萌えたら走れ!夜明けまで〜慶祝スレッド第十二章

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501醍醐旅団長
(善行閣下への電話)
 ああ、善行閣下ですか?
 先日はどうも、私ごときの尻拭いをさせてしまって……。
 ええ、これは確かに私の借りとさせていただきます。

 ひとつ私のお相手をしていただけませんでしょうか? なに時間はとらせません。
 確か、善行閣下も幕末維新史には詳しくていらっしゃるようですな。
 どうも、最近の私には切に迫って感じられるのですよ、おそらく日本が最後に本当の意味での内乱状態にあった、あの時期を。
 つくづくね、最近我々の立場があの時代の長州藩に似ているような気がしてならないんですよ。ええ、国防軍・政府のラインが幕府で、菊水さんが新選組と見廻組を足したような感じでしょうか。
 さて、当然、桂小五郎という人物を御存知でしょう? ええ“逃げの小五郎”と言われた人物です。長州藩の存続のために形振り構わず、味方を売り、逃げるときは躊躇わず逃げたあの御仁です。愚痴も多いし屈託も多い(笑) おかげで、歴史的評価はともかくとして、人物としての評判は相当に人気のない人物です。
 先日から、どうも私にとっては彼の立場と重なって仕方がない。まあ、彼にしてみればひんな腰抜けと一緒にされてはたまったものではないでしょうが。ともあれ、生き残りのために形振り構わない彼の壮絶な生き様は私にとっては範とすべきかと思って尊崇申し上げておりますよ。幸い私には中佐という高杉晋作の如き男がおりますので、心強くはあるのですが(笑) まあ西朝は土佐藩としておきましょうか?(笑)
502醍醐旅団長:2001/06/15(金) 19:52

 さて、善行閣下に問いたいのは、皇室・北朝・第五旅団・という組織についてです。
 私の目からすると、皇室はそのまま文民政府ではなく、むしろ本来対立すべき潜在敵対意識があるのではないか、と。
 ええ、もし幕末に見立てるならば、北朝は幕府ではなくむしろ薩摩藩なのではないかと、斯様に思うわけです。
 さて、国防軍・政府と密接な関係がおありになる善行閣下、貴方は幕府の側に立つのでしょうか薩摩藩の側に立つべき人なのでしょうか?
 いえ、わかっておりますよ? 貴方の現在の生き様、行動はすべて皇国の平和と安全、そして秩序のためにあるのだという事は、ほかならぬ潜在敵対勢力の指導者である私が一番心得ていると言っても過言ではないでしょう。
 しかし、その皇国の平和と安全と秩序が回復した後はどうでしょうか?
 先日、貴方は私に仰いましたな? 大日本帝国宰相廣瀬と、それを仮想してみた事があるのです。その場合、私がまず行なうべきは、皇室の私兵、財産、発言権、そして人権すらすべて奪い取って、文民政府にとって一切の脅威とならないように無力化しようと仕向ける目でしょう。そうですな“象徴天皇制”とも言うべき体制ですな。あるいは、皇室は日本古来の神道を崇める伝統ある一宗教団体として残っていただくか……。
 聡明なる貴方は誰よりも御分かりの筈です。長いガーターベルトの夜以来、赤軍の侵略戦、国土回復戦などを経て、いかに皇統、そして皇室が強大な存在感を持ってこの国に遍く轟き渡っているかを? そして、それこそが文民政府にとってはもっとも脅威なのだと思います。
 特に萌宮、萌之院の両殿下の存在は、両殿下の意図とは別に文民政府が許容するあまりにも強大過ぎる存在となってしまいました……。それを仕向けたのが私の罪だとすれば、それは甘んじて受けましょう。
503醍醐旅団長:2001/06/15(金) 19:53

 ここでは、その対抗手段を講じようというわけではないのです。
 善行閣下? 私は貴方のスピリチュアルな部分にお聞きしたい。
 もし、こういった事態を避けるために貴方の優秀なる頭脳はフル回転していると知ってあえて聞かせていただきたのです。
 あなたは、もなこ殿下と文民政府が対立するような事態になった場合、どのような立場を取られるのでしょうか? いや、立場ではありません、貴方の“心”はどちらを向かれるのでしょうか? そして今の貴方のおられる組織……第五旅団は、貴方の同志であり仲間なのでしょうか? それとも要するに戦力でしかないのでしょうか?
 おそらく私は醍醐旅団については、必要以上に思い入れ深くしてしまっているのです。ですから、彼等が“彰義隊”のような状況に陥るのは避けたいと思っております。ええ、かつて仰いだ君主から見捨てられ、賊軍の汚名を来て死ぬような事を。これは私自身の解決しえない矛盾ですが、殿下に普通の女性としての幸福を味わってほしいというのと、同じように彼等を殿下の馬前で死なせてやりたいという気持ちがあるんです。
 いったい貴方は国防軍・政府とは、もはや本質的に融和しきれない部分を持つ北朝、第五旅団に対してどのような“思い”をお持ちなのでありましょうか?
 もし、国防軍・政府と北朝・第五旅団が対立するような状況になった場合、貴方の心はどちらを向くのでしょうか?
 今、答えを頂こうとは思いません。いえ、それどころか私が聞ける類の話でもないと思います。
 ですが、いつかきっと貴方は正面からその問いに直面する事になりましょう。
 小さいながら、私も南朝と萌之院殿下のどちらを選ぶのかという狭間に立たされた時があました。私の場合は実に簡単に答えを導き出せましたが、貴方の場合は大変に困難な問いかけになるかと思われます。
 私は貴方という存在を薩摩藩における大久保利通のごとき存在だと思っております。ですが、それが思い込みに過ぎないようであれば、構いません(笑)

 ただひとつだけ。
 もし、貴方が国家や主義思想よりも、たった一人の小さな、本当に少女を哀しませないために動かれる人であるのならば、私は勝手に貴方の永遠の同志としての誓いをさせていただきましょう。ええ、いつでも私の命と力をお使いください。
 私もまた一人の美しい少女を哀しませない為にすべてを賭ける男として生きると決心したのですから……。