リンド兵はガーネットの髪をかきあげ、しに逝く顔をのぞく
ガーネット「……」
そのときガーネットの口元がゆっくりと動いた
聞き取ることもできないような消え入りそうな言葉…
「ーーーー!」
次の瞬間、森の中で閃光が放たれた。光におののき、剣を離して数歩下がる、
リンド兵「何がおきた…!?」
目がくらんだ、光の中心から表れでたのは一人の女…まごうことなき、女王の姿、
しかしその肉体は朽ち生気を失っている。
ガーネットは自らの体を貫く刃を引きぬくが鮮血があふれることはなかった。
どす黒い体液かわずかにこぼれるのみだった。
…自らの魂に反魂の術か…貴様もあがくな…
…ガーネットの心の奥底で、そんな声がした…
ガーネット「貴様ら雑兵に倒せる私と思ったか…?」
口元の吐血を手の甲で手荒くぬぐう…
あせるリンド兵の剣をかわし、前に踏み込む、
ガーネットの指先が迷うことなく眼窩を穿つ、
「うああああ!」
そのリンド兵は両目をおさえ叫び声を上げた。
エーコかマリンがいればその場の空気も違ったろうが、
人間を超えた力を前に、兵はたじろいだ。もはや生身の女ではなく
獣と呼ぶにふさわしい動きを見せた、
ガーネットは視界を失ったリンド兵の喉元に手をやり、
常人を超えた握力をもって喉笛を引きちぎった、鮮血が降り注ぐ。
リンド兵たちに波紋のように恐怖の波がひろがってゆく…
「流れ」は確実にガーネットにあった、
アンデット化による肉体の強化と、苦痛の解除…
リンド兵に幾度もの剣を受けるも止まることなく、
腕をつかむと枝を折るように骨を折った、左足を振り上げ顔前に兵に蹴りをくらわす
ガーネットは本能赴くままに闘いの興奮に身を任せた
リンド兵も応戦するも、足元に転がる躯が増えるばかりだった。
「化けモノだ…!」
その言葉を残し、一人の兵が背をむける、
くものこを散らすようにリンド兵たちは逃走した。
ガーネット「やっと静かになった…」
再び、大樹の元に腰を下ろす、
アンデット後の変化に個人差があることはわかっていたが
意識が保てる「残りの時間」はガーネット自身にもわからなかった。
せいぜい長くても半日がいいところだろう、
「どこへ行くか」…そう呟いた