アレクサンドリア許さない×2〔DISC5〕

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59名無しさん@LV2
ミコトは夢を見ていた。

ブラン・バル…そしてテラそのものが滅んだその日、ミコトはそれまで彼女という存在をを支えてきたもの
すべてを失った。自分を構築する周囲の世界すべてが崩れ去り、それまでは揺ぎ無いものであった
果たすべき目的すらをも奪われ、生きる意味を見失った時、ミコトは抜け殻になった。
いや、その時抜け殻になったと言うよりも、もうずっと以前から自分が空ろな存在だったのだと…
生まれた時から今まで、ずっと空っぽだったのだと悟ったのである。
60名無しさん@LV2 :2000/09/25(月) 18:07
テラが滅びようとする今、虚脱したミコトは、そのまま世界と共に消え去るつもりでいた。
それは、己の死が近い事を知ったクジャが世界を道連れにしようとした事と同様の、自己憐憫の
ひとつの形だったのかも知れなかった。
だからかも知れない。彼女の引きこもった自慰の楼閣に土足で踏み込み、ぬけぬけとブラン・バルからの
脱出を促がすジタンに、ミコトが憤りにも似た感情を抱いたのは。
『私はガーランドに力と魂を与えられた…そう、クジャや貴方の代わりになるように…。でもガーランドも
テラも、もう滅ぶ…。それなら私の存在はどこにあるの? 何の為に私は生きているの?』
それは、そんなミコトの心の動きが言わせた、疑問の形を借りた非難の言葉であった。
61名無しさん@LV2 :2000/09/25(月) 18:07
我ながら、愚にもつかぬ疑問だとミコトは内心自嘲した。何故そんな疑問を口にしてしまったのか、
自分でも分からなかった。あるいは、無意味な事に奔走し、彼女を不愉快な気分にさせるジタンを
困らせてみたかっただけなのかも知れない。ミコトの心の中で、疑問への答は既に出ていた。彼女は
最早、不必要な存在になったのだと。だから、彼女を脱出させようとするのが、如何に無駄な行為かを
悟らせ、己の行動の無意味さに困惑するジタンの姿を笑いたかったのだ。
しかし、困惑して沈黙するとばかり思ったジタンは、意外にもミコトの疑問に正面から答えた。
『…オレも思ったさ。オレは何の為に…って』
『…わかったの?』
『わからねえな…。わからないけど、もしかしたらそれを見つける為にも、生き続けるしかないのかも
知れない…』