって次のボタンを押す。
これで全部のはずだ。頼まれた6本のドリンクを、明日香と半分ずつ抱えながら
奈央は階段を走った。
もう何ヶ月続いているだろうか。
クラスメイトの使い走りにあくせくする毎日。
特に内気な性格なわけでもない。ただちょっと友達のグループに入る
きっかけをつかめなかっただけ。それだけで今後の学生生活が
決まってしまうとは。
だが6人もの生徒、そしてリーダー格の菜月に逆らうほどの勇気も持てず、
奈央はこの屈辱的な生活に甘んじているのだった。
とくにひどいことをされるわけでもない。ただちょっと言うことを聞いて
いればいいだけ。
クラス変えになれば彼女達とも離れられるだろう。あと8ヶ月。
長いようだが、辛抱していれば…。
ちらりと隣の明日香に目をやる。
自分に言えた立場ではないが、明日香はしようがないのかもしれない。
絵に描いたようないじめられっ子。メガネに三つ編み。長いスカート。
最近の女子高生とは思えないようなすっぴんの顔。
もう一人、菜月たちの奴隷のようにされている亜美も、似たようなものだった。
そういう彼女たちと同じ扱いなのも、奈央にとっては気に入らないことだった。
しかし今や彼女たちは数少ない同じ境遇の友。
表面上の付き合いをしながら、3人で菜月たちの視線に怯えているのだった。
教室につく。
「遅いよー」
行儀悪く机に腰かけていた菜月から大きな声が飛んだ。
背が高く背中の半ばまで届くような長い髪。短いスカートからのびた
美しい脚。妙に色気のあるしぐさ。
モデルとまではいかないが、高校の中でアイドルになるくらいには充分の
美人だった。性格はわがままな売れっ子アイドル以上のものであったが。
「ごめんなさい・・・」
菜月と目をあわせようともせず、二人は机の上に買ってきたドリンクのボトルを
置いた。
その時菜月とその友人達が交わした、怪しい笑みも二人の目には入らなかった。
12000:2001/08/05(日) 03:00 ID:N.nWt5tA
「え・・・?」
菜月の言葉の意味が理解できず、奈央は顔を上げた。
「だからー、飲んでいいって言ってんの。いつも買ってきて
 もらってばっかりじゃ悪いじゃん」
冗談めかした様子もない菜月の表情に、奈央は戸惑った。
「でも…」
隣にいた明日香も口を開く。戸惑いは彼女も同じのようだ。
菜月の顔と6本のペットボトルを交互に眺めている。
「せっかく飲んでいいって言うのにいらないのー?」
菜月の横の椅子に座っていた奈々海が意地悪な表情を浮かべる。
菜月とは対照的に、ショートカットで小柄な体。菜月の腰ぎんちゃくのような女だ。
「ま、6本じゃ多いだろうし…亜美ー。あんたにもあげるよ」
自分の席に座っていた亜美がぎくりと肩を震わせてこちらを振り返る。
顔からしぐさまで見るからに陰気そうな印象だ。救いといえば、雰囲気を除けば
なかなかのかわいい子ということくらいだろうか。
彼女もおずおずと菜月たちの前にやってきた。
「ほら。さっさと飲みなよ」
菜月が3人の前にどんとペットボトルを置く。
「早く!」
菜月がおどすように明日香をにらみつけた。
「は、はい…」
その剣幕に、明日香は急いで一本のお茶のボトルを開け、口をつけた。
次に視線が飛んでくる前に、奈央と亜美もそれぞれペットボトルを手にした。
少しずつ口をつけ、なんとかこの場から離れる機会をうかがっていた奈央に、
菜月が信じられないような言葉をかけた。
「せっかく買ってきたんだから、全部飲んでよ」
「全部って…2本とも・・・?そんなに飲めるはず・・」
奈央が精一杯抗議の姿勢を見せる。他の2人はすっかり萎縮してしまっているようだ。
「あー?飲めないの?わざわざ好意で言ってるのにさぁ」
