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345タイ国留学生制度について その1
数年前の卒業生です。タイ国留学生のことについて、このスレで話題になっていますね。これは、附高独特の制度で、私は異文化交流に関心があるので、この留学生制度はたいへんに興味がありました。一般でご存知ない方も多いでしょうから、私が色んなところから聞いた話や経験したことをまとめて提供させていただきます。

この留学制度は、1970年代の初めにスタートし、もう30年近くの歴史があります。奨学金を出しているのはタイ政府です。なんでも、当時日本の某首相がタイを訪問した時、タイ政府がこの話を持ちかけたのですが、NOと言えないその首相が日本人得意のあいまいな返事をした間に、タイ側はYESと言ったと理解したらしく、日本の知らない間に留学生を選考して送り込んできたのだそうです。日本の文部省はこれに慌てて、何とか高校の受け入れ先を探そうとしたのですが、どこからも断られ、最後に附高の当時の校長先生の決断で、留学生が附高で勉強できるようになったのだそうです。

留学生は、タイ国内で、中学生を対象とした試験があります。これはとても難しい試験で、5人程度の留学生を選考するのに、500人以上の受験者がいるということです。合格者は、試験結果のほか、タイ国内で行われている数学や英語のコンテストで入賞したかどうかなども考慮されるらしいです。

バンコクだけでなく、チェンマイとか、マレーシアの近くとか、各地から留学生が来ています。華僑系タイ人なんかですと、顔つきは日本人生徒と全く変わりません。聞くと、漢字で書く中国名を持っていたりします。華僑といっても、中国語はあまり話せないし、タイにいた時は漢字も書けなかった子がほとんどです。日本に来て日本語を勉強し、漢字を習って、初めて自分の姓を中国語で書く書き方がわかるわけで、日本への留学が、タイ人の華僑のアイデンティティを自覚させる役割を果たしているわけです。南のほうから来た子は、やはりマレー人っぽい顔つきです。マレーシア政府はマレー人優遇ですが、タイ政府は、華僑ももとからのタイ人もマレー系も差別していないのが興味深いと思いました。

日本に来るとき、留学生たちは、まだ中学を出たばかりで、15歳くらいです。出身中学は、タイでもさすがに名門どころが多いようです。留学の結果がわかるまで、タイの高校に仮に進学してから、中退して日本に来るという生徒もいます。来たときには、もちろん日本語はまったくできません。1年半、民間の日本語学校に通って、日本語ばかり勉強します。厳しい試験を通り抜けてきた生徒ですし、それに頭もやわらかいと言うこともあるのでしょうが、日本語研修が終わるころには、日本語検定1級というハイレベルの試験に余裕でパスできるようになるそうです。研修をしながら、週に何回か附高に来て、中学の課程を勉強し、日本の高校での勉強についていけるようにしています。
346タイ国留学生制度について その2:2001/03/05(月) 01:15
附高に入学すると、勉強も生活も、すべて日本人生徒と同じです。現代国語で留学生に負けたというレスがいくつかありましたが、私がもっとすごいと思ったのは、古文、漢文、日本史まで留学生はちゃんと勉強することでした。日本人が、アメリカでもイギリスでも海外の高校に留学して、ラテン語やギリシャ語をやらされたらどうでしょうか。日本史は、日本人には興味はあっても、タイ人には全く関係ない別世界の話でしょう。逆に、日本語の負担が少ない英語や数学は、留学生にとっては得意科目ということになります。

現代国語で負けたという話、中間試験と期末試験でタイ国留学生が奮起するのには、わけがあるのです。タイ国留学生は、日本人生徒のように入学試験を受けて大学に入るのではなく、推薦で大学に入学できるのです。だいたい、留学生が3年通して中間と期末でとったクラスの順位とおなじくらいの順位の日本人生徒が入る大学と同じような大学に推薦してもらえるらしいです。したがって、いい大学に推薦してもらおうと思うと、中間試験と期末試験で必死に勉強し、よい成績を挙げなければなりません。東大なら、10番以内でしょうかね。

留学生にも部活にも結構熱心な奴がいますし、辛夷祭では、本場タイ料理店をいつもだしていますね。日本人生徒と同じ制服着用ですが、タイの中学は校則も厳しいらしい(もちろん制服)し、学ラン姿の登場人物が出てくる日本マンガがタイに広まっていて、むしろ日本の制服にあこがれるという留学生が多く、抵抗は少ないようです。入学後は一時帰国のとき制服をタイに持ち帰って家族と記念撮影し、卒業後も一生、日本留学の記念に大切に制服を保存しておくのだそうです。法隆寺やアンコールワットにたとえたい気持ちが、なんとなくわかる気がします。

附高には寮もないしもちろん留学生会館なんかもありませんから、住んでいるところは民間の下宿です。食べ物は自炊しているらしいです。保護者は、タイの大使館の役人がなっています。

私の印象では、タイ国留学生は、大きく2つのパターンがあるみたいですね。ひとつは、日本に来ても志を失わないで、高校でも大学でも一生懸命真面目に勉強するタイプ。もちろん、こっちのほうが主流です。附高に生活面でルーズなところがあるからもっと先生は厳しく指導してほしいと内心不満を抱いている留学生も、このタイプの中にはいます。制服で飲み屋なんて、とんでもない。もっとも、たいていの留学生は卒業式のときまだ19歳ですから、336さんのいうようなことはありえません。もうひとつは、日本人以上に、日本のサブカルチャーに染まっちゃうタイプ。こちらは、茶髪にしたりとか、結構すごい子も。某国立大学に進学したあと、全くレジャーランドに浸っても勉強しないで運動部だけやって帰国した留学生の話も聞きました。タイ国民の血税を使って・・・・かなりさびしいですね。

大学院も入れて10年以上になる長い日本での留学生活を終えて、無事タイに帰国すると、高級官僚のポストがお待ちかねです。と言うより、民間会社に勤めると、当初の契約と違うと言うことで、奨学金を罰金つきで返さなくてはならないらしいです。

こんなところで、参考になったでしょうか?