とっとこハム太郎5なのだ!

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773ハムが好きなんだもんっ
とっとこ夏だよ!大冒険

 先ほどから窓硝子にあたって、小気味良いリズムを立てている雨音は、一層激しさを増す。遠くで、雷がなる音が聞こえた。
「ハム太郎くん・・・今、何を感じまちゅか」
すべての灯りが落とされた部屋。ふたりはぴたりと体を寄せ合い、そして見詰め合う。彼女の目が、少しばかり潤んでいるのが分かる。吸い込まれてしまいそうなほどに、透き通っている瞳・・・。愛おしい。ハム太郎は、生まれてはじめての感情に、ぽっと顔を赤らめた。
「リ、リボンちゃんの体温と匂い・・・甘い匂いを感じるのだ」
少しずつ、感情が昂ぶっていった。彼女を抱きしめたい・・・離したくない。始めの緊張と罪悪感はもはやどこかに消えうせてしまった。
「そう、リラックスして・・・」
774ハムが好きなんだもんっ:2001/06/29(金) 16:39
どちらからともなく、唇を求め合う。時が止まったように感ぜられた。1分、いや30秒・・・本当はもっと短い時間だったのかもしれない。ただ、幸福感と安心感が、時間という概念をふたりから奪っていった。息が苦しくなった。
「もっと・・・強く・・・」
夏の暑さと、長い口づけの後の苦しさで、彼女の吐息は乱れていた。そんな彼女の唇に、ハム太郎は、彼女の言うとおり、先ほどよりも強く吸い付いた。そのまま倒れこむふたり・・・。ハム太郎は、今度は唇を首筋から肩の方へと少しずつ這わせていった。
「うぅん、くすぐったいでちゅわ」
肩から舌を這わせ、今度は腰のあたりを舐めはじめた。そして、次にへそ、さらにそこから少しずつ下へと舌を移動させていった。
「アァアンッ」
舌が、女性の大切な部分に触れると、たまらずリボンが声をあげた。窓から稲光が差し込むと、彼女の美しすぎる表情が映し出される。
「リボンちゃん・・・綺麗だよ」
無意識のうちに言葉が洩れる。ハム太郎は、いつもそばにいた彼女が、これほどまでに神秘的で、かつ幻想的な表情を見せるとは知らなかった。そしてリボン自身も、今まで誰にも見せたことのない、彼女のすべてをさらけ出した。
775ハムが好きなんだもんっ:2001/06/29(金) 16:40
「わたくち、もう・・・いい、でちゅ、わ、よ」
声が乱れる。体が火照る。
「リ、リボンちゃん・・・でも、ぼくはじめてだから、よく位置がわからないのだ・・・」
そんなハム太郎をリボンはやさしく導いていく。それでもなかなかうまく交われない。ハム太郎は少しずつ焦りを感じていた。
「大丈夫でちゅわ、落ち着いて・・・」
「わかったのだ、もう一度やってみるのだ」
今度は、しっかりと目標を捉えた。
「うわぁー」「あぁん」
声にならない声をあげて、ふたりは頂点へと達した。そのまま意識が遠のいていった・・・。
 ふたりは、お互いの夢を見た。とても幸せな・・・どこか懐かしいような夢だった。あるいはハム太郎は、夢の中のリボンに母のぬくもりを重ねたのかもしれない。
776ハムが好きなんだもんっ:2001/06/29(金) 16:41
 翌朝、小鳥のさえずりで目を覚ましたハム太郎は、どこかボーっとしたような心持ちであたりを見回した。
「よくお休みになれましたでしゅか」
既に起きて、朝食の準備を整えていたリボンが部屋へと入ってきた。それでハム太郎はやっと昨夜のことを思い出した。真っ赤になるハム太郎に、リボンはニコリと、いつもの笑顔を見せた。
 ふたりは朝食のあと散歩に出かけた。昨夜からの雨は嘘のように上がり、朝の光が眩しくふたりを包み込んだ。ハム太郎の方からリボンの手を握った。
「まぁ」
彼女は、少し驚いて声をあげた。今日は、川辺に咲く花たちさえも、今のふたりを祝福してくれているように感ぜられた。
「もう、絶対にリボンちゃんを離さないのだ」
「わたくしも、ずっとついていきまちゅわ」
遠い海のほうから吹いてくる風が、いつもより少し暖かく、とても心地良かった。雨の季節が去り、木々の緑がもう少し深みを増せば、もう、すっかり夏である。