捏造SSその5(その2のザッピングシナリオ)
初音ちゃんに食べられよう
夏休みに入ったばかりのある日。
俺は柏木家に居候を決め込んでいた。
大学の夏休みというものはとてつもなく長い。
休みが長いのはいいもんだと思っている人もいるようだが、自炊がめんどくさく感じられる俺には
食生活という難題が立ち塞がるのだ。
去年までは。
今年の俺は、去年の俺とは違う。
去年までは正直柏木家を避けていたし、滞在していた時も魚の骨が喉にあるような感覚だったが、
親父の影から独り立ちし、鬼の力をも克服した俺にとって、柏木家はすこぶる居心地のいい場所なのだ。
おまけに、美人のお姉さま、腕の立つ料理人、そして二人の可愛い妹が俺をもてなしてくれている。
まさに天国である。
その天国気分を満喫していたある朝のことだった。
ずかずかという足音が廊下からする。
この乱暴・・・じゃなかった、ハッキリした足音は梓のものか・・・。
俺は障子に目を向けた。
障子に映ったのは、ショートカットの女の子・・・じゃない。
ピョコンと立った髪の毛の影絵が見える。
まさか・・・
障子がバンと乱暴に開け放たれ、足音の主が俺の部屋にズカズカと入ってきた。
俺の眠気はいっぺんに吹き飛んだ。
「お〜い、こういちぃ。腹減った。メシ作ってくれ・・・」
ノックもせずに俺の部屋に入って来た『初音ちゃん』が言う。
俺は自分の眼と耳を疑った。
白と青のストライプの薄いブラウスに赤のミニスカートといういつも通りの服装。
ウェーブのかかった栗色の髪の毛とアンテナ。
いつも通りだ・・・が、初音ちゃんの顔つきはいつもと違う。
なんというか・・・目つきが鋭い・・・というか悪い。
態度もいつもの初音ちゃんと全然違う。初音ちゃんはいつも、
『お兄ちゃん。食事の用意が出来たよ』
と、満面の笑顔で呼びかけてくるはずだ。
いや、それ以前に
『お兄ちゃん。おきてるぅ?』
と、こちらの様子を窺ってくるはずだ。
初音ちゃんじゃない『初音ちゃん』を目の当たりにした俺の表情はどんなものだったのだろうか。
『これって・・・本当に初音ちゃん?』
そんな疑問が脳裏をよぎる。
『初音ちゃん』は俺が動揺しているのに構わず、
「あん? こういちぃ。あたいの顔に何か付いてるかぁ?」
そう問い掛けてきた。
「いっ、いえっ。別に」
いつもと全く違う『初音ちゃん』の迫力に押された格好で、俺は思わず他人行儀な
言葉遣いをしてしまう。
「おらぁ。さっさと起きろ。居間ァ行くぞ。居間ァ」
『初音ちゃん』は俺の掛け布団をガバッと引っぺがした。
「男がたらたらすんなうらぁ」
俺は着替えをすることすら許されず、『初音ちゃん』に襟首を掴まれ、
ズルズルと引きずられるような格好で居間に連行された。
・・・傍目から見ると相当情けない光景だろうな・・・。
俺は自分のTシャツとトランクス姿を見て、そう思った。
「さてと・・・」
居間に着いてから、『初音ちゃん』は漸く俺を解放してくれた。
初音ちゃんは『どっか』と座布団にあぐらをかいて座り込み、ぐで〜とちゃぶ台に顎を乗せる。
『この態度・・・ヤンキーと大差ないぞ・・・』
そこでピンと来た。
『ひょっとしたら・・・初音ちゃん、反転してるのか?』
だとすると、今までの『初音ちゃん』の態度のおかしさも納得できる。
同時に、
『ヘタしたら・・・殺される』
冷や汗が、俺の背中を流れた。
「お〜う、耕一ぃ」
「は、はひ」
いつもの初音ちゃんとは違うハスっぽい喋り方に動揺している俺は、つい裏返った声で返事をしてしまった。
初音ちゃんの声のトーンもいつもより心もち低い。
あの可愛いしゃべり方と声はどこへ行っちまったんだよ・・・。
「はやくアサメシ作れ〜」
そんな俺の苦悩をよそに、初音ちゃんがかったるそうに言う。
「はひっ!」
そこで俺は、慣れない手つきで朝食の準備を始めた。
