ニ限目の休み時間、校長の爆裂山先生に茶化された。
「華澄さんって渡瀬くんとデキとるんじゃろ?」
「デキてるって何がですか?」
「だーかーら、華澄さんと渡瀬くんがらぶらぶって事じゃよ」
「ええっ!? ラブラブって、私と公一君はそんなんじゃ――」
「『公一君』じゃと? やっぱりデキとるんじゃな!?」
近くにいた教師達が一緒になって囃したてる。
「ラッブラブ、ラッブラブ、麻生先生と渡瀬公一はラッブラブー」
「ち、ちがいますっ!」
周りを見渡す。
(どうやら職員室に公一君は……いないみたいね。取りあえず安心)
「と、とにかく私と公い――渡瀬君はそんなんじゃありません!!」
「だったら証拠を見せてくれんかのうー!」
職員の中でリーダーの校長がそう言った。
「証拠って……?」
「そうじゃな……今から渡瀬君のとこに行って、彼のズボンをズリ下ろしてくるんじゃ。そーしたら信じるわい」
「そ、そんな……」
(まったくヒドイこというわね。そんな事できるわけないじゃない。……でもやらないと信じてくれないんでしょうね。だったら仕方ないか……)
「わ、わかりました、やります!」
「おぉー!!」
職員達から歓声があがった。
安請け合い。安請け合いだったのよ。
まさか、それが後であんな事になるなんて……。
―――廊下にて―――
私は公一君を見つけてかけていく。
「公い――渡瀬君!」
「あ、華澄先生!? なんですか?」
呼ばれた公一君は少し驚いた顔をした。
「あれ? 華澄先生なんか顔色が悪いみたいですけど何かあったの?」
「…………」
公一君を挟んで反対側では、全職員と何故か用務員のおじさん達が私達の様子をじっと見ている。
(やらないと……)
「華澄先生?」
「……うん、あのね」
「うん…」
(ゴメンね、公一君!!)
「えいっ!」
ズルッッ!!
次の瞬間、私は公一ちゃんのズボントに手をかけ、一気に引きずり下ろした。
「えっ……!?」
「あっ…!」
なんと私が力一杯引っ張ったせいでズボンと一緒にパンツまで脱げてしまった。
一瞬の出来事に何が起きたかわからない公一君は、そのままの状態で呆然と立ち尽くしていた。
やがて後ろや前から、
「やりおったわい!!」
「キャーー!!」
「ひゃっほー!!」
パチパチパチパチパチ…
という職員達の歓声や拍手、生徒達の悲鳴が沸きおこった。
それを聞いた公一君は我にかえり、慌ててズボンを履こうとする。
が……。
「おわっと!!」
慌てたせいでバランスを崩した公一君が私の方に倒れてきた。
「きゃっ!」
もつれるように倒れる二人、生徒達が何事かと集まってくる。
その中には光ちゃんもいた。
「!!!」
ノーパンで私の上に覆い被さってる公一君。それを見た光ちゃんの顔がみるみるうちに蒼白になった。
「うっわー、公一が華澄先生をレイプしてる!」
そう言ったのは公一君の友人、坂城君。
「最低だな…」
同じく穂刈君が追い討ちをかける。
「いや〜〜〜〜〜!!」
遂に光ちゃんはその場から走り去ってしまった。
「ち、ちがうんだ、光〜〜〜〜〜っ!!」
しかし時すでに遅し。
(……私は、なんてことしちゃったんだろう! ま、まさかパンツまで……)
私は今更、後悔した。
狼狽する公一君の声が、ただ私の胸を締めつけた。
それから一週間もしないうちに、公一君は学校を辞めてしまった……。