〜萌えよ剣〜慶祝スレッド第四章 

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(軍服の上に割烹着と三角巾をつけて窓を拭いている)
 おお、これは参謀長、任務御苦労。
 ん? 私か? ちょっとここの窓の汚れが気になってな。窓が汚れて日光が入らぬと、萌之院殿下のお姿がそれだけよく御映りにならなくなってしまうではないか。ああ、もちろん執務外の“趣味”であるが故な、掃除担当のメイドたちほ責めるような事はせぬよ。私はより御美しく殿下が御映えになっていただきたいだけの事なのだ。
……
……
 ふふ、昼休みで少し時間が空いただろう? 私の雑談に付き合ってはくれぬか?
 先日、北朝政府の作戦参謀本部の課員に“萌え”とはいったい何か? それは武人の心と両立すべきものなのか? ずっと考えていたのだ。
 うん。それで見つけたのだよ。
 『葉隠』を知っておるかね? そう「武士道とは死ぬこととみつけたり」というあの書物だよ。正に武人の魂とも言える文書であろう。そこにな、私にとっては正に本懐とすべき記述があったのを思い出したのだ。
「忍ぶ恋こそ、まことの恋」
 相手に何も求める事無く、恋するあまり死した後に、その思いが一筋の煙りとなって立ち昇ればそれこそが恋の至極である、と。
 まだまだ煩悩多き身ではあるが、私にとってはこれこそ萌えの本懐とすべき言葉だと思うのだ。
 萌之院殿下には何も求めず、ただ私は一心の至誠を以って御仕えしたい。時には親の如き包容力を以って、時には兄の如き優しさを以って、時には恋人の如き熱情を以って。それでいて何も求める事無き思いで、なんら負担になる事なく意識にさえ上らせたもう事無きまま、萌えは昇華するべきものだと思うのだ。

 ふふ、私とて男だニ三の恋はあったし、それに応えてくれる女人はあった。しかし、どうも私には求め求められる恋は似合わぬ。ただ与え、捧げ、散る。そんな思い。しかも、そんな思いなど無きものののように、常に自然でありのままの殿下でいていただける。それが私なりに至った“萌え”の結論なのだ。
 空気の如く気付かれぬほど自然に、神の如くノ望まれた事をすべて実現する。
 私はそんな存在でありたいと思うのだ。
 ははは。まだそこまで悟りきれてはおらぬよ。
 もちろん、まだまだ邪念は多くそんな境地にはほど遠い(笑)
 それでな参謀長、私はどんな形であれ平和な時代訪れたら、こうしたいという望みがある。
 例え萌之院様がどのような境涯におかれようとも、私は永遠の陰なる侍従として、誰にも気付かれぬまま萌之院殿下の御望みを果たす。そんな仕事をしてみたいと思う。もしかしたら私が萌之院殿下の次に愛した醍醐旅団を率いる以上に難しいかも知れぬが、斯くありたいと思って私は未来の戦場へと赴こうと思う。
 ふふ、そのために炊事や掃除、洗濯なども女官たちや六九式どのに極秘で習っていたりするのだよ。おかしいと笑ってくれ。しかし、平和な未来を思いながら学ぶ、これらの習い事は実に楽しいものがあるぞ。