サッカー小説〜^◇^〜狂気の144・5センチ

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406イギョラ!(5)
その時、エースはフリーだった。
ボールの出所を失い、チャンスをうかがうばかりの小柄なハーフバックが二人いるだけだ。
向かって左の16番が、右の8番に目をやる。
コリアのエースは、左に走った。

目でフェイントをかけた加護から辻へのパスは、アミゴへの足元に吸い寄せられた。
その目前に、広大なスペースが。
「あほうっ」
矢口が追う。止められないが、並走してコースを限定する。
肩で当たり、矢口を吹き飛ばそうとするアミゴ。
平気な顔で当たり返し、バランスを取る矢口。
眼の端に飛びこむ、味方の姿。
滑りながら、吉澤が雑念を振り払う。さっきのは事故だ。
退路を矢口がふさぐ。詰めだ。
長い足は、ボールの5センチ後ろに。届かなかった。浅かった。
それでも矢口が食らいつく。シュートにいくアミゴ。
回り込んだ後藤のスパイクをこすり、大きくコースの変わったボールが、大きくゴールラインのほうへ浮き上がる。
韓国の虎はあきらめない。なおも前へ。後藤に矢口、立ち上がった吉澤も追った。
コーナーキックを阻止するため、出ようか迷った市井が止まる。どう見ても間に合わない。
407イギョラ!(6):2001/08/11(土) 16:16 ID:LVuIIZic
俗に喧嘩に使う頭突きをチョーパンという。
これはもちろん「朝鮮パンチ」の略で、朝鮮人が喧嘩の際、接近戦で拳をつかえない時に相手の胸倉をつかまえ、引き寄せながら自分の額を相手の鼻に打ちつける手をよく使うことからついた。
実際読みようのないこの奇襲は役に立つ。
反面、最初からチョーパンを使って喧嘩するやつもまずいない。眉間に人中に延髄、チョーパンは急所の塊である頭部を相手にさらけ出す捨て身の技でもあるからだ。
日本人は、いいことわざを作った。能ある鷹は爪を隠す。

誰もがラインを割ると思っていたボールに、ソニンだけが反応した。
浮き球にまっすぐ走らず、外から回り込むようにして、追いつく。
キーパーが二アポストで身構える。センタリングならなんとかなるが、直接狙われたらキーパーの責任だ。それも「キーパーの目」を持ったソニンの読み通り。
左のこめかみで、押し出すように。ソニンの代表ファーストタッチ。
着地はゴールラインの上だった。

大きな虹を描き、センタリングがファーポストへ。
アミゴが後藤が吉澤が矢口が詰め寄る。
市井が後ずさりながら手を伸ばした。背面飛び。反らせた指先をすり抜け、ゴールの中に落ちた。
日本2−1コリア。トータルスコア2−4。