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夢見る七誌:
あの女さえいなければ・・・
アリの目に暗い憤りの炎が燃える。
あの女がわたしの気高い女王をここまで追い詰めた
わたしがお育てした類まれなき神秘の女王アイシスさま・・・
今はその誇りすら憎しみに埋めてしまおうとしているのか
毎朝のラーへの祈りすらどこか空ろな手さばきが痛々しい限り
アイシスさまの母君はイシスの神殿の巫女でした
美貌をかわれて豊穣の祭りの舞姫として王宮へ上がり
そのまま神殿へ戻ることなく王の元へ召され
そしてアイシスさまがお生まれになった
幼女の頃から美しく賢いアイシスさまを父君はことのほか愛されました
わたしの母はアイシスさまの乳母でした
流行の熱病でアイシスさまの母君もわたしの母もあの世に召されてしまいました
残されたアイシスさまを父君はよりいっそう溺愛なされたことは言うまでもございません
それはもう溺愛するにふさわしい素晴らしい姫さまでございました
姫さまの4さいのお誕生日の頃に弟君がご誕生あそばされました
弟君の母上は王の妹であらせられる王妃さまでした
長い長い間お子に恵まれなかった王妃さまのご懐妊、そしてお世継ぎの誕生に国は沸き
王はたくさんの供物をささげて太陽神に感謝の意をお示しになりました
アイシスさまの運命の糸はこの時結ばれてしまったのでしょう
お世継ぎをお産みになったあとめっきり体質が弱くなられた王妃は
枕元へアイシスさまをお召しになってくりかえしくりかえしこうおっしゃいました
「イシスとオシリスの古から王と姉妹は結ばれるもの・・・メンフィスを守って愛してね。この王子には貴方しかいないのですから。メンフィスのイシスになってあげてね」
(続く)
すみません、初めての投稿であせってさげ失敗しました・・・
やっぱり読むほうに専念します