Leaf&Key仮想戦記〜永遠の遁走曲篇〜

このエントリーをはてなブックマークに追加
465sidestory或る静かな夜前編1
その日緑と白のチェックのトレーナーを着た男は日本橋を歩いていた。
「今日の巡回もあと2件か」
男はそうひとりごちた。
年は20代中頃、やや軽そうな顔が特徴的だった。
朝の9時から行き着きの店を回り始めもう6時間が経とうとしている。
慣れているとはいえ足はもうくたくただ。
しかしその瞳には疲労に反して揺ぎ無い炎が宿っていた。
「さて、次回作はどういう構成でいくかな。どの道テーマは決まっているのだし早くプロットを練らねば…」
男は頭の中でそんな事を思いながら、ふと立ち止まった。
視界の端には立て看板が建っていた。
PCゲーム中古専門店。
「こんなところに新しい店か。客も少ないだろうに」
その店を見てみたが、いかにも客の入りが悪そうで店内も薄暗い。
店員もやる気が無さそうだ。
「でも以外にこういうところが穴場だったりするんだよなぁ」
男は新しい店を発見したせいかやや嬉しそうに声をあげた。
店の前にあるちょっとした段差を乗り越え足を踏み入れた。
まず右手からチェックを入れていく。
「ふんふん、品揃えは悪くないな。おっ、KANONの初回じゃん……一万四千か、高ェ」
旧作コーナーから新作コーナーへと移動していく。
ここ等辺はまだ高いゲームが続く。
ざらっと見回していくうちに一つのゲームの前で足が止まった。
男はそのゲームを手に取った。
心なしか寂しそうに見える。
「お前、もうご主人様に売られちゃったのか…」
意気消沈してそのゲームのパッケージを見つめた。
innocent Eye’s―――その男が先日出した新作ゲームにして一番の自信作だった。
「ごめんな。俺がもう少しシナリオが上手かったらこんなに早く売られやしないだろうに。今度は親切なご主人様に拾ってもらうんだぞ」
そう言ってそっとパッケージを棚に戻した。
暫く名残惜しそうにした後、また品揃えのチェックを再開していく。
466sidestory或る静かな夜前編2:2001/08/14(火) 06:36
そのうちにPC98―――往年の名作のコーナーに来た。
懐かしさが手伝ってか一つ一つ手にとっては眺めていく。
同級生2・あゆみちゃん物語・下級生…かつて高橋をこの業界へ走らせたゲーム達である。
しかしその中でも特に思い入れの強いゲームがある。
男はその内の一本を手にとった。
「お前達は羨ましいなぁ、いい父さんを持って。俺の子供なんかすぐに売られちゃうんだぞ。なんで同じ苗字なのにこうも違うのかねぇ」
感慨深そうな表情を作り彼はそのパッケージをピンッとはねた。

痕。
今となってはその名を知らぬものはいまい。
まさしく歴史を変えた伝説のゲームである。
発売後5年以上たった今でも最高のゲームとする人も多く、また、彼にとっても思い出のゲームの筆頭であった。
そしてそのゲームを創った人こそ高橋龍也―――To Heart発売以後沈黙を続けるゲーム業界の巨人である。
467sidestory或る静かな夜前編3:2001/08/14(火) 06:36
「ただいまっ…って誰もいないんだけどな」
その同姓の男―――高橋は戦利品の入ったビニール袋を玄関に上げるとそのままパソコンを起動した。
その間に旧型のPC98を引っ張り出す。
狭い部屋で収納にも一苦労だが彼の安月給ではアパートで精一杯だ。
おまけに今日の様な手痛い出費が重なると食費もままならなくなる事も多い。
ビニール袋からつい買ってしまったPC98版の雫と痕を取り出した。
もちろん高橋はこの2本を持っている。
だが、やり込み過ぎてディスクを壊してしまったのだ。
「ふふっ、あの頃は若かったなぁ」
高橋は手馴れた手つきでケーブルを接続していった。
パソコンが組み上がっていくごとにかつての興奮が蘇ってくるようだ。
その時不意にパソコンが鳴った。
振り返ってモニターを見てみると偽春奈がメールの着信を告げているようだ。
「んっ?なんだぁ?」
高橋は気勢を削がれつつもメールのチェックを開始する。
仕事に関する事だった場合早いにこしたことはない。
こういったマメさが会社に信頼される秘訣だと彼は信じていた。
「おっ、猫猫からか。ふんふん…次回作を製作中なのか」
概略をするとこうだ。
次作にも高橋が作ったNScripterというノベルゲーム作成ツールを使いたいという事らしい。ちなみにこの依頼をした猫猫―――ねこねこソフトは前作・前々作と同ツールを使用している。
「最近収入低いんで助かったよ。『もちろんOK』っと。それにしてもお前―――NScripter―――はずいぶんと優秀だなぁ。俺本当はシナリオライター希望なんだけどな」
ちなみにこのツール、企業が使うと一律40万円であるが商業ベース以外ならただである。
同人で言えば月姫を作成したTYPEMOONが使用したことで有名であろう。
「おっと、こうしちゃいられない。せっかく高い金出して買ったんだ、たっぷり可愛がってやらないとな」
古い方のパソコンにフロッピーディスクが入り、カタカタと駆動音をたてる。
そして例の音楽を奏で、モニターにはこう表示された。

――――――LEAF――――――

高橋直樹…。
彼もまたLEAF黄金時代が産み落とした卵の一つである。
468名無しさんだよもん:2001/08/14(火) 06:41
むちゃくちゃきっつい批評キボンぬ
具体的であればなお嬉しい
感想もどうぞ
つーかお願いしますぅ
最初2.5次元で出そうかと思ったんですけどね