リーフは盗作していた!! ファイナルバトル

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244できすぎ 1
『できすぎ』  吉沢景介
講談社文庫
発行年月日:1985年7月15日
サイズ:148×105mm :324ページ
ISBN4-06-183555-6

 アッシュ博士が新薬を発明した。その薬を飲むと、
どんな物質の中も自由に通りぬけることができるというのである。
 博士は自信満々で、新薬の効果を「抜群」だと語った。
あとは、実用化に向けて派生的な問題の解決が急がれるのみである。
当局は、早速、厳重な警備体制をしいて博士の研究室を封鎖した。
いうまでもなく、新薬が敵の手に落ちることを恐れたのである。

 日増しに強化されていく警備陣を睨みながら、ある日、
一人の助手がアッシュ博士に問いただした。
「先生、この薬はもはや完璧といっても構わないのではないでしょうか」
「そう、君の言う通り、新薬は完璧だ。これを飲めば、
たとえ鉄の壁の中でも自由に通りぬけることができる」
博士は、自信タップリに答えた。
「すると」助手は、建物を取り巻いている武装警官隊の方を
見やりながら、「……これを飲んだ人間は、
銃で撃たれたとしても死なないことになりますね」
「そうだよ。鉛の弾だって体を通過してしまうからな」
「それさえ確かめれば、お前に用はない」
 博士はびっくりした。助手の態度が急に変わったのだ。
いつの間にやら、助手の手に拳銃が握られている。
「お前は……」
「フッフッフッフ……新薬の開発、御苦労だったな。
……どうだ、驚いたか。何を隠そう、俺はカマネリア国の
スパイだったのだ。新薬の製造法は、全て頭の中に収めさせて貰ったぜ。
あとは祖国の優秀な科学者が全て処理してくれるだろう。
これでお前の役目は終わりだ。覚悟しろ」

(続く)
245できすぎ 2:2001/02/12(月) 08:38
 スパイは、博士の心臓に狙いを付けた。
「待て! 待ってくれ」博士は震えた声で叫んだ。
「この厳重な警戒網をどうやって脱け出すつもりだ。
十メートルと逃げられやせんぞ」
「馬鹿言え! たった今、貴様が説明したじゃないか」
この時、スパイは、少しもためらわずに新薬を飲んだ。
「こいつが効果を出してくれば恐いもの無しさ。
俺の体はどんなものでも通りぬけてしまうんだ。
いかに有能な警官だって、俺様に指一本触れるわけにいくまい。
その指が俺様の体を通りぬけてしまうんだからな。
どうだ、俺の頭の良さに恐れ入ったか。ハッハッハッハ」
 スパイの右手の人差し指がピクッと動いた。
「ちょっと待ってくれ」
 拝むような姿勢でアッシュ博士が言った。
「何んだ、往生際が悪いぞ。言いたい事があるなら、
サッサと言ってみろ」
「実は、この薬には一つだけ欠点がある。
実用化に向けて研究を急いでいるのは、そのためなのだ」
博士は勇気をふりしぼって腹の底から声を出した。
@` できすぎ2@`sage@`2000/11/26(日) 18:55@` スパイは、博士の心臓に狙いを付けた。
「待て! 待ってくれ」博士は震えた声で叫んだ。
「この厳重な警戒網をどうやって脱け出すつもりだ。
十メートルと逃げられやせんぞ」
「馬鹿言え! たった今、貴様が説明したじゃないか」
この時、スパイは、少しもためらわずに新薬を飲んだ。
「こいつが効果を出してくれば恐いもの無しさ。
俺の体はどんなものでも通りぬけてしまうんだ。
いかに有能な警官だって、俺様に指一本触れるわけにいくまい。
その指が俺様の体を通りぬけてしまうんだからな。
どうだ、俺の頭の良さに恐れ入ったか。ハッハッハッハ」
 スパイの右手の人差し指がピクッと動いた。
「ちょっと待ってくれ」
 拝むような姿勢でアッシュ博士が言った。
「何んだ、往生際が悪いぞ。言いたい事があるなら、
サッサと言ってみろ」
「実は、この薬には一つだけ欠点がある。
実用化に向けて研究を急いでいるのは、そのためなのだ」
博士は勇気をふりしぼって腹の底から声を出した。

(続く)
246できすぎ ラスト:2001/02/12(月) 08:38
しかし、スパイは少しも動じなかった。
「生命が惜しいからって、デマカセ言うな。
さっき、完璧だと言ったのは貴様だぞ。
いいか、完璧ってのは全然欠点の無いことを言うんだ」
「そっ、それなんだ。新薬の欠点は完璧ということなんだ」
「ハッハッハッハ。寝言はそれで終わりか。
大分苦しい弁解だったな。……成仏しろよ」
 だが、引き金を引こうとした瞬間、スパイの手から拳銃がスリ脱け、
音をたてて床に落ちた。ようやく薬が効いてきたか。
アッシュ博士は思わず安堵の溜息をついた。もう大丈夫だ。
と、見る間にスパイの体が床の中に吸い込まれていく。
「ギャー」スパイは、高層ビルの屋上から落下していく人のように
長く尾をひく悲鳴をあげた。

 床の上には、スパイの身に着けていたものが、
下着から靴まで、そっくり残された。
「馬鹿な奴め。私たちが常に重力に引っ張られていることを
忘れていたのか」アッシュ博士は新薬の入ったビンを摘んで言った。
「新薬の欠点は、これを飲むと、どんな物でも通りぬけてしまうことなんだ。
靴の底も、床も、それから地球も……」