★エイエソに詠美ちゃんさまはフミューだぞ★

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634旦那さん、名無しです
「…よし。ポチき、今日はこの辺で作業終わりっ。続きはまた明日っ。」
 そう一方的に言い放つなり、詠美は書きかけの原稿をエンベロープ付きの
封筒に、画材をバッグの中に片づけ始めました。和樹としてはせっかくノッて
きたところであっただけに、拍子抜けも甚だしい限りです。
「…オレ、もう少し書いてるよ。詠美は適当にくつろいでればいい。」
「ダメッ!あたしが今日は終わりって言ったら終わりなのっ!さっさと片づけ
なさいよね!ホントにどんくさいんだからっ!!」
 チラリと時計を見た和樹は小さく溜息をもらしつつ、ダメモトで反論を試み
ましたが…詠美は不満そうに睨み付けてきて、問答無用とばかりに原稿を
取り上げてしまいます。
 和樹の家で原稿を書くこと自体は、今となっては少しも珍いことではありま
せん。恋人どうしになったとはいえ、詠美のワガママじょていぶりも健在です。
 ところが…あれだけ時間を忘れて原稿に取り組んでいた詠美が、最近は
やけに早く作業を切り上げるようになってきました。
 先程和樹は時刻を確かめたのですが、ここ最近はめっきりと切り上げる
時間が早くなってきています。言い換えれば、原稿を書いている時間よりも
おしゃべりしている時間の方が長くなってきているのです。
「はいはい、片づけますよ…じゃあココアで一服するかねぇ、ココアでっ。」
「こ、ココアなんて、高校受験の中学生が飲むようなものじゃない…ココア
ならあたしはいらないっ。ホットチョコなら飲んであげてもいいけど…?」
「ふうん、あっそ。じゃあオレだけココア飲もうっと。ココア懐かしい〜。高校
受験以来じゃねえかなぁ?」
「うみゅ…そ、そうね。あたしもあんたののすたるじーにつきあったげるわっ。」
「はいはい。なにとぞお付き合いくださいませ。」
635旦那さん、名無しです:2001/03/30(金) 00:55
 春到来とはいえ、まだまだ肌寒さは居座ったままであり…和樹が振る舞って
くれるココアもまだまだ需要が尽きません。それに対していちいち不満を
漏らす詠美も相変わらずです。
 和樹特製の甘ぁいココアが用意されると、やおら詠美はコタツから立ち
上がりました。作業中はずっと和樹の正面に座っていたのですが、どこか
視線を逸らしながら彼に寄り添ってきます。
「…一応聞くけど、なんだよ?」
「…座椅子っ。」
「まぁ、わかってたことだけど…ほれ。」
「うんっ…!」
 わざとらしく眉根にしわを寄せた和樹の質問に、詠美は単語で答えました。
和樹もその答えが予想できていたらしく、そっと自分の席のコタツ布団を
まくります。
 たちまち嬉々として表情をゆるめた詠美は、和樹の脚の間にスルリと
滑り込み…まるでバイクの二人乗りのような体勢になりました。
 そのまま詠美が和樹の胸に背中を預けると、和樹も背後のベッドに寄り
かかり…二人して安堵感を楽しみます。和樹が丁寧にコタツ布団をかけ
直して、しばし真正面のテレビを眺めます。
「なぁ詠美。お前、この頃はコレしてもらいたいから早めに切り上げてんじゃ
ねえだろーな?」
「だって気持ちいーんだもん…いいじゃない、減るもんじゃなし。ケチポチ〜。」
「ケチだとぉ?ケチならこんなことさせてやんねーよっ!」
636旦那さん、名無しです:2001/03/30(金) 00:56
「あっ…ふぅ…なかなか上手じゃない…。いい気持ちぃ…」

もみ、もみ、もみ、もみ…
 和樹の追求をごまかすことなく、意外にも詠美は素直に認めました。その
代わり減らず口が無くなることはありません。恋人どうしになったとはいえ、
まだまだ甘え慣れていないようです。
 そのはにかみすらも解きほぐすかのような…そんな優しい手つきで、和樹は
詠美の小さな肩を揉み始めました。一瞬驚いた詠美もすぐさま心地よさそうに
目を細め、うっとりと溜息を吐きます。
「ポチ…じゃなくって、和樹…あ、あのね?あたし…眠くなってきちゃったんだ
けど…こ、このままでもいい?」
「なにを今さら。ゆっくり休めよ。肩凝ってるぞ?」
「…いっ、いくらあたしが魅力的だからって、ヘンなことしちゃダメだからねっ?」
「ホッペにキスもダメか?」
「だめ…どうせするんなら、あたしが起きてからにしてよねっ…」
 そう二言三言おしゃべりを交わしているうちに、詠美は肩もみで揺られながら
ゆったりとまどろみに落ちていきました。かわいらしい寝息を確かめてから、
和樹はそおっと肩もみを終えます。
「…詠美って、セーターの上からでも暖かい…なんだかオレまで眠くなって
きちまったな…ふぁ〜あ…」
 和樹もそう独語してから、リモコンでテレビの電源をオフ。
 ふんわりとしたぬくもりに包まれながら、二人は仲良くうたたねをしゃれこむ
のでした。