★ファイブスター物語17〜絶血の騎士〜★永野護

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125騎士Jの告白(1)
俺はジョルジュ・スパンタウゼン、ベテランの傭兵騎士だ。
特に宇宙での機動戦を得意としている。俺が愛機を駆るところ、
敵MHはたちまち爆散し、大宇宙の華となる(合掌)。

俺が加わった戦は負けねェってんで、若い騎士共に人気がある。
俺も面倒見が良い方だから、若い野郎共に慕われるのは
悪い気がしない。いつの間にか奴等の親分格って感じだ。

だけど問題が出てきた。若い奴等は皆、ファティマを
連れてやがるって事だ。俺は自慢じゃないが女にモテない。
若い割に頭が薄いし、毛深いし、最近は腹も出てきた。
それに、綺麗な女の前に出ると気後れしちまう。

だから、ずっとエトラムルで戦って来た。しかし、
俺だけ「独身」じゃ格好がつかないし、奴等も気を遣う。
それに、俺もやはり情緒ってモンが欲しい。

聞いた処によると、ファティマ(若い女の形をしてる方だ)の
好みって奴は、人間の女とはかなり違う様だ。例えば、
結構いいじーさん騎士にだって魅かれるという。本当かねえ?


でも、そんじゃ、俺にも希望があるかも知れんと思って、
はるばるアドラーまでやってきたんだ。早速、開催されていた
お披露目に参加してみた。騎士である限り参加は自由だ。

赤面症なので、ファティマを真近で見るのは初めてだ。
美しい、何より可憐だ。ミジンコみたいなエトラムルとは
えらい違いだ。自分の物になるかも知れんと思うと、
見る目も変ってくる。俺は思わず勃起してしまった。

何人かのファティマに引き合わされる内に、
俺は『絶対一人は連れて帰る!』と心に誓っていた。
俺の心は果てしない妄想で膨らんでいた。
126騎士Jの告白(2):2001/06/18(月) 00:46
もう何人に振られただろう。俺を選んでくれるファティマは
居なかった。今思えば、勃起状態で、目が血走ってる騎士を
選ぶはずがないのだが『やっぱり見た目が大事なのか!』と
俺はコンプレックスに取り付かれかけていた。

特にフィルモアから来たという、ヨボヨボの爺さんが
孫娘の様なファティマを射止めた時はショックだった。
爺さんは、最前まで「振られ仲間」だった俺を、
哀れむ様な目で見て、小声で『済まんな』と云った。

俺はもう泣きたくなっていた。

自分でもヤバイと思ったので、お披露目のステージから離れ、
一息入れることにした。その時、少し離れた所に騎士の
小さな一団が見えた。小規模なお披露目台も見える。何故
別にやるのか不明だが、あちらでもお披露目をやっている様だ。

その一団に立ち入ってみると、何か様子が先程と違う。
ファティマが皆、妙に大柄で、凛々しい感じなのだ。
大体服装が全く違う。

???

当時、俺は男性型ファティマという物の存在を知らなかった。
だから、状況を把握するのに時間が掛かった。ポカンと
一分程、彼等を見つめていたかも知れない。

ざわめきに気が付くと、俺は満座の注目を浴びていた。
集まっている騎士は全て女性だったのだ。皆、冷ややかな目で、
或いは、嬉しそうな目で俺を眺め、肘付き合っている。

いや、独り巨体で僧服を着たごつい醜男が、片手を挙げて
恥ずかしそうに微笑みかける。その仕草は親近感に溢れ、
全身から『お仲間ですね?』という問い掛けを発している。

その瞬間、全てを理解した俺は赤面し、慌てて
ここから立ち去ろうとした。

その時、

『マスター、私をお選び下さい。』 澄んだバリトンの声が響いた。
静まりかえる会場。俺は総毛立った。
凍りついた俺を、端正な美青年が笑顔で見つめる。
『スクラープと申します。』 LED が点滅している。

『あ・・・あぁ』 思わず応えてしまう俺。それを承諾と受け取ったのか、
彼は近づいて来た。遠慮がちな拍手が興り、やがて、
ヤケクソな大喝采となる。ヘタリ込みたくなる意識の中で、
どうやら彼が目当ての女が多かった様だ・・・と気付く、
『ざまぁ見ろ、男に惚れられる事に関しちゃ、貴様らには負けねえ』
泣きそうになりながら、俺はそう思った。


それから・・・俺は自分の本当の姿を知ったと思う。
だって、彼と居て、とっても幸せなんだもん♪