駅前を歩いていると、どこからか子供の泣き声がする……
「ぅえぇ〜ん!! 痛いよぉ〜!!」
「よしよし。大丈夫、だいじょうぶだからねー。痛くない痛くない」
誰かがその子を慰めてあげているようだ。
俺はふとそっちに目線をやる。
「男の子でしょっ。ほぉ〜ら、泣かないの。よしよし」
「うぇっ、ぐすっ……」
俺は一瞬目を疑った。子供をあやして慰めているその女の子は
どう見ても、マナちゃんだったからだ。
「よーしよし、ほらっ我慢我慢。いつまでも泣いてると
笑われちゃうぞ?」
「ひっく……」
マナちゃんは優しく語りかけながら、その子の頭を撫でて
あげている。
「ほらっ、お姉ちゃんがおまじないしてあげるから」
「いたいのいたいのとんでいけ〜」
飛んで行った先で、俺とマナちゃんの目線が交差する。
「あ……」
固まるマナちゃん。
手を軽くあげて返事を返す俺。
マナちゃんは一瞬、マズイところを見られたという表情を
したが、すぐにさっきまでの優しい笑顔に戻って、男の子
に話し掛けた。
「どう? 痛くなくなったでしょ?」
「ひっく……(こくっ)」
「よーし、良く我慢したね。えらいえらい」
おまじないが効いたのか、男の子は泣き止んだようだ。
「大丈夫? おうちに一人で帰れる?
お姉ちゃんがついて行ってあげようか?」
「うぅん…………だいじょうぶ」
「そっか、大丈夫か。今度から気をつけなきゃダメだよ?」
「うん……」
「じゃあ、お姉ちゃんは行くからね」
「うん……お姉ちゃん、ありがとう」
マナちゃんは最後にその子の頭にポンと手を置いて、
そして立ち上がった。
帰っていく男の子を見送ったあとで、マナちゃんは
ようやくこっちを振り向いた。
「あ、あははっ……」
顔いっぱいに、照れくさそうな表情を浮かべている。
「マナちゃん、優しいんだな」
「なっ、なによぉ。どうせ意外だとか思ったんでしょっ!」
「そんなことないって。感心したよ。俺は子供の扱い方って
苦手だから尊敬しちゃうな」
「え……あ、ありがと……」
俺にからかわれると思っていたのだろうか。
マナちゃんは拍子抜けしたような表情を浮かべた。
でもすぐにいつもの笑顔に戻って、
「ふふっ、冬弥さんもこのくらい出来なきゃダメだよ?」
誉められたので、マナちゃんもご満悦のようだ。
「そうだ、これからお買い物行くんだけど……
冬弥さん、もちろん付き合ってくれるよねっ?」
こんな日は、マナちゃんのワガママに一日付き合って
あげるのもいいかもしれない。
普段は子供っぽいけど、たまにはお姉さんっぽいところを
見せるマナたん萌え〜。と思って書いてみました。