http://ond.homeip.net/bbs/index.html

このエントリーをはてなブックマークに追加
1の主治医です。
この度、このようなスレッドを1が立てるに至ったことは、
主治医として、大変残念な事であり、また、治療の効果が
まだまだ現れていないことを証明しているため、そろそろ
最終的な決断を下す必要があるようです。
みなさんお聞きになったことがあるかもしれませんが、
必ずしも心の病は、特殊な病気ではなく、誰もがそうなる
可能性があります。しかし、だからといって、これ以上、
1を放置することは、例えば何の関係もない人を傷つけたり、
逆に1自身の将来にとり、必ずしも良いことではありません。
そこで、私は、1の両親、臨床心理士などとも相談して、
1をしばらくの間、ネットの出来る環境から離して、
濃密な人間関係の中で治療をすることにしました。
1にとっては、納得がいかないことかもしれませんが、私も、
医師免許をかけて、1を徹底して直すことに致しました。
どうかみなさん!1が戻ってきましたら、このような人を悲しませる
スレではなく、みんなに感動を届ける以上の人間になっていると思いますので、
暖かく見守ってやってください。
「まことに申し上げにくいことですが……」
1の主治医の、抑揚のない声が四畳半一間のアパートに響いた。
彼の職業的無感動に支配された表情は、
重い事実にも少しも変わることはなかった。
「……では、息子はもう?」
対照的に1の母の顔には、すでに達観したような、諦めが色濃く漂っている。
全てを捨てて看病を続けてきた彼女には、もう気力も体力も残されてはいないようだった。
「非常に珍しいケースなのですが」
 銀縁の眼鏡に手をやって、主治医は眉一つ動かさないまま続けた。
「空っぽになった精巣から侵入したウイルスが、すでに脳の言語野や海馬に達しています。
今はかろうじて日本語で思考する能力が残されてはいますが、それももう時間の問題でしょう。
それに、思考しているといってもそれはあくまで形式的な話で、日常生活に支障のないレベルは、すでにキープできていません。正直な話、日本の中学生が発症した例を、私は寡聞にして知りませんでした」
「そうですか……」
「そうですか……」
 母はそういって深く首をうなだれた。そのとき、1が最後の力をふり絞るようにして母のほうに手をさしのべた。1の口から、大量の涎が流れ出し、母は息子の頭を抱えるようにして、ゆっくりとそれを拭った。
「……メ……メ……」
「どうしたの? 何か伝えたいことがあるの?」
「……メ」
「さあ、言ってみなさい。生き延びて見せる、そう宣言してご覧なさい。」母は息子を愛撫しながら、そう励ました。
「……メ」
「さあ」
「……メロンパン」
 主治医の能面のような表情に翳りがさし、彼はそれを隠すように目をそむけた。
 あとには母のすすり泣く声だけが残った。