>>25あたりからの続き
2000.12.30 pm12:43
途中いろいろあったものの、五月はようやく目的のサークルにたどり着いた。
机の上には「新刊販売、13:30から」という文言が、少女のカットと共に描かれていた。
「まだ販売してなかったんだ。良かった完売してなくて」
サークルスペースには一人の少女だけが座っていて、隣のサークルの女性と談笑している。
この子が作者なのだろうか?
とりあえず五月は声をかけてみる事にした。
「あのー、すみません、新刊はまだなんですよね?」
『あ、ごめんなさい。なんか向こうのミスでまだ届いてないらしいんです』
少女…琴美は声をかけられた事に驚いたように、五月に答えた。
「えっとそれじゃスケブをお願いしても良いでしょうか?」
『すけぶ?』
琴美は目をぱちくりとさせる。
「スケッチブックの事よ」
隣のサークルの女性、日高トオコが助け船を出す。
『スケッチブックを…私が描くんですか?』
「即売会ではサークルさんが、ファンの人の為にスケッチブックに絵を描いてあげたりするのよ」
『へー、そうなんですか。あ、それじゃお客さんはお兄ちゃんのファンなんですね』
「お兄ちゃん?」
『あ、すみません。私、店番なんです。お兄ちゃんは今本を取りにいってるんですよ』