新観月マナスレ

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21名無しさんだよもん
私服に着替えると、カウンターの中にいるバイト仲間に声をかける。
「お先に上がります」
「あ、藤井くん。お疲れさまでした!」
 バイト先のコンビニの自動ドアの向こうは、もう夜の闇が包んでいた。
 暖房が程良く効いた店内から、一歩外に出ると、そこは静かで寒かった。
 ほうっと手に息を吹きかける。白い息が、暗い闇に消えていく。
 なんとなく、夜空を見上げる。いくつもの星が、雲の切れ間からきらめいていた。
「……あれから、4年か」
 何となく呟いて、俺はポケットに手を突っ込んで歩き出した。
マナちゃんが、俺の元を去っていってから、あっという間に、4年がたっていた。
 由綺と俺との関係も、あれから変わっていない。というよりも、あの時から、俺達の関係は止まっている。
 それは、俺と由綺との無言の約束になっていた。マナちゃんが戻ってくるまで、このままでいようという約束。
 由綺がアイドルとして有名になって、ますます逢う機会が遠のいたせい
で、皮肉にもその関係は保たれている。実際に逢うのが月に一度か二度、
それもほんの数時間だけという状態だからこそ、俺と由綺は前のままの
状態で4年の間いられたんだろう。
22名無しさんだよもん:2001/02/25(日) 01:21
……。
 俺は、ふと顔を上げた。目の前には、一件の屋敷がある。
 表札には、……“観月”。
 また、来ちまったな。
 苦笑いすると、俺はフェンスに手をかけた。
 そして、呟く。
「……いつまで、待てばいい?」
 誰も、返事を返してはくれない。くれるはずがない。