栞の幸せこそ我が幸せ@栞スレpart3

このエントリーをはてなブックマークに追加
337名無しさんだよもん
 二月一日。栞の十七回目の誕生日。
 その日、祐一と栞は、二人きりでささやかな誕生パーティーを催していた。
「誕生日おめでとう」
「ありがとうございます。これでまた祐一さんの一つ下です」
 そっとグラスを重ねる二人。深紅の液体をゆっくり飲み干し、フゥ、と吐息を漏らす栞の頬がほんのり赤く染まっている。誕生日という言葉のせいか、その姿になんだか大人の女性を感じてしまった祐一は変にドギマギしてしまう。
「どうかしたんですか」
「あ、いや、何でもない。それより栞、誕生日プレゼントだ」
 ごまかすように紙袋を手渡す祐一に、一瞬きょとんとした表情を向けながらも、笑顔で受け取る栞。
「ありがとうござます。開けて見てもいいですか」
「ああ。でも、一つだけ約束してくれ。絶対に笑うな」
「はあ」
 祐一の言葉に戸惑いながらも、大事そうに中身を取り出した。
「わっ」
 一枚のストールだった。一目で手編みだと判る。編み目は不揃いだし、所々抜けている。形も整っていない。
「これ、祐一さんが編んだんですか」
「ああ、正真正銘俺が編んだ」
 照れくさいのか、そっぽを向いて答える祐一。
 栞はそっとストールを自分肩にかけた。
「どうです、似合ってますか」
「もちろん……と言いたいが、その出来ではな。ごめんな、俺にはそれで精一杯だ」
「そんなことありません」
338名無しさんだよもん:2001/08/23(木) 12:16
 急に声を荒げる栞。目にはうっすら涙が浮かんでいた。
「そんなことは……。だって、これは祐一さんが私のために編んでくれた物だから」
 喜んでもらえたのは嬉しいが、泣かれるのは困る。どうしたものかと思案している祐一にクスクスと栞の声が届いた。瞳はまだ濡れていたが、もう笑っている。
「何がおかしいんだ」
「ごめんなさい。これを編んでいる祐一さんの姿を思い浮かべたら、つい」
「くっ、笑うなと言っただろう」
 声を殺して笑う栞の姿を見て、憮然とする祐一。確かに編み物をする自分の姿は滑稽かも知れないが。
「俺の社会的地位を守るためにも、この事は二人だけの秘密だ。もし誰かに話したら、キムチラーメンの刑だ」
「う、それは嫌です。分りました。祐一さんと私の秘密です」
 よほどキムチが嫌なのか、神妙な顔で約束する栞。
「よし、パーティーを楽しもうぜ」
「はい」
 二人の夜はゆっくりと更けていった。

 翌日、祐一は『編み物男』という素敵な二つ名を与えられることとなる。

「どうしても食べないといけないんですか」
「もちろんだ。約束を破る悪い子にはおしおきだ」
「だって、お姉ちゃんに隠し事なんてできませんよ」
「約束は約束だ。さあ、食べろ」
「えぅ〜、許してください〜」

時期外れなネタですまん。