終わるコミケット#2 猶予の月

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142Jr
2000 12/12 21:33
環七通り 方南町交差点

チェイサーのヘッドライトが、道端に残る汚れた雪を照らし出す。

「えと、もうちょっと行くとファミレスがあるんで、その次のトコを左に……。」
「ん、解った。」
「でもホント、送って貰って助かりますよ。電車代浮くし。」
「おいおい、交通費もちゃんと支給される筈だぞ。……ったく。
 ……まあいいや。俺が用事があって行くんだから、このくらいはね。
 本当は明日、霧沢に持ってきて貰えれば良かったんだけどな。」
「すみません……。」
「女の子か?」
「はあ、一応。あ、でもそういうんじゃないっすよ。相方、じゃなくて
 仲間というかパートナーというかなんというか……。」
「なんだそれ……。お、ここだな。次を左ね。」
「はい。…………あれです。あのマンション。あっ、車どうしましょう?」
「いいさ、そこに停めておこう。」
143Jr :2000/09/29(金) 23:08
22:17 霧沢桂一の部屋

「これがコミケの、えーと、パンフレットです。」
「………………えらく厚いね。」
「いつもそんなカンジですよ。あ、立川さんコーヒー飲みます?インスタントですけど。」
「ん、じゃ頂くかな。待ってる間にちょっと読ませて貰うから。
 ……うわ、細かいなー。あ、この写真は夏にやったっていう時の?」
「あー、それは去年の冬の写真です。クリスマスと重なったんすよ。」
「クリスマスの日でもこんなに人が来るんだ。……恋人同士で来たりするのか……?
 しかし凄いな。そういや高島さんが数十万人だとか言ってたっけ……。」
霧沢がカップを手にしながら苦笑する。
(恋人ねぇ。いる人間は少ないんじゃないかなー。ま、人の事言えないか。)



「……なるほどね、確かに大きなイベントだ。けど想像してたほど物騒でもないなぁ。
 高島さんが甲種警備服の運用を決めるくらいだから、もっとこう、やばそうな物だと
 思ってたんだけどね。だから統警が出てくるのも納得してたんだが……うーん。」
「……」
「あれ?何やってるんだ?」
「他にも見て貰う物があって……立川さん、これ、読んでみて下さい。」
そう言って霧沢が指を差したのは、デスクの上のモニターだ。
モニターに映るのは、薄いグレーを背景に並ぶ番号と投稿文。
それを読み進めるうちに立川の表情が強張っていくのが、霧沢には解った。