アレクサンドリア許さない×2〔DISC5〕

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62名無しさん@LV2
生きる目的とは、誰かに与えられるのではなく、自分の意思で見い出すべきもの。
それはひとつの真理ではあるものの、ガイアに生きる者にとってはありきたりな結論かも知れない。
しかし実際に悩み、そして考えてきたジタンの言葉には、上滑りな美辞麗句とは一線を画する、
信念に支えられた重みというものがあった。そしてそれは又、ガーランドに与えられた目的の為だけに
生きてきたミコトにとっては、想像する事さえなかった回答だったのである。ジタンはミコトの
疑問そのものに答を与えた訳ではなかったが、答を得る為の方法を教えたのだった。

『そうだ! おまえ、名前はなんて言うんだ』
『私の名前は…ミコト』
『ミコトか…。いい名前だな…多くの人がこれからおまえをそう呼ぶよ。時にはその意味を追い過ぎて
悩むこともあるけど、結局はそのミコトが何者かは、おまえが決めるしかないんだ…。行こう、ミコト!
そして新たな地で見つければいい。お前が何のために生を受け、そして生きるのか…』
かくしてミコトは、崩壊するブラン・バルを脱出し、ガイアで生きる決意をしたのである。
63名無しさん@LV2 :2000/09/25(月) 18:09
ミコトは自分が夢を見ている事に気づいていた。
何故今頃にになって、テラ崩壊の日の事などを夢に見るのかと不思議に思った時、唐突に夢の中の
テラの光景が消失し、変わって、地平線の彼方まで何ひとつ存在しない殺風景な空間が出現した。
磨き上げた黒曜石のような滑らかな大地を、毒々しい黄昏にも似た不気味に紅い光が照らし出す。
今まで何処かで見た事が無いのは勿論、そんな場所が実際に存在するとも思えない、あまりにも
現実感を欠いた光景だった。
『…ひょっとして、これが私の心象風景なの?』
ふとそんな事を思って、その仮説のあまりの不愉快さに顔をしかめた時、突然、背後からくすくすと
笑う声が聞こえた。
64名無しさん@LV2 :2000/09/25(月) 18:09
『…誰?』
振り返ったミコトの目に映ったのは、如何にも面白そうにくすくすと笑うミコト自身の姿だった。
「本物」のミコトがついぞした事のないあからさまな笑いの中に、これも「本物」には見られない
悪意が滲み出している。
『…夢におけるもうひとりの自分との邂逅…。我が事ながら、なんて安直な…』
自分の心が紡いだ夢のあまりの安易さにミコトが頭を抱えた時、もうひとりのミコトが口を開いた。
『貴女にそんな事を気にしている余裕があるのかしら?』
『…どういう意味?』
もうひとりの自分の発言の意図が掴めず、ミコトは聞き返した。「もうひとり」は「本物」の思考を
読み取れるようだが、その逆は不可能らしかった。同じ自分なのに不公平だとちらりと思う。
『私はね、貴女の心にとどめを刺す為に来たのよ』