アレクサンドリア許さない×2〔DISC5〕

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411名無しさん@LV4
ガーネット「……。」
今、武器となるものは懐にしまわれたライトブリンガーに、折れたダイアソード。
ゾディアックの力+アンデットの肉体強化を受けたラニと
まともに武器でやりあうことはできない。
やれば負ける。
ガーネットは折れた剣を押し当て箱のビニールテープを破く。この剣でもそのくらいの
役割は果たす…。

ガーネット「ラニ……」
戸棚の間の隙間からラニの姿をわずかにうかがうことができる。
もはや衣服でしか判別できぬほどに朽ちた体。

…今にして思う、ガーネット自身、
こういう人間が嫌いではなかった、欲と生に執着する人間。
本能を露出した姿は爽快に感じられることさえある。
そんな人間に心変わりというものはない。
裏切ったとしても当人の欲求に素直に従ったまでだ。
始めからそういう人間だったというだけ…。わかりやすくていい。
……ブルツェンを取りたてたのもそのためだったかもな。
412名無しさん@LV4:2000/11/09(木) 21:41
立ちあがり、戸棚の前に出た。
正面からラニと対峙する。
薄い顔の皮膚はとうに爛れて表情筋が剥き出しとなる。
アンデット・ラニは獲物の姿を見つけたからか、笑いを浮かべたかのように見えた。
口元が動き「お前も…お前も道ずれだ」辛うじてそう聞き取れた。

ガーネット「悪いがお前とは死ねないな…」
ハイポーションをラニの顔目掛け投げつける。
シュワッと蒸気をあげ、
あたかも常人が硫酸を受けたかのように視力を奪い肉を侵食する、
「オオオオッ!」
うめき声とも雄叫びともつかぬ、ラニの喉から発せられる音。
それと共に振り下ろされたポイズンアクスはガーネットの体をかすめ、床に穴を穿つ。

ガーネットはアイテムの入った箱に手を添え、構えた…
躊躇するのは何故だ?憐憫の情か?
「……ふふ、今更何を…」箱を持つ腕に力を込める。
ぶわっ…
60枚のフェニックスの尾が…宙を舞う、
暗がりの倉庫。金色の光の粒がアンデットの姿を暗がりに照らしだした…
413名無しさん@LV4:2000/11/09(木) 21:45
…倉庫を出て、遠い記憶を頼りに急ぐ。

狭い螺旋階段を駆け下りた先にあったのは地下水路…
とうに使用されておらず、水流が滞り異臭が漂った。

ガーネット(城下に抜ける隠し通路の存在は知っていたが、まさかこうなっているとはな…)
浅い部分を選んで走るが、くるぶしまで汚水に浸かった。
水の冷たさが疲弊した体力を削った。
ぬかるみに足をとられ、バランスを崩した。
手をつくのが遅れ半身を投げ出す形で倒れ込んだ。
(くそ…)
動きを制限するリンド兵の鎧を投げ捨てた。

壁に手をついて身を起こす…
(…こんなところで死ぬものか…。)
生き抜いてやる…、その感情が湧き上る…

「逃げ回るんだ」「惨めだろうとも…」
今になって…あの技師の言葉が胸のうちに蘇った。