>>218 >202 翻訳者によって、かなり訳が違うのでしょうかね?
んーと、岩波文庫・ちくまなら竹内好訳。角川文庫なら増田渉訳です。
筆者と閏土が二十年ぶりに再会するシーン。(以下は、岩波版から)
私は感激で胸がいっぱいになり、しかしどう口をきいたものやら思案がつかぬまま
に、ひとこと、
≪ああ閏(ルン)ちゃん−−よく来たね……≫
つづいて言いたいことが、あとからあとから数珠つなぎになって出かかった。
角鶏、跳ね魚、貝がら、チャー、だがそれらは、何かでせき止められたように、
頭のなかをかけめぐるだけで、口からは出なかった。
かれはつっ立ったままだった。喜びと寂しさの色が顔にあらわれた。唇が動いたが、
声にはならなかった。最後にうやうやしい態度に変って、はっきりとこう言った。
≪旦那さま!……≫
私は見ぶるいしたらしかった。悲しむべき厚い壁が、ふたりの間を隔ててしまった
のを感じた。私は口がきけなかった。
……心のすれ違いを悟る、悲しいシーン。
齢を重ねた今読むと、こういう悲しみに、また別の実感が加わりますね。