繭子が威嚇的な口調で口を開いた。バスケ部の彼女は、体格がよく
それだけでも迫力がある。
使い走りだけでは厭き足らず、3人をいじめにかかろうというのだろう。
そんな予感はしたが、それに逆らうことはできなかった。
仕方なく、飲めるだけ飲もうとボトルを傾ける。
今まで走ってきたこともあり、喉が乾いているのは事実だった。
なんとか一本目を飲み干す。
だがさすがに2本目に口をつける気にはならない。亜美と明日香は
一本目をすでにもてあましているようだった。
しかし菜月はどこまでも容赦なかった。
「絶対全部飲んでもらうからね…」
その陰険な目は、まるで餌を狙う蛇のように3人を眺めまわしていた。
13000:2001/08/05(日) 03:17 ID:N.nWt5tA
(うぅ…お腹苦しいよぉ…)
1時間目が始まり、奈央はぱんぱんになったお腹を手で押さえて
授業など耳に入る状態ではなかった。
奈央が何度抗議しようとも、明日香が涙ぐみながら蚊の泣くような声で
もう無理だと訴えようとも菜月たちは退かなかった。
その強引さに、奈央たち3人は結局全てのペットボトルを飲み干すことに
なったのだった。
15分あまりもかけて、合計1リットル。苦しくなるのは当然のことだった。
容量を越えた水分をためこんで、奈央のお腹は悲鳴を上げている。
(もう…早く消化してよ…あ、飲み物だから消化じゃないか…)
おしっこになって体外に排出されるのを待つしかない。
こうしてる間にも奈央の体内の水分は少しずつ下に降りていっているのだろう。
実際、奈央はわずかずつだが尿意が起こってくるのを感じていた。
そして、それは驚くほど急速に奈央の下半身で高まりつつあった。
(当たり前だよね…あんなに飲んだんだから…)
そこで奈央の頭に不安がよぎった。菜月たちは次の休み時間も奈央たちに
からんできたりしないだろうか。
次の休み時間にトイレに行かないわけにはいかない。
あれだけの水分がそのあとまた1時間も体の中で大人しくしていて
くれるはずはないだろう。
(とにかく、次は何言われてもトイレに行かなきゃ…)
見ると、亜美も明日香も心なしか落ち付かない様子で体をもじもじさせていた。
時計はあと5分で授業が終わることを示している。
ほどなくベルが鳴り、奈央は不吉な予感が的中していることを知るのだった。
14000:2001/08/05(日) 03:51 ID:N.nWt5tA
「ちょっと来てよ」
奈央の後ろの席の、千春が声をかけた。彼女も菜月のグループの1人だ。
嫌な予感がしながらも、奈央は従った。
亜美も明日香も同じように連れてこられる。
亜美はすでに限界に来ているのだろうか。菜月たちの前に立ちながら、
もじもじと体をくねらせている。
「なによ…」
奈央は少し強気に菜月の顔を正面から見据えた。
今は菜月にしたがっているわけにはいかない。
どうにかしてこの時間の内にトイレに行かなければ。
「別にー?友達が友達呼んじゃ悪い?」
菜月がずけずけと言う。誰が友達だ。こうして難癖つけて自分たちを
トイレに行かせないつもりだろう。
そこまで従う必要はない。それにどんな命令にでも従ってしまうほど
気が弱いわけでもない。奈央はきっぱりと口を開いた。
「なにも用ないんだったら、トイレ行ってくる」
くるりときびすを返した奈央の腕が、がっちりと掴まれた。
「何それー?なんか感じ悪くない?」
振り向くと、繭子がきつい表情で奈央をにらみつけていた。
「ちょ、ちょっと…放してよ」
その迫力に、やや怯えながらも奈央は腕を振り払った。
とたんに皆の顔が険悪になる。亜美と明日香はその様子をおろおろと
眺めていた。
何も言えず、後ずさることもできず奈央は上目使いに繭子を見つめていた。
たまらず、亜美が口を開く。
「私も…トイレ…」
亜美はもう前かがみで脚を交互に動かしていた。
「ふーん…みんな態度悪いねー」
菜月は吐き捨てるように言うと、突然立ちあがって奈央の制服の
胸の部分をつかんだ。
「ちょっ…何す…」
そのまま力任せに引っ張られ、奈央は菜月の席に叩きつけられるように
しりもちをついた。そして開いた脚の間の部分のスカートを踏みつけられる。
思わず脚を閉じようとして、奈央は菜月の足を太ももではさむような格好になった。
上から見下ろされ、奈央は蛇ににらまれた蛙のように動けなくなった。
表情が凍る。震えは尿意のせいだけではない。
怖い…。
逆らうことなどできなかった。いつか、もっとひどいことをされたらいつでも
拒否できる。そしてこんな立場からも逃れられる。
そんな思いは、今までこんな仕打ちを受けたことがなかったための思いあがりだった。
彼女たちはこんなにおそろしかったのだ。逆らえるはずがない。
奈央はうつむいて何も言えず、
ただ脚の間に置かれた菜月の靴を見つめて涙をこらえていた。
「あの…私、もう…」
そんな亜美の訴えも奈々海のひと睨みで抑えられてしまう。
明日香に至っては、言葉を発することもできずうつむいたままだ。
菜月の足がようやく退いた。
「そうやって大人しくしてればなんにもしないからさ…」
そしてベルがなった。
15000:2001/08/05(日) 04:17 ID:N.nWt5tA
先ほどの恐怖の陰に隠されていた尿意は、授業の始まりと
同時に急激に再発した。
お腹に収容しきれなくなった水分が内側から奈央を責めたてる。
ぴったりと足を閉じて下半身に力をこめる。だがこんなささやかな抵抗が
この時間の終わりまで続きそうにはなかった。
その時、後ろから腰をつつかれ、奈央は思わず体をよじった。
そっと下を見ると、奈央の腰の横に紙切れを持った千春の手があった。
(・・・?)
くいくいとその手がその紙切れを主張するように動く。
手紙・・・?奈央はそれを受け取り、開いて中を見た。
(・・・!!)
「トイレ行ったら殺す」
書きなぐったような文字だった。シンプルな文面がいっそう恐怖を刺激する。
これで、授業中にトイレに行くわけにもいかなくなった。
今は苦しみから逃れられても、あとから何をされるかわからない。
(どうしよう…このままじゃ…)
奈央はその紙切れをくしゃくしゃに握り締め、閉じた脚にいっそう力をこめた。
握りしめた手が汗ばむ。このままでは耐えきれずにおもらししてしまうのも
時間の問題だ。もじもじと腰をくねらせながらあれこれと考えを巡らせる。
その時、ガタリと椅子が動く音がした。
亜美が立ち上がっていた。うつむきながら小走りで教壇に向かう。
そして小声で先生に何か告げると、そのまま急ぎ足で教室から出ていった。
奈央は自分のことのようにドキドキと胸を鳴らして菜月のほうに目を向けた。
菜月は、近くの席の奈々海と何やら笑みを交わしている。
命令を破ったおしおきでも相談しているのだろうか。
もし自分もトイレにいったら、何をされるのだろうか。
今、我慢できたとしてその後もトイレに行けないのだろうか。
怖い。怖い。怖い…。
尿意は激しく迫り来る。恐怖がそれに拍車をかける。二重の震えが
体全体に走る。汗ばんだ体に制服がまとわりつく。その湿った布の中、
奈央の体はくねくねと不規則な動きを繰り返していた。
しばらくして亜美が戻る。おびえた表情で、誰の顔も見ないように席に座った。
安心感とそれ以上の恐怖に引きつった表情…。
奈央の尿意はこれ以上ないほどに高まっていたが、亜美を見つめる
菜月たちの不敵な表情を見ていると、奈央はどうしても動くことができなかった。