ロベリアだけどアタシを称えるスレはないのかい?

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「……なんだい?」少し間を置いて、ロベリアが答える。
「もし君が溺れたとしても、俺が必ず助けてやる。だから、俺を信じて思いきって水に飛び
込むんだ!」
「な、なんだって?! そんなことやって、もしホントに溺れたらどうするのさ?!」
「大丈夫だ! さっき、泳ぎ方はしっかりと教えたろ? それを水の中でやればいいだけだ!
もう一度言う、溺れても、絶対に俺が君を助ける!」そう言った大神の目は本気だった。
「……まったく。相変わらずだね。……一体どこからそんな自信がでてくるんだか」そうは
言ったものの、ロベリアの表情は先程とはうってかわって、いつものロベリアの顔に戻って
いる。
「じゃあ、次はぶっつけ本番でいくからな! ロベリアは、俺を信じてくれれば良い!」
「……判ったよ。まったく、隊員を危険な目にわざわざ遭わせるなんて、とんでもない隊長
だよ」そんなことを言いつつ、ロベリアの顔には笑みが浮かんでいる。
「そうかい? でも、これは君の好きなギャンブルだよ。君は自分が泳げる事に賭ける。
俺は君を必ず助ける事に賭けるのさ。君が勝ったら、今度の休みは一日中ロベリアの言う
事を聞いてあげるよ」
「フッ、ギャンブルって言われたら降りるわけにはいかないね。やってやろうじゃないか!」

「よーし! そこからこっちまで、思いきって泳いでみるんだ!」大神は、二五メータープール
の反対側に立っている。プールの深さは二メートル……ロベリアにとっては、まさに命懸け
の賭けだ。
「判ったよ。必ず泳ぎきってやるから、首洗って待ってな!!」威勢よくロベリアが答える。
「はじめるぞー! ……よーい……スタート!!」
 大神の号令で、ロベリアはプールに飛び込んだ。無我夢中で、言われた通りに手足を
動かす。
(泳げる!! 大丈夫だ!!)水に対する恐怖心も、今は感じない。
(隊長……この賭けは頂いたよ)ロベリアは、勝利を確信した。
 そんなロベリアを見て大神は、彼女を信じて良かったと、心底思った。賭けの事なんか、
今はどうでも良かった。
 ロベリアは、既にプールの真中の地点に差し掛かっている。しかし、その付近から明らか
に様子がおかしくなっている。一体、彼女に何が起こったのか?
(い、息が苦しくなってきやがった。くそ! もう少しだってのに……)
 その様子を見て、大神は気付いた。ロベリアは、息継ぎをしていないのだ。
「まずいッ! ロベリアッ!!」大神は、急いでプールに飛び込んだ。

つづく

次で終わらせます。
575542:2001/04/06(金) 05:24
(た、隊長?!)酸欠で薄れる意識の中、ロベリアは大神が飛び込んできた事に気付いた。
(……チッ、どうやら賭けはアタシの負け……か)そう思ったら、急に身体中の力が抜けて
くるのを、ロベリアは感じた。だが次の瞬間、ロベリアの意識が引き戻される事が起こった。
「クッ、あ、脚が!!」大神は、脚が攣ったのか右足を抱えたまま水中へ沈んでいく。
(隊長! バカか、自分が溺れてどうするんだい!)ロベリアは力を振り絞り、一旦水面から
顔を出すと、一気に肺に空気を満たした。そして、急いで大神の元へ向かう。
(隊長! 死ぬな! 死ぬんじゃないよ!!)
 ロベリアは、必死で手足を動かした。もう少し、もう少しで大神の元へと辿り着く。
 あと少し手を伸ばせば届くところまで来たとき、突然大神の手が彼女の身体を掴んだ。
(え? な、なんだってんだい?)状況が掴めない彼女を掴んだまま、大神は水面へと浮上
していった。

ザバァッ!!

「ぷはっ。はぁー、はぁー。……い、一体何が?」呆気に取られるロベリア。
 そんなロベリアを抱きかかえたまま、大神が言った。
「やったな、ロベリア! ちゃんと泳げたじゃないか」
「……」ロベリア無言。
「上手くいってホントに良かったよ。悪いとは思ったんだけど……」
「……おい」ロベリアの頬が引きつる。声には、思いきりドスが効いていた。
「は、はい……」
「ひょっとして……さっき溺れてたのは……芝居か?」声に含まれる怒気が、徐々に
高まっているのが、誰の目から見ても明らかであった。
「いや、その……海軍の兵学校時代に、泳げないヤツが居たときに、皆でこうやって
泳げるようにさせてたんだ……よ」大神の顔から、血の気が一気に引いていく。
「テッメェーーーーーーーーッ!!」あまりの怒りに、ロベリアは霊力を無意識に放出
した。それによって、プールの水温が、一気に二〇度近く上昇した。
「うわっ! ご、ごめんなさーーい!!」脱兎のごとき勢いで大神が逃げる。
「許すかー―――――――ッ!!」
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 次の休日、大神はロベリアの財布としてカジノへと拉致された。
 ――大神一郎……借金総額:三六万二千フラン
(合掌)


おわり

って、こんなオチかい