ビックリマンサイトについて語ろう

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205名無しさん@お腹いっぱい。
>>199
怪傑!ふらわあず かなこ 2000/06/19 21:20 A型 岩手県 連載の続き ビックリマン(パラレル/笑)
5-1
「よお、ヤマト。久しぶりだな〜」
「え?あ、あれ?!ジャック?!」
探偵事務所の扉の前でアローを待っていたヤマトに、一人に青年が親しげに声をかけてきた。
「昨日こっちに越してきたんだ。よろしくな!」
「へえ、そうなんだ。・・・えと、何年ぶりだっけ?」
「んーと、そうだなあ。3、4年ぶりってところじゃないか?」
「今までどうしてたんだ?」
「ん、まあ、色々とな」
「ふーん」
「で、お前はそんな所で何してるんだ?」
「あ、何かアローが宝石買いに行くのに付き合ってくれって言われ・・・」
「お待たせ〜ですの〜!!」
その時勢いよく扉が開いて、アローが飛び出してきた。
「はらはらはら〜?どちら様ですの〜?」
「え?あ、おいらはジャックって言って、ヤマトの幼馴染なんだけど・・・」
「まあの!そうなんですの〜。初めまして、私ヤマトさんの秘書のアローですの〜」
「へえ、あいつも暫く見ないうちに可愛い彼女作ったもんだなあ」
「や〜のや〜の!ジャックさんったらあ!!そんなホントの事〜」
思いっきり照れてはしゃぐアロー。その後ろから微かな呻き声が・・・。
「あ・・・?きゃ〜の、ヤマトさん?!」
「も、もうだめえ〜」
アローが開けた扉に押し潰され、哀れ紙切れのようになったヤマトは力なくその場に崩れ落ちたのだった。
206名無しさん@お腹いっぱい。:2001/08/08(水) 23:10 ID:???
5-2
「うわー、すごく混んでない?」
お目当ての宝石店の前にやって来たヤマト達。そこは予想以上の戦場と化していた。
「ああ、今朝の朝刊に広告挟まってたな。新装開店の大バーゲンとか何とかって。ここの目玉は世にも珍しいペリドットの原石だってよ。何でも時価数億はくだらないらしい」
成行き上付いて来ることになってしまったジャックが言う。
「へえ、よく知ってるね」
「たまたまさ。おいらにゃ宝石の価値なんて分からねえし」
「だよねえ?綺麗なのは確かなんだけどさあ・・・」
ジャックの言葉に頷くヤマト。
「さあ!気合入れて行きますのよ!二人とも!!」
「え?僕らも入るの・・・?!」
「あったりまえですの!!さあ!!ゴーゴーですの〜!!」
有無を言わさずヤマトとジャックの腕をむんずと掴んでズルズルと引きずっていく。
店内はさらに熱気に満ちていた。
あちらこちらで熾烈な女の争いが繰り広げられている。そこに物怖じせずアローは飛び込んでいく。
「ヤマトさん達も掘り出し物見つけてくださいの〜!!」
もはやどこにいるかも分からないアローの声だけが耳に入ってきた。
「お客さん、大丈夫ですか?」
げんなりとしているヤマトたちに声をかけてきたのは店長のクリスタルだった。彼の後ろには同じくぐったりしているアリババの姿が・・・。
「あ、あれ?アリババ?」
「よお・・・。お前はアローにつきあわされてんのか?」
「うん。幼馴染のジャックも巻き込んじゃってね・・・」
「いや、おいらは別に・・・」
「大変だな。俺も上司に付き合わされてさ。さっきクリスタルさんに助けてもらったんだ」
「じょ・・・、上司?!あ、あの人が来てるの?」
「ああ、あそこにいるよ。秘書のヘラさんと一緒にね」
アリババの示した方を見ると確かにいた。
並居る女達を蹴散らしお目当ての宝石を次々とゲットしていく。
「いや、あの人売り物じゃないビックルビーのレプリカを本物だと思って売ってくれってすごい剣幕で言うんですよ」
クリスタルがそう言って苦笑いをする。アリババは申し訳なさそうにがっくりと項垂れた。
207名無しさん@お腹いっぱい。:2001/08/08(水) 23:12 ID:???
5-3
女達の乱闘はなおも続いていた。 げんなりとしてその騒ぎを見つめるヤマト達。そんな彼らをクリスタルは気遣ってくれるのだが、彼自身も客にもみくちゃにされ、かなり辛そうである。
「俺なんかさ、この後もう2、3件の店廻るの付き合わされるんだぜ・・・」
アリババが深くため息をついた。
「ボクもだよ〜。最初から疲れちゃったなあ・・・」
「女ってすげえよなあ・・・」
ヤマトとジャックも大きくため息をついて肩を落とす。
「あの!!ヤマトさん達!!」
そこへクリスタルが慌てて走りよってきた。
「どうしたんだ?」
ジャックが疲れた顔でたずねる。
「予告状です!この店にあるペリドットの原石を何物かが狙っているんです」
「ええ?!それは大変だあ!!」
ヤマトが慌ててあたりを見渡す。
「敵はもう潜んでいるかもしれない!手分けして探そう!!何としてもペリドットを守るんだ!!」
言うが早いか人ごみの中へ突っ込んでいくヤマト。
「あれえ〜〜〜?!」
案の定、宝石に群がる女達に押し流されて、ヤマトの姿は見えなくなってしまった。
「ヤマト・・・相変わらず進歩ねえなあ」
「いや、あんなのヤマトに取っちゃ序の口だよ」
ジャックの言葉にアリババは深くため息をついて答えた
208名無しさん@お腹いっぱい。:2001/08/08(水) 23:13 ID:???
5-4
「待て!!怪盗男ジャック!!」
クリスタルの声が店内に響き渡る。
アリババは慌てて彼のところへ向かおうとしたが、この状況でなおも宝石の奪い合いを繰り広げる女達に行く手を阻まれ、動けない。
「そのペリドット、渡すわけにはいかない!!」
「盗みは悪い事だと思うぜ。・・・でもな、おいら達にも譲れない事情があるんだ。あの方のためにもこれは頂いていくぜ」
「あの方・・・?」
「お前には関係のないことだけどな。・・・おいらはあの方の夢を叶えるために少しでも手伝いがしたいんだ」
「・・・・・・・・・」
「悪いな・・・」
ポツリと呟くように言うと、ひらりと人ごみをかわし去っていく怪盗。ちょうどアリババの目の前を通りかかった。
「よし!!逮捕す・・・・」
さっと手を伸ばしたアリババだったが、運悪く新たに入ってきた女達にもみくちゃにされ、気付いたときには、もうそこに怪盗の姿はなかった。
209名無しさん@お腹いっぱい。:2001/08/08(水) 23:14 ID:???
数時間後。
ホクホクの笑顔で店を出てきたアロー。
「はら〜?アリババさんも来てたんですの〜?」
「あ、ああ。まあね・・・」
無邪気に微笑むアローにアリババは力なく頷いた。
「おいおい、大丈夫か?」
ジャックがアリババに声をかける」
「・・・?あれ?お前もしかして・・・」
アリババはじっとジャックの顔を見る。それに気付いてジャックは慌ててそっぽを向いた。
「あ〜、そうだ。おいら、まだ引越しの片付け終わってねえや。先帰るな〜」
「まあの、そうですの〜。片付け頑張ってくださいの〜」
「ああ、じゃあな!アロー、アリババ!!」
そそくさと去っていくジャックを不信に思いつつ、追いかける力もアリババには残っていなかった。
「さーって、次は2丁目のデパートへレッツゴーですの〜!!」
一人張り切るアロー。
そして忘れられているヤマト。
謎が謎を呼ぶ連続宝石泥棒事件。
アリババはぐったりと頭を垂れ、独り言のように呟いた。
「胃が・・・痛い・・・」