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185名無しゲノムのクローンさん
「アルツハイマー近く克服」



 ◇ワクチン療法に期待

 ぼけずに元気な老後を過ごしたい。誰もがそ
う思う。脳科学は、この願いにどこまで応える
ことができるのだろうか。

 痴呆を招く病気としてよく知られているのは
アルツハイマー病である。世界に約1500万
人、日本には約150万人の患者がいる。この
病気による「ぼけ」の克服は、そう遠くないか
もしれない。

 「5年から10年で治療法が確立されるはず
です」と米カリフォルニア州のベンチャー企業
「エラン・ファーマシューティカルズ」の副社
長、デール・シェンク博士(薬理学)は語る。


 アルツハイマー病を引き起こすと考えられて
いるのはベータアミロイドというたんぱく質である。誰の脳にもあり、年齢とともに増加す
る。ベータアミロイドが付着した神経細胞は徐々に死滅し、死滅する細胞が多くなると痴呆の
症状が表れる。シェンク博士らは、ベータアミロイドの溶液を患者に注射して免疫反応を起こ
し、脳内のベータアミロイドを撃退するワクチン療法を開発した。

 脳内では異物があっても抗体ができない。このため、新たにできたベータアミロイドが次々
に蓄積してしまう。だが、脳以外の場所にベータアミロイドを注射すれば、抗体ができる。抗
体がべータアミロイドに取り付くと、免疫細胞はこれを異物と認識して食べる。抗体は脳内に
も入り込むから、それまで異物と認識できなかった脳内のベータアミロイドを免疫細胞が攻撃
できるようになる。

 米・南フロリダ大のグループは、遺伝子操作でつくったアルツハイマー病のマウスにベータ
アミロイドを注射して1カ月後の記憶力を調べた。プールの浅い場所を覚えさせる「水迷路」
の実験である。まったく浅瀬の場所を覚えられなかったマウスの記憶力が、普通のマウス並み
に回復していた。

 米英両国では1999年末から、この治療法の安全性を確認する臨床試験が約100人の患
者を対象に始まった。「副作用はまったく出ていない。具体的な効果を確認する2次試験を間
もなく始める」とシェンク博士は胸を張った。

 体の脳以外の部分の血圧を調節するたんぱく質が、ベータアミロイドを分解することも分か
った。理化学研究所の西道隆臣チームリーダー(神経生化学)らの成果である。アルツハイマ
ー病患者の脳にこのたんぱく質の遺伝子を注入する遺伝子治療も検討されている。

 しかし、症状が進んでからベータアミロイドを除去しても、失われた神経細胞を回復するの
は容易でない。早期発見が重要だ。
186名無しゲノムのクローンさん:2001/06/24(日) 19:27
人の脳やせき髄は、外部からの衝撃を和らげるために脳せき髄液という緩衝液で満たされて
いる。東北大医学部の荒井啓行助教授(老年医学)は、アルツハイマー病で死滅した神経細胞
が出す「タウ」というたんぱく質が、この液の中に大量に漏れ出すことを発見した。初期のア
ルツハイマー病患者でも、健康人の数倍の濃度になる。「タウなら初期の患者でも客観的数値
に基づいて診断できる」と荒井助教授は話す。

 では、脳の老化についてはどうか。脳では毎日数万個の細胞が死に、年齢とともに脳は小さ
くなる――そういう「知識」を持っている人が多いのではないか。だが、そんなことはないら
しい。

 米ハーバード大医学部のブラッドリー・ハイマン教授は、20〜90歳代の17人の脳を死
後解剖して大脳表面の神経細胞の数をカウントした。脳に病気がない高齢者の神経細胞の数
は、若い人と変わらなかった。

 脳細胞が増殖することも分かった。米ソーク研究所のフレッド・ゲイジ教授は、細胞が増殖
する際に細胞内に取り込む物質を投与された57〜72歳の5人のがん患者の脳を死後解剖し
た。物質の投与は本来、がん細胞の増殖を調べるためだったが、全員の脳の、がんと関係のな
い海馬という部分からこの物質が発見された。海馬では新しい細胞ができていたのである。

 アルツハイマー病以外に脳こうそくや脳出血などで起こる痴呆もある。これら脳血管の病気
は、塩分やアルコールのとり過ぎなど、生活習慣の影響が大きい。アルツハイマー病が克服さ
れ、脳の神経細胞が増殖したとしても、ぼけない保証はない。

 この点で次の実験結果は興味深い。マウスが中に入って遊ぶ「回し車」という道具がある。
ゲイジ教授らの実験では、これでよく運動したマウスは海馬の細胞が活発に新生し、迷路など
の学習能力が高まったという。

 「適度の運動をして、健康的な生活をする。脳の健康にも、首から下の健康が大切というこ
とです」

 東京都立神経病院検査科の水谷俊雄部長(神経病理学)の結論である。