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>97のつづき :
ラニ「待って待って…本気じゃなかったんだってば!!」
「……」ガーネットの顔にはあきらめと哀れみの表情が浮かんでいた。
バタン、ドアが開く、
技師「なんだうるせえな!」
助手「ラニさん…!?」
民家からでてきたのは不精ひげをはやした中年男と白衣をまとった助手らしき女だ。
技師は突然の来訪者をいぶかしげな表情で見返した、
技師「とりあえず、その物騒なもんをしまってもらおうか。」
ガーネットは言葉に従い剣を鞘に収めた、この先のことを考えれば揉め事は不要である。
(助かった…)ラニは虚脱しその場に座り込んだ。
ガーネットはひとつ思い出したようにラニの手元のブラネの遺品の入った袋に視線を移す。
ガーネット「返してもらおうか。」
ラニ(私の…)反射的にそうつぶやくが、しぶしぶガーネットへふくろを差し出した。
室内。テーブルの上にカップが並ぶ、
技師「誰が、茶なんか出せといった?」
助手「え…」
技師「まったく、客じゃねーんだからよ」
カップに手をかけ、
「あちっ…!」そのままむせて、テーブルの上にこぼれた。
ひといきついて、魔技師(以下・技師)はゆっくりと口を開く、
技師「…リンドブルムの兵隊さんが何のようだ?」
問いに答える代わりにガーネットは兜をぬぐ、兜にしまわれていた黒髪がひろがった。
すで皮膚が朽ちて変色し死臭がただよい始めている。アンデットだった。
それでも顔にわずかにかつての面影を見ることができた。
シド大公の元で飛空挺技師をしていたときに見た顔である。
技師「アレク…いや元アレクサンドリア女王…」
ガーネット「ラニから少し話を聞いた。故シド大公を中心とした魔技師たちの一人だな?」
技師「そうだ。」
ガーネット「率直に言う、力を貸してほしい」
技師「!?」突然の申し入れに技師は顔をしかめる
助手「…。」助手の女は技師の横顔をしずかにうかがっている
ガーネット「エーコと敵対するという意味では同じだろう、あのラニの力に頼るくらいだ、
相当戦力に困ってるのではないか?」
技師「…少し考えさせてくれ」
そう言うと窓際に立ち、タバコに火をつけると静かに空を仰いだ。
技師「シド大公が生きていたころなら、どうだったかわからねえが…
リンドブルムに組織の存在を知られ、めぼしい兵器は取り上げられたよ。
人員もちりぢりになって、
この故郷の村で俺とそこの助手で静かに研究をしているだけだ。」
助手「……」
技師「俺はシド大公でもなければ軍人でもねぇ、一介の技術屋だ。
今の話…正直言って戸惑っている。…シド大公やヒルダ王妃の仇はとりたいとは思う、
それでも戦争に関わりたくないのが本心だ。」
ガーネット「戦えとは言わない、このアンデット化した体を治すだけでいい。
それとも、技術的にできないか?」
技師はしばしの沈黙のあと、
技師「…おい、可能か?」と助手の方を見る
助手「ええ、治療装置はそのままだし、ラニさんの施術を元にすれば…できます。」
戸棚からファイルを探す。しばしの間のあと、テーブルに広げられたレポート用紙には
アンデットと化したラニを治療したときの記録が事細かに書かれている、