ギチギチ革拘束 3

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6いくし
あらららら…
nimdaウイルスを警戒して近づかなかったうちに倉庫落ちしちゃったのね。
うう、それともネタ振るだけ振って動き始めるのが遅かったオイラが不味かっ
たのかね。
それでも、やっぱりそんなにさくさくは出来ないんで、また落ちちゃったらど
うしましょうねぇ…


ま、取り敢えず気を取りなおしまして…
☆★※☆★※☆★※☆★※☆★※☆★※


それほどたらふく食べた訳でもないのに、どうにか食いつないだ食事を片っ端
から撒き散らす羽目になった。
それどころか、昨日の朝食べた分とかまでも出てきちまったんじゃないだろう
か。
…これ以上は、文字通り「逆さに振ったって」出てきやしない!…
そう思ってたんだけどね。
「ぅ……ゲ……ふっ……」
胡散臭いジジイが操る革鞭が一ッかたまりになってまたもや鳩尾に食込んだ途
端、そこら辺があたしの気持ちなんかをほっぽり投げて、引き攣る。
ボロ切れみたいになってた装備が、とうとう弾けてどっかへ飛んでっちまった。
魔法で動くそいつがばらけて生き物みたいに絡み付いてくる。物凄い力で胸か
ら下をギュウギュウに締め上げられる。
…つ…潰れ…っちまう…
腹が止めようも無く、ぶるぶる震えたかと思うと、
「…!?…うぅっぶぇ……エ…ぇ……げふっ…!!」
すっぱくて熱いかたまりが、喉元を焼きながら口の中に溢れだした。
「…けっ…ふ……ぅ…」
気持ち悪い。
堪えきれずに吐き出しちまったそれが、逆さまにされたあたしの顔を流れて落
ちてくる。
激しく咳き込んでしまって訳がわからない。鼻の奥と目が酷く痛む。
…畜生っ!…息が……もう……
「そろそろ良い返事を聞かせてもらえないかね?
『恐るべきオー・フローデ』(awful Aafrode)」
気に入らない!!…と頭で考えるより先にその顔面に唾を吐きかけちまってた。
へへ。良いねぇ。さすがあたしの身体。
「…っく……ぃ……」
千切れるような痛み。
節くれ立った指が、あたしの胸に食込んで胸糞悪くなるように動いている。
「こちらとしても、出来れば道案内は「人」の姿の方がありがたいんじゃがの
う…」
…胸が剥がれちまう…っ…よぉ!!…
その腕に食らいつこうとしたが届かなかった。
石造りのその部屋に囚われちまったこのありさまでは……両足を広げられて天
井から逆さに吊るされ、両手も同じくらいに広げられて床に繋がれちまってち
ゃ、身動きだってできやしない。
それどころか、何を言われたのかもその時のあたしの頭の中にはこれっぽっち
も入っちゃあいなかったんだ。
7いくし:01/09/21 23:35 ID:pNTrXbkY
紅き革の虜、もしくは魔剣士の誕生

逆さまになったジジイの後ろで扉が開く。
「ア、アーディー…!!」
聞き慣れた声が、何時もは気に障るキンキン声が、どう言う訳かこの時は力無
くあたしを呼んだ。
それでもこのジジイの声より少なくとも百倍はありがたい声だ。
「ピクスヴィー!?…『来れ我が手に!!』」
思わず契約の言葉を唱えて「彼女」を呼ぶ。革紐に絡みつかれた利き腕の手の
ひらを広げる。
「だ、ダメ! アーディ……ぎゃあっ……あぁっ…ぁぁ…」
「ヴィーっ!?」
金属がきしるような音がして「彼女」が悲鳴を上げた。
ジジイが薄笑いを浮かべて、私の前から退く。
「なっ!?」
石造りの台座に突き立てられ、妙な革紐に幾重にも絡まれた剣が、ぎしぎしと
軋みながら青白い火花を上げていた。
「ァディ……ダメ……助け…て……ボクを…呼ばな……い…で……二つに…裂
けちゃう…よぉっ……」
ようやく事を飲みこんだあたしが彼女を呼ぼうとしていた手の平を閉じるまで
の時間はさして長くないはずだったが、それでも「彼女」魔剣ピクスヴィーに
相当のダメージを与えちまったらしい。
「頼みの相棒はここにおるぞ。もはや助けにはなれんだろうがの」
その指が空を切り、あたしらには理解できない軌跡を刻んだ。
「お前さんの浅はかさのせいじゃ」
「彼女」を縛める革紐がぎしぎしと嫌な音を立ててきつく張り詰め、更に新た
な縛が増えた。
「…い…いやぁ…」
耳障りな音とともに、軋むような声で彼女がうめく。
「ピクスヴィーに何をした!?」
込められるだけの憤りを乗せて、わめき散らした。
「別になんもしとらんて。この飾りを着けていて欲しいと頼んだだけじゃ。そ
の台座に細い鎖で繋がったこの飾りをな」
飲みこめた。
嵌められたのだ。
そして、あたしへの誓いと上手いこと仕組まれた忌々しい誓いの間で、どうし
ようもなくなっていたところであたしが呼んだ……。
ぞっとした。長い事逆さにされて、血の昇りきった頭の後ろがいっぺんに冷た
くなっちまった。
…じゃあ…ヴィーの「からだ」と魂は?…
「そうさな。二つに裂けたか、裂けそうになっておるかのいずれかであろうの
う」
「…ひっ…」
呪いの声を上げるより先にあたしの喉から出たのはそんな情けない声だった。