>>477の続き
その日はどうも、俊の様子がおかしいと思っていた。ジムで落ち
合って、さてどこへ行こうかとブラブラ池ぞいの遊歩道を歩いている
ときも、彼はどこか上の空、という感じだった。
蘭世は気まずい雰囲気を和らげようと、機関銃のようにしゃべり
続ける。
「でね、お母さんたら、ついにお父さんの棺桶、ペンキで色を
塗り替えちゃったんだあ。何考えているのかなあ!」
ちらりと、俊を見上げる。唇は、常に微笑んでいるかのような
形を取っているが、聞いているのかいないのか、蘭世には分からなかった。
「座らねえか。」
突然、俊が口を開き、少し奥まったところにあるベンチを指差した。
そこは遊歩道ぞいではなく、池を囲む森の中と言った方がいいほどひっそり
としたベンチだった。日陰なので、座るとひんやりとして心地よい。
「真壁君・・・何か心配事でも?」
蘭世は大きな瞳をさらに大きくさせて、俊を覗き込んだ。俊の頑固な
意志を表す顎の線、濁りのないきらめきを持つ瞳。固く引き結んだ唇。
また少し痩せたかしら?
俊の顔に見とれていた蘭世は、彼の目元に一瞬よぎった光には気づか
ない。
「今夏だろ?」
俊は目を蘭世に合わせたままつぶやいた。ベンチに深く背もたれたまま
隣の蘭世を見下ろしているので、蘭世は変な威圧感を感じ思わず身を5度
ほどそらす。
「夏、ね・・・?」
「お前の薄着なんて、いくつも見て来た。俺が小さい時なんか、風呂も
一緒に入ったからな。それなのに・・・」
蘭世は、思わずゴクリと生唾を飲み込んだ。俊が何を言おうとしている
のか、少なからず分かったからだ。そう、この目。最近の真壁君は、私
を見るとき突然こんな狂おしそうな目をする。私は照れて、思わず視線を
そらしたりしていたけど、今日はダメ、そらせない・・・
「同時に減量もしてる。つまり、飢えてるんだ。」
背もたれに回していた俊の手が、蘭世の肩を抱き寄せる。唇が重なる。
いつものように、軽く遊ぶようなキス。蘭世は、もう何回交わしたか分か
らない、この俊とのキスを楽しんでいた。ああ、幸せ。蘭世は幸せです。
と、突然俊が蘭世の歯を舌でこじ開けた。うっとりしていた蘭世は夢
から覚めた様に硬直する。俊は喉の奥で軽くうめいて、更に深く、舌を
入れてきた。そうするつもりはなくても、思わず絡まる舌。蘭世の身体に
電流が走った。まるで食べられてしまうかと思うような、激しい俊のキス。
こんなキスは初めてだ。
>>477-479の続き。
もうどうなってもいい。ここでそうなってもいい。何も考えられない。
俊の無骨な手が蘭世のスカートの中に入ってきた。もどかしそうに蘭世の
秘所を指が伝った。胸を愛撫された時とは比べ物にならい電流が、彼女の
身体を駆け巡った・・・。
「おねえちゃん、青になったの4度目だよ。」
その声に我に返った蘭世は、声のした方を振りかえった。小学校低学年
ぐらいだろうか、見知らぬ子供が蘭世を不審そうに見つつ、走っていった。
私ってば、思わずここで物思いに拭けちゃって・・・!赤面して、周囲
からの視線を感じつつ横断歩道を渡りきった彼女は、ジムへの道を急いだ。
あの時・・・散歩中の、手綱が離れた犬が私達に飛びかからなかったら、
どうなっていただろう。人懐っこい犬に顔を舐められながら、呆然として
いた俊の顔を思い浮かべ、蘭世は複雑な微笑を浮かべた。
つづく
キャッ!新参者なのに続くなんてやちゃった。いかがですか?
よっしく!(←これ、最高)