わたしをえらばないところしちゃうよ 名雪スレ#7.5

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152無題 ◆hT76nerU
 夏休みも終わりに差し掛かったある日の午後。
「名雪ー、いるか?」
 なゆきのへやとプレートの下がった部屋のドアをノックしながら、俺は名雪に呼びかけ
る。
「ん? 祐一? 入っていいよー」
 ドア越しに響く声。ドアを開くと、目に飛び込んできたのは薄手の白いワンピース一枚
の名雪の姿。
「どしたの? 祐一?」
 にこにこしながら名雪が問い掛ける。
「夏休みの宿題を写しにきた」
「わ、ずるいよ」
「というのは冗談で、夏休みの宿題ノートを交換しにきた」
「それ、もっとダメだよ…。宿題は、ちゃんと自分でやらないと、ダメだよ?」
「わかった。でも一人じゃわかんない所があるんだ。一緒にやらないか?」
「…そういうことなら、大賛成だよ」
153無題その2:2001/08/24(金) 18:57
 丸テーブルに教科書とノートを並べる。名雪はむにゅむにゅと出所不明な擬音を発しな
がら、黙々と宿題をやっている。
 一方の俺は。ダメダメだった。
「くそー、何でこんなに難しいんだ?」
「祐一の学校のは、そんなに難しいの?」
 ん? 名雪と俺の学校は同じになったんじゃなかったか?
「名雪、ちょっとやってみろよ」
 そういって、俺は算数のノートを渡す。
「うん…」
 すらすらと、名雪は三問解いた。
「私の学校と、あんまり変わらないけど?」
 それを見た俺が嬉しそうに叫んだ。
「やった! 得したぞ」
「あ、ずるいよ…消しちゃう」
 名雪は俺の手の横から消しゴムを伸ばした。
「ダメだ!」
 名雪の手を遮る俺。
「祐一がずるいからだよ」
 やがて、二人の動きが激しくなり、もみ合いになって……
「邪魔するなっ!」
 ――バシッ!
 凍りついたような一瞬の静寂の後。名雪が声を上げて泣き出した。
 …俺は手をあげていた。名雪に。
 その泣き声が、耳について離れなかった……。
154無題その3:2001/08/24(金) 18:57
「……いち」
「……ゆういち」
 はっと目が覚めた。ここは…
「祐一、寝ちゃダメだよ…」
 名雪の部屋だった。そうだ、俺と名雪は宿題の途中で…
「うわ、名雪が大きくなってる!」
「…祐一、寝ぼけてるの?」
 と、言われて気がついた。あれは昔の夢だったことに。
「ゆ、夢か…」
「祐一、大丈夫?」
 やっと、自分を取り戻す。現実感が沸くと、同時に名雪に馬鹿にされてるような気が
した。
「いつも寝ぼけてる名雪に言われたくないぞ」
「わ、ひどいよ〜」
 でもまぁ。
「…名雪、ごめんな」
「祐一?」
「俺、素直じゃないから、謝れないんだよ。それでいつも後悔する」
「何の話かな?」
「…覚えてないならそれでいいんだ」
 傷つけてなかったと言えば嘘になる。でも、忘れてくれたなら…俺は幸せだ。
 そう思うと愛しさが込み上げて、頭に疑問符が浮かんだままの名雪を無理やり引き
寄せた。
155無題その4:2001/08/24(金) 19:00
「ゆ、祐一…?」
 一度は抗う素振りをみせた名雪も、俺の目が真剣なのを見て、大人しくなった。
 そうなれば、もう言葉はいらなかった。
 その愛しい唇に、自分のそれで触れるだけ。柔らかく震える唇は少しずつ開き、
その先を求める。交じり合う液体はまるで魅薬。舌は複雑に絡み、時に囀るように
つつき合う。
 やがて、あらかじめの取り決めのように唇は離れる。唇の間に一瞬、透明な橋が
かかるが、それを俺は指で切った。そのまま、唇の下に垂れたそれを拭う。気恥ず
かしそうに、名雪もそれに倣う。親指が俺と名雪の唾液を拭った。そして、無意識
だろうが…ぺろっと、指を舐め上げた。その仕草が艶かし過ぎた。
「ゆ、祐一? 何か変だよ〜」
 見とれていた。
「…は、恥ずかしいから、あ、あんまり見ないで」
 俺の納まりかけた興奮にまた火がつく。
「な、名雪…」
 ワンピースの裾に手をかける。
「わ、祐一…ダメだったら」
 俺の手を名雪の手が押さえる。その手に力が篭っていて。
 はっと気がつく。
 俺は何度同じ過ちを犯せば気が済むんだ?
「どうしてもダメか?」
 優しく聞いてみる。
「う、うん。晩まで、お預け…」
 その返事を聞いた俺は、ゆっくりと名雪の前髪を掻きあげた。
 そして、おでこに軽くキス。
「じゃあ、晩はたっぷり可愛がってやる」
「祐一、おやじ臭いよ〜」
 その笑顔はあの頃とちっとも変わってなかった。