プルルルプルルル…プルルル(←何回も)、ガチャ
未夢「はい〜♪」
綾「未夢ちゃん?私。」
未夢「あ、綾ちゃんだ…」
綾「あ、あの、ちょっとだけ聞いて欲しいんだけど…。いいかな?」
未夢「いいよ、何?」
綾「私ね、今、悩んでるの。今度の演劇大会のことで。」
未夢「演劇大会?あ〜、そういえばそんなのあるって言ってたっけ」
綾「(急に口調を変えて)そうなの!それでね、演劇部副部長の私としては去年優勝したこともあって
今年も何とかいいお芝居を作りあげなきゃってプレッシャーがある訳なんだけど
その第一歩っていうべきシナリオの、その前のプロットの、そのまた前の、アイデアの段階で、
行き詰まっちゃっててね、いろいろ考えるんだけど、ふっと気がつくとついつい去年のと似てたりしてね。」
未夢「あ、あのう…、うっ…。」
綾「あ〜もう、それでもいいやって思っても見るんだけど、それは自己の生き忘年に達するってことで、
クリエイターとしては決してあってはいけないってことだと、私は思って、
(未夢「なんか、綾ちゃん、いつもと違う…。」)とうとう歯切りがつかなくて、
あ〜もうだめだ、私、やっぱり才能なんてないんだなんて思って落ち込んで、
こんな風にさかさまになっちゃったりして反省なんかしたりしてるんだけど
とりあえず、初心に帰ろうと思って、シェークスピア読んでみたけどダメで、
まずはお話の舞台をどこにしようとか考えて、地図帳を広げたら世界のおかしな地名とか探し始めちゃって、
あっという間に『え?もうこんな時間?』とか思っちゃったりしたもんだから
いっそのことミュージカルものが楽しいよねってひらめいて、少し書き始めてみたんだけど
タップダンスのレッスンとかどうしようか、間に合わないよね、難しいもんね
ってことでやっぱりミュージカルはなしなしって思ったのよ。そこで、また振り出しに戻ったわけよね。
聞いてる?未夢ちゃん。なんか回り道して無駄してるって思う?思うよね。でもそんなことやって
オリジナルで勝負しようって思ったわけだから回り道と思えることも必要なのよね。
後になって決して無駄じゃなかったって思えるよ。うん!
でもね、なんだかプレッシャーかかっちゃってるのかな?やっぱり去年優勝したっていうこともあるし、
演劇部の副部長っていうこともあると思うし、どう思う?」
未夢「え?あ、うん!えっと…そうなんじゃない?」
綾「あ〜、そんなあっさり決めないで〜」
未夢「だって、他に思いつかないんだもん」
綾「ねえ、今から未夢ちゃん家、行っていい?」
未夢「え?今から?」
綾「お願い、もうちょっと相談にのってほしいの。どうしてもきっかけがつかめないのよ。
もうちょっと、本当にもうちょっとで書けそうなんだけど、
(彷徨「おい、いつまで話してんだよ」)
あ、ほら天の声って言うか、突然パァーってひらめくときがあるじゃない?
(未夢「そ、それがね…」)
そしたら頭からおしりまでグサァーっと片付いていくのよね
(ワンニャー「あ〜、ついルゥちゃまと寝ちゃいました〜」)
だから、おっかけすると未夢ちゃんほんの些細な一言が私の創作魂に火をつけるって言ったら
大げさだけどさ」
未夢「でも、もう遅いから、夜道は危ないし…」
綾「それなら大丈夫!もう来てるもーん♪」