萌えたら走れ!夜明けまで〜慶祝スレッド第十二章

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148醍醐旅団長
 ノックの音が聞こえて、返事を待たずに一人の男が現れる。
 男は完璧な敬礼を施し、私の前に立つ。
「中佐、よく来てくれた」
 いつもながら感心する。それは敬礼する彼の非の打ち所のない佇まいにではない。
 完璧なまでに端整な彼の敬礼の所作は、どういうわけか“頭の堅い軍人さん”たちをイラ立たせるという特殊効果を持っているらしい。どこにも非の打ち所はないのに、どこか馬鹿にされているような、どこか自分を試されているような、どこか自分を見透かされているような、そんな印象を今までの彼の上司たちは抱かされてきたのだろう。
 幸い私は彼に試されるような価値のある能力など持ち合わせていないし、馬鹿にされることをむしろ心地よく思うような人間であるし、見透かされるような裏を持つほど複雑ぶった人間でもない。
「はあ、いったいなんの用ですか?」
 敬礼を解いた彼はいつものように上司を上司とも思っていない口調で訊ねる。最近、ますます頭が上がらなくなっているのだが、まあ、この口調でいるうちは私は安心している。かえって上司と部下といった垣根が出来てしまったら、恐らく私は次の日には鹿の餌になっているような気がする。
(いったい今度は何をやらかすつもりだ、このおっさんは)
 迷惑そうな、それでいて楽しんでそうな、彼の表情を見るのが私は好きだった。そして私の言葉で、ニヤソとさせるのはそれ以上に私の楽しみでもある。
「中佐、キミと”ばいんばいんのぼーんぼん”な金髪美女とのサシでの一席を設けたいのだが、受け入れてもらえるかね?」
 私はニヤニヤと性質の悪い中年の笑みを浮かべながら彼に言う。
149醍醐旅団長:2001/06/12(火) 16:58
>>148
 私が彼に説明したのは簡単な事であった。
 中佐にモエナ女史が所持しておられる、殿下の靴下を取り戻すための全権外交使として派遣したい、と。
 彼にはどのような取引を行なってもかまわないからモエナ女史から殿下の靴下を取り戻してくれ、と。
「なんなら、私の身柄やら地位やら命やらだって好きに使っていいぞ(笑)」
 どうにも職務違いな私の依頼に、中佐ははっきりと不満げであった。中佐であったなら、どうしようと南朝を危うくするような事はあるまいという、私の信頼すら煩わしげでさえあった(笑)
 私はそんな彼に、楽しげな声で言う。
「ははは、ともえ殿下によろしく。突詰めてしまえば、そういう事だ。せいぜい楽しんできてくれ、西朝の海鮮料理と地酒はなかなかに試す価値ありだそうだよ?」

(電:中佐の答え待ち・笑)