リーダー、すーべー、だーりー、りだ、オサーン・・・いくつもの名を持つ男、
西原誠。
彼の顔は知っていた。朴訥そうな好青年。そんな印象だった。
真剣にベースを弾く表情に私は魅かれていった。
そしていつしか私は、「彼の声がきいてみたい」そんなことを思うように
なった。少女のように。
そして、その想いが叶う日がきた。
・・いやっいやぁぁぁ!こんなはずではかった。
彼の声はヘタレな私の想像をはるかにこえた、超低音バリトンボイスであった。
イメージとのあまりのギャップに、落雷をうけたかのような衝撃をうけた。
・・ある秋のことだった。
あれからどれくらいたったのだろう。
私はいつものようにベッドに入った。枕元にはMDプレーヤー。
いつの頃からか私は、彼の声をききながら眠るようになっていたのだった。
時がたち、魅了されたのだ。あんなに忌み嫌ったはずの、あの声に。彼の声に。
暗闇に横たわり、ヘッドホンを耳にあてる。PLAYボタンを押す・・・
「ばふばふばふ」・・・ああ、これなの、これなのよ。
彼の低音は私を優しく包み、そっと眠りへといざなうのだった。
その時だった。「ふははははは」
甘ったるい、かすれた、でかい笑い声に私は目をさましてしまう。
「ばふばふばふ」「ふはははは」「ばふばふ」・・くり返される2つの声。
眠りは妨げられ・・・そうして夜は更けていった。 おわり