「お〜う、てめぇにしてはなかなかの出来じゃねェか」
『初音ちゃん』がちゃぶ台の上に並べられた俺の朝食を見てこう言った。
尤も、俺が初音ちゃんや梓のように手の込んだ朝食を用意できるわけじゃない。
食パンをトーストにし、冷蔵庫にあったレタスやトマト、貝割れ大根を皿に適当に盛り付けたサラダ、卵焼きや目玉焼きの代わりにゆでタマゴ、フライパンで焼いたベーコンという程度のものだ。
まあ、いつもの和食とは違う分だけ、初音ちゃんの目先を逸らすのに成功したとも言えるだろうが。
俺が料理をしている最中に『はやくしねェとてめぇの命はねぇぞ』という暖かい声援もあったし・・・。
「う〜、喰った喰った〜」
大きく脚を開き、右手でお腹を抱え、左手を畳の上に置いて体を支えるという、
いつもの初音ちゃんからは想像もつかないだらしない座り方だ。
これで楊枝を口に含んでいたなら『オッサン』そのものだろう。
針のムシロに座らされているような朝食タイムは何とか無事に終了した。
食器を洗い終えた俺は、コーヒーメーカーで作ったコーヒーをちゃぶ台の上に置いた。
食器洗いをしていた最中も、台所でずっと『初音ちゃんが自分の部屋に戻ってくれれば』と
思っていたのだが、どうやらその望みは完全に絶たれてしまったようだ。
かといって俺が自分の部屋に戻れば何といわれるか判らないし、ヘタしたら絡まれる可能性もある。
外出なんぞ、何をかいわんや、である。
「おう、耕一ぃ」
「はひっ!」
初音ちゃんがいきなり話し掛けてきた。
ヘビに睨まれたカエルとは今の俺のことを言うのだろう。
「てめぇ、いい婿になれっぜ」
「はひっ!」
初音ちゃんに話し掛けられても『はひっ!』という間の抜けた返事しか返せない。
というか、あんな鋭く、据わった目つきで睨まれたなら俺でなくともこうなるに違いない。
まるで拷問だ。
日曜だというのに、千鶴さんは鶴来屋に休日出勤、梓は高校の友達に会いに行き
(梓は俺と同じ大学に進学した)、楓ちゃんは予備校の模試。
昨日は『初音ちゃんと二人きりになれる』と密かに喜んでいたのだが、この有様。
天国から地獄へ急転直下した感じだ。
「あたいが耕一をもらってやろうかぁ? 婿に。あぁん?」
「は、はひっ・・・って、えっ?」
「耕一、いいからこっち来い」
「はひ」
初音ちゃんに促されるまま、俺は席を立ち、初音ちゃんの側に廻った。
「男がそんな間の抜けた返事すんな。はいと言え、はいと」
「は、はい」
初音ちゃんは、左足を開いて目一杯伸ばし、立てた右膝に両手を乗せ、その上に自分の顎を乗せている。
いつもの初音ちゃんには絶対似つかわしくない姿勢なのだが、今は妙にはまっている。
「耕一ぃ。あたいの婿になってくんねェか?」
言葉遣いこそ乱暴だが、初音ちゃんは心なしか顔を赤らめて俺に言い寄ってくる。
しかし、俺は別のものに目を奪われていた。
『初音ちゃん・・・見えてるぞ・・・』
初音ちゃんが右膝を立てている分、赤いミニスカートが捲れて右太股の奥があらわになり、
左足を開いている分、初音ちゃんの股間を包む白いぱんつが見えるのである。
両膝を立てていないので、丸見えというわけではない。
だがその、微妙に見えるというのがなんとも
「うらぁ!!」
突如、初音ちゃんが大声を出す。
俺の思考は中断を余儀なくされた。
いきなりの大声に、俺のアドレナリン分泌が促される。
「耕一ぃ・・・てめぇど〜こ見てやがったんだぁ? あぁん?」
ば、ばれてる。
俺はこのとき、心底自分のスケベ根性を呪った。
初音ちゃんがゆらりと立ち上がり、俺に近づいてくる。
俺は恐怖を感じていたが、同時に
「もうちょっと初音ちゃんのぱんつを見たかった」
と呑気に思っていた。
「ご・・・ごめん! でも丸見えってわけじゃなかったよ!」
「謝るくらい、見てはいけないトコを見てたってわけかぁ? あぁん?」
げ! 語るに落ちるって奴だ!
「耕一ぃ・・・てめぇのスケベ根性を叩き直してやるぜぇ」
俺は身を守ろうとアルマジロの如く背中を丸めた。
初音ちゃんがげしげしと俺の背中を踏んづけてくる。
踏んづけてくる・・・とはいっても、いかんせん初音ちゃんは梓ほど怪力を誇るわけでもなく
体重もあるわけではない。
むしろ心地よい。
なんというか、非力な幼稚園児が無邪気に大の大人に突っかかってくるような感じなのだ。
『反転していても初音ちゃんはやっぱり可愛らしいなぁ・・・』
そう思い、俺は頭を上げた・・・瞬間。
またも初音ちゃんの股間を優しく包んでいるぱんつが俺の目に飛び込んできた。
今度は余す事無く、下からさっきと違ったアングルでじっくりと観察できる。
初音ちゃんが俺を踏んづける度に、細く白い裏モモがあらわになり、お尻を包む部分までがちらちら見える。
ふっくらと膨らんだ恥丘の部分も・・・。
う〜む、素晴らしい眺めだ。
などと思っていると、初音ちゃんの踏んづけがぴたりと止んだ。
「耕一ぃ・・・」
初音ちゃんはニヤニヤしながら話し掛けてくる。
「てめぇは本当にスケベだなぁ・・・」
初音ちゃんが踏んづけを再開した。
さっきとは違い、俺には初音ちゃんの踏んづけを堪能する余裕もある。
靴下越しに初音ちゃんのぷにぷにした足の裏の感触が伝わってくる。
気持ちいい。
初音ちゃんには踏んづけられても気持ちいい・・・って俺は変態か!?
初音ちゃんの踏んづけが止んだ。
もう終わり? と俺が思った瞬間。
がばっ!
俺の視界は白いものに包まれた。
俺の鼻先に柔らかい感触が感じられる。
ほのかな石鹸の匂いが俺の鼻腔をくすぐる。
俺の頭を柔らかい布が包んでいる。
目を左右にやると、少なくともそれは赤い布である事がわかる。
まさか・・・このシチュエーションは、とんでもなくアブナイのでは・・・。
俺がそう思った瞬間、
「いいんだぜぇ・・・こういちぃ・・・見たけりゃ」
初音ちゃんの声が俺の耳を打つ。
俺の全身の血管がどくりと脈打った。
「ほら・・・今、家には誰もいねぇぜぇ・・・」
初音ちゃんは自分のスカートの中に俺の頭を包み込んだまま言う。
俺の心臓の鼓動が早まる。
「初音ちゃん・・・本当に・・・」
いいの? と俺が言葉をつなげようとした瞬間。
初音ちゃんは両膝を折り、俺の頭を抱きかかえる格好で畳に座った。
そして、
「こういちなら・・・いいぜ・・・」
さっきとは違い、少し照れの入り混じった、恥ずかしげな口調で初音ちゃんは言った。
俺は初音ちゃんのミニスカートに自分の顔を埋め込んだまま、初音ちゃんの背中に手を回した。