01/02/27 PM 6:17
「じゃあねーっ!」
「また明後日ね、はつねちゃー!」
二泊の京都旅行を終え、仲良く手を振り会う。
ここで加奈子と由岐と別れると、家まではもう独りだ。
アンテナを風になびかせ、たったかたったか駆けてゆく。
(今日の晩ご飯は何かな〜♪)
お兄ちゃんも、家にいてくてるかな・・・
そんなことを考えながら息せきかけかけ門をくぐる。
「ただいまーっ!」
ぱたぱたと元気のいい音が柏木家に響く。
静寂。
(あ、あれ?)
妙に屋敷の中は静まりかえっていた。
生きとし生けるもの悉く死に絶えたかのようだ。
「おねえちゃーん?おにいちゃーん?」
返事がない。
部屋に戻り、着替えてから暫く時間が流れた。
(みんな、どうしちゃったのかな……)
することもないので机の上のペンダントに目をやる。
あの日、もらった大切なペンダント。
(お兄ちゃんも、お姉ちゃんも私の誕生日、忘れちゃったのかな……)
祝って欲しい、とは思わなかったが
それでもせっかくの誕生日、一言おめでとう、とでも言って欲しかった。
(お父さんなら、、、お母さんなら、、、)
きっと、こんな日には「おめでとう」っていってくれたのに、、、
在りし日の思い出にふれ、ふと目頭が熱くなった。
かち、、、こち、、、かち、、、と時計が等しいリズムを刻んでゆく
ぽさ、とベッドの上に倒れ込むと、白い天井が広がっていた
7時の、鐘が鳴った。
(お夕飯、私が作らなきゃ、、、)
もそもそと立ち上がり、台所へと向かう。
近道をしようと暗い居間に足を踏み入れた、刹那。
「きゃっ?!」
突然まばゆい光が瞳に射し込み、ぱぱーーんっ!と軽快な音が鳴り響いた。
つづいて、紙吹雪が舞う。
「ななな?」
「おめでとう!初音ちゃん!」
「おめでとう、初音」
「初音、お誕生日おめでとう!」
「…おめでとう、ハツネー」
慌てる初音ちゃんに四人が群がる。
「ははは、驚いた?いや、みんな初音ちゃんのお誕生日だし一生懸命準備したんだよ〜」
「もう、驚いたぜ。デパートに行ったら楓がじぃーっとディスプレイの前で
かがみ込んでてさ、こっちみて”買って”ってスカートつかんできたんだぜ?」
「……ずーっと悩んだんだもん」
「それに、買ったのは私でしょう?梓なんて、もってくるだけだんだから!」
「え?ええ?え?」
今ひとつ飲み込めてない初音ちゃんに近づき、
俺はわしゃわしゃと髪の毛をなでた。
「夜中にさ、楓ちゃんが来てさ、『ハツネのお誕生日に、何かしてやりたいんです』
っていうからデパートに連れったらさ、梓に千鶴さんとみんなして
初音ちゃんのお祝い選びにいくんだもんな〜。
俺、一日中つきあわされてたんだぜ?」
「はな!はははは!」
梓が近づき、ぽぽーんと初音ちゃんの方を叩いた。
「目出度いじゃないか!ほら、お祝いお祝い!」
と、初音ちゃんの動きが止まった。
見ると、肩をふるわせている。梓も初音ちゃんの異常に気がついたようだった。
「は、初音?」
「うぐっ、、、くすん、、、ぅん、、、」
見ると、初音ちゃんは大粒の涙を浮かべて泣いていた。
「は、初音ちゃん?!どうしたの?クラッカー、目に入った?」
思わず駆け寄る俺達。
そうだ、部屋を暗くしたりしたせいで何処かぶつけてたんだろうか、、、?
「。。。しいよぅ」
「え?何?」
「わ、、、私、、、嬉しい、、、」
「初音ちゃん!」
初音ちゃんは、どうも何処か悪いようじゃなかった。
「私、、、帰ったら誰もいないから、、、
みんな私の誕生日忘れてたのかと思って、、、
ちょっぴり、、、悲しくなって、、、でも、、、みんな、、、」
耐えきれなくなったのか、初音ちゃんは俺の胸に飛び込んできて
ぽろぽろ大粒の涙を零し始めた。
「うああぁ、ありがとう、お兄ちゃん!ありがとう、お姉ちゃんたち!」
俺は、胸の中で泣きすくむ小さな、暖かな手応えを感じていた。
みんなが近づいてくる。
「ほら、初音ちゃん、もう泣かないで」
くいっと力を入れると、あっさり初音ちゃんはこっちを向いた。
瞳が、涙に濡れている。
「みんな、初音ちゃんのお誕生日、まってたんだから」
楓ちゃんが畳を三回踏む。用意の合図だ。
俺達は、すうっと声を合わせる。
「ハッピバースデー、初音!」ツマラなかった(゚д゚)?!
ほら、昨日の柏木家の出来事再録だと思って許してクレ……(´Д`)