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246 :
AIR :
「と、ゆーわけでだ」
「うんうん」
夏真っ盛りの商店街。
相変わらず、嫌になるくらいの暑さである。
「俺は今金が無い」
「いつものことだもんね」
「…お前今、さらって酷いこと言わなかったか?」
「ううん、言ってない言ってない」
……まあ、いい。
「早急に金を稼がねば、俺はそろそろピンチだぞ」
「そうなんだ」
にこにこ。
笑ってくれてる観鈴の顔がなんとなく憎い。
「このままでは自分の欲しいものも何一つ買えないでは無いかっ!!」
「お母さんにお小遣い貰えばいいのに…」
「……くれると思うか?」
「ううん」
にこにこ。「………」
ぽかっ!「…イタイ」
「殴ったからな」
「どうしてこういうことするかなぁ…」
ぶつぶつ何か言ってるが、無視。
今の俺の最優先事項は金である。
「で、だ。 とにかく金を稼ぎたいわけだが」
「どうやって稼ぐの?」
「…コレだ、コレ」
ポケットから人形をだし、見せる。
美凪のおかげで多少見栄えの良くなった、いわばニュー俺の人形だ。
「わ…、そういえばそんなものも」
「忘れてくれるな…頼むから…」
結構情けなかった。
「…で、だ。 観鈴、頼みがあるんだが」
「うん? わたしに出来ることだったら」
「脱いでくれ」
「………」
ぽかっ!
「痛ぇ…」
「わたし、そういう冗談嫌い」
「いや…良いアイデアだと思ったんだ」
「うー」
「ならせめて、客寄せの手伝いでもしてくれ」
「うん、それならいいよ」
にこっ、と笑ってくれる観鈴。
…今だけはこいつの性格がありがたかった…。
「……おい観鈴」
「うん?」
「客が来ないぞ、どうした」
「…人が通りがかってくれないと客寄せも出来ない」
「……そだな」
夏休みの、商店街は。
誰一人通る人はいなかった。
「……本当に大丈夫なのか、この商店街は」
「わたしに聞かれても…」
…このままでは一銭も稼ぐことが出来そうにない。
むしろ、稼ぐ前に干からびてしまいそうである。
「ね、往人さん」
「あん?」
「知ってる人の家に行ってみる、ってどうかな」
「…はぁ?」
「ほら、訪問人形使い」
「ほら…って言われても」
「お客さんが来ないなら、こっちから行ってみるの」
「…まあ、前向きではあるが」
「向こうから来てくれるの待ってばっかりじゃ、駄目だよね」
うんうん、となんだか一人納得してる観鈴を見ながら。
「…むー…」
俺は、訪問する家を考えていた。
247 :
AIR :2000/09/11(月) 12:53
てくてく。
「…暑い」
「お仕事なんだから、文句言っちゃ駄目」
「…そういう問題でも無い気がするが」
むしろ暑い。あぁ暑い。暑すぎる。
汗がだらだらと…、このままホントに干からびるんじゃないだろーな…「あ、お兄ちゃんだーっ」
「…あ」
どこからともなく聞こえてくる、声。
たたたっ…、ぽふっ
「お兄ちゃん、こんにちはーっ」
「こんにちはー」
「お…、さいかにまいかじゃないか。 どした?」
「お人形、見せて」
「見せて見せてーっ」
「ああ、いいぞ−?」
「わーいっ」
「わーいわーいっ」
「お兄ちゃん、大好きーっ」
………………
「ありがとーっ」
「いいっていいって、これくらい軽いもんだ」
「じゃ、まいか達もう行くねー?」
「おう、気をつけろよー」たたたっ……「…ふぅ…」
「……往人さん」
「お、どーした観鈴?」
「往人さん、あれくらいの歳の子が好みなんだ」
「……え゛?」
なんだか観鈴が悲しそうな瞳でこっちを見ていた。
「そうなんだ…、しょうがないよね、さいかちゃん可愛いもんね」
「…な、何か誤解してないか?」
「言い訳しなくていいよ。 往人さん、なんだか凄く爽やかに笑ってたし」
「う…」
「わたし、このことお母さんに報告してくるね」たたっ…走り去る観鈴と、放心状態の俺。…って…
もしかして更にややこしい事態になりそうな予感ですか?(汗)
「…待てぇぇぇぇっ!!!」だだだだだだだっ!!
このまま観鈴を逃がしたら…
「お母さん」に観鈴の家を追い出されることを確信しつつ。
俺は、全力疾走で観鈴を追いかけた。
…頭上では、嫌になるくらい暑く明るく、太陽がさんさんと輝いていた…。
〜完〜