ガーネット(…逃げるなら…)
おそらくハイウィンドとシエラの二人だけの方がいい。
リンドブルムも小物相手に血眼になって追うことはない。
多少の追っ手があっても、あの男の腕ならシエラ一人くらい守れるだろう。
…シエラが召喚魔法で守ってください、というのも
ガーネットを逃がすための方便に過ぎない。
それぐらいは簡単に想像がつくが…騙されておくか…そう思った。
ソファに座る。体に残る麻酔の効果で眠りに誘われた。
シエラ「少し時間がかかります。休んでください。」
そう言って毛布を手渡した。毛布を受け取り、軽く目を閉じた…。
休息の時間…
しかし なぜだろう…。この焦燥感は…?
どくっ… 心臓の音。動悸が眠りの邪魔をする。
居心地の良さに反比例して、高なる不安。
不安はやがて、明確な声となってガーネット自身に語り掛ける。
…ガーネット…
…貴様も所詮その程度か拍子抜けだな…
ガーネット(だ…まれ…)
…その男たちの精神的庇護を受けて暮らすのか…
…二人の荷物となって…
ガーネット(…黙れと言っているだろう!)
シエラ「…ガーネットさんっ!」
肩をつかんで揺さぶるシエラ。その声が一瞬闇を振り払う。
ガーネット「……。」
シエラ「ごめんなさい。なにか…うなされてるように見えたものですから…」
目を開けると、ガーネットを気遣うシエラの顔がある。
いっときの安堵感。そのやすらぎこそが、胸をしめつけた。
二人を受け入れることができたら、どんなにらくだろう?
でもガーネットの中の何かが、それを拒絶する。
ガーネット「手を離せ…」そんな言葉が口をついた。
シエラは反射的に、肩に置いた手を離す。
シエラ「ガーネットさん…?」
ガーネット「……